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5貸与

 

     貸与とは:ある財産を、それによって利益を被り、かつその代替物を返還する者、あるいは利益を被るがその代替物を返還しない者に与えることです。いずれの場合でも、その行為によって偉大なアッラーからの報奨を望むようにします。

 

     貸与が定められたことに潜む英知:

貸与はアッラーへの御近づきの原因となる、推奨された行いです。

というのもそこには困窮者への善行と、彼らの需要の充足があるからです。そして貸す対象のそれに対する必要が切迫していればいるほど、またその行いがアッラーゆえの真摯なものであればあるほど、その行いによる報奨は偉大なものとなるでしょう。

 

     貸与の徳:

1-至高のアッラーは仰られました:-アッラーに対してよき貸付をする者には、(かれが)その者にとってその報いを幾倍にも倍増して下さるであろう。アッラーは(そのお恵みをお望みの者に)差し押さえ、また広げ与えられるお方。そしてあなた方はかれの御許へと還り行くのである。,(クルアーン2245

2アブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は言いました:“現世における信仰者の苦悩を1つ和らげる者は、アッラーが審判の日の彼の苦悩を1つ和らげて下さるであろう。そして(債務超過などで)困難な状況にある者に便宜を図ってやる者は、現世と来世においてアッラーが彼に便宜を図って下さるであろう。またムスリムを(その罪などによる悪評が人々に知れ渡ることなどから)かくまってやる者は、アッラーが現世と来世において彼をかくまって下さるであろう。アッラーはそのしもべが同胞を援助する限り、かれもその援助の手を差し伸べられるのだ。(ムスリムの伝承[1]

 

     貸与の法的位置づけ:

1-貸与はそれを行う者にとって推奨された行為、そしてそれを受ける者にとっては合法的な行為です。また貸与は売買取引が成立する2者間の間であれば成立しますが、貸与の対象が明白であり、かつ貸与する者がそれを無償で贈与する権利を備えていることが条件となります。貸与を受けた者にはそれを返却する義務がありますが、もし全く同じ物がない場合は同様の物を、そしてそれさえも見つからないような場合はそれと同価値の物を返却するようにします。

2-何らかの現世的利益を伴う貸与は全てリバー[2]であり、禁じられています。例えば何かを貸す代償として相手の家に住むことを条件とするとか、あるいは1年後に305000円を返却することを条件に30万円を貸す、といったようなことです。

 

     債務の返済における善行:

前もって条件付けることなしに、債務の返済において善行を施すのは推奨された行為です。例えば若いラクダを借り、返還する時には7歳のラクダ(つまりより価値の高いもの)を返すようなことです。このような行いは履行の良い形であり、徳の多い行いでもあります。そしてムスリムに2回貸与する者は、あたかもその者にサダカ(施し)を1度行ったかのようにみなされます。

アブー・ラーフィゥ(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)はある男から若いラクダを借りました。その後彼のもとにサダカのラクダが数頭連れられて来たので、(預言者は)アブー・ラーフィゥに、そこから若いラクダを件の男に返すように言いました。するとアブー・ラーフィゥは(預言者のもとに戻って来て)言いました:「“最上の7歳ラクダしかありませんが。”すると(預言者は)言いました:“それを彼に与えよ。最上の履行をする者こそ、最上の者なのである。”」(ムスリムの伝承[3]

 

     早めに返済することを理由に債務を軽減すること:

まだ返済時期まで猶予のある債務を早めに返済することを理由に、債務を軽減することは許されています。これはそれを希望するのが債務者であろうと、債権者であろうと同様です。また誰かの債務や扶養義務などの諸義務を肩代わりした場合、望むならばそれを肩代わりしてやった者に請求することも出来ますし、あるいはそれを施しとして請求しないことも出来ます。

 

     債務に苦しむ者に猶予を与えたり、あるいは多めに見てやったりすること:

1-至高のアッラーはこう仰られました:-そしてもし(債務者が)厳しい状況にあったら、状況が改善するまで猶予を与えてやるのだ。しかしもし(債務を)施して(免除して)やるのなら、それがあなた方にとって最善であろう。もしあなた方がこのことを知っていたのなら。,(クルアーン2280

2アブー・アル=ユスル(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「私は、アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)がこう言うのを聞きました:“債務に苦しんでいる者に(返済の)猶予を与える者、あるいは(債務自体を)大目に見てやる者は、アッラーが(審判の日)彼をその陰にかくまって下さるであろう(ムスリムの伝承[4]

 

     債務者には4つの状態が考えられます:

1-何も所有していない状態。このような場合は猶予を与え、即時の返済請求をしてはなりません。

2-所有する財産が抱える債務額以上である状態。返済が請求可能で、そうする権利があります。

3-債務額と同額ほどの財産を所有している状態。返済の請求が可能です。

4-所有する財産が債務額以下である状態。つまり破産者のことで、禁治産宣告を受けた後に債権者たちの全ての請求、あるいはその内何人かの請求から守られ、その財産は割合に応じて債権者の間で分配されます。

 

     そもそも返済しないつもりで借金をする者に対する罰:

借金する者は、その返済を強く決心していなければなりません。さもなければ偉大かつ荘厳なるアッラーによって、その財産を滅ぼされてしまうでしょう。預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「その(返済を)履行するつもりで人の財産を拝借する者には、アッラーがそれをご履行下さる。そして(返済する気もなく)浪費するつもりで人の財産を拝借する者は、アッラーによってその財産を壊滅させられてしまうであろう。」(アル=ブハーリーの伝承[5]

 



[1] サヒーフ・ムスリム(2699)。

[2] 訳者注:詳しくは「④リバー」の項を参照のこと。

[3] サヒーフ・ムスリム(1600)。

[4] サヒーフ・ムスリム(3006)。

[5] サヒーフアル=ブハーリー(2387)。

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