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9調停

 

     調停とは:争っている2者間の収拾をつける契約のことです。

 

     調停の法的位置づけ:

アッラーは争う2者間を取り持ち、そこに発生した問題を取り除き、また人々の心が清められ、かつ相互に対する憎しみの念が消失されるべく、調停を定められました。

また至高のアッラーのお悦びを求めてそうするのであれば、人々の間を取り持ち改善することは最も気高い善行の1つであり、かつアッラーに対する最も偉大な服従行為の1つです。

 

     人々の関係を改善することの徳:

1-至高のアッラーはこう仰られました:-彼らの密談の多くは、益がない。但し施しや善行、人々の関係の改善を命じ(てそうす)る場合は別である。そしてアッラーのお悦びを求めてそうする者には、われら(アッラーのこと)が偉大な報奨を与えてつかわそう。,(クルアーン4114

2アブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は言いました:“人の各関節には1つのサダカ(善行などの施し)が課せられている。そして太陽の昇る日に[1]人々の関係を改善することはいつでも、1つのサダカである。”(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[2]

 

     調停の法的位置づけ:

ムスリムと非ムスリムの間であれ、正義の者と不正者の間であれ、亀裂が入った夫婦間であれ、あるいは隣人や親族、友人の間であれ、争う2者間を調停することは合法です。その際争いの種が財産であるかどうかは問いません。

至高のアッラーはこう仰られました:-そしてムスリムの2集団が争っていたら、彼らの間を取り持つ(べく、彼らがアッラーの法へと立ち返るよう働きかける)のだ。そして彼らの内の一方がもう一方に対して違法を働いて(おり、調停に応ぜずに)いたら、その違反者たちがアッラー(への服従と調停)の命に応じるまで彼らと戦え。そして彼らがアッラー(への服従と調停)の命に服したなら、公正さでもって彼らの間を調停するのだ。公正であれ。実にアッラーは公正な者を愛でられるのだから。実にイーマーン[3]の徒は同胞である。ゆえに同胞の間を取り持つのだ。そしてご慈悲をかけて頂けるよう、アッラー(のお怒りや懲罰の原因となるようなこと)から身を慎むがよい。,(クルアーン49910

 

     調停の種類:

調停には①財産による調停と、②財産以外による調停、の2つがあります。

そして①財産による調停は更に2種類に分けられます:

       承認の上での調停:

例えばある者がある者に対して、具体的な量や額が不明である何らかの財や借金などを負っていたとします。その場合前者がその事実‐彼がその者に対して何らかの債務を負っているという事実‐を認めた上で、その代わりに後者に何かを支払うことで義務解消の合意を得るならば、それは有効な調停であると見なされます。また誰かに即返済しなければならない債務があり、それを認めた上でそのいくらかを免除してもらい、かつ残りは後払いにしてもらう、という場合の免除と遅延も有効です。あるいは後払いの物の一部を、即返済することで残りの義務を免除してもらう、という調停も有効です。この類の調停は「あなたが私に何某を与えるのなら、私は(自分の義務を)認めましょう」などと言って条件付けたりしない限り、有効となります。というのも義務というものは、条件抜きに果たさなければならないからです。

       非承認の調停:

 例えばある者がある者に対して何らかの義務の遂行を主張したものの、後者がそれを知らず、否定するような場合のことです。このような場合両者が何らかの代替物の受け渡しによって調停をするならば、それは有効な調停となります。但し一方が嘘をついている場合、その者に関する調停は内面的な意味において無効となり、その者がその調停によって手にする物は非合法な物となります。

 

     有効な調停:

ムスリムは互いに合意した条件に基づいてその義務を果たします。非合法な物を合法としたり、あるいは合法な物を非合法とするような条件をつけたりしない限り、ムスリム間の調停は有効なものとなります。

また有効な調停とは、アッラーとその使徒が命じたような公正なものでなければなりません。そしてそれはまず至高のアッラーのお悦びと、次いで争っている両者の満足を求めるようなものなのです。至高のアッラーはこのような調停を讃えられて、こう仰られました:-そして調停こそは最善である…,(クルアーン4128

 

     調停の条件:

公正な調停の条件の重要なものとしては、以下に挙げるようなものがあります:

       両者共にイスラーム法的観点において処分権を有する者であること。

       調停において非合法な物を合法としたり、あるいは合法な物を非合法とするような条件をつけたりしないこと。

       両者の一方がその主張において嘘をついていないこと。

       調停者がタクワー[4]を備え、状況をよく把握しており、かつ義務を心得、また公正を目指していること。

 

     隣人の権利:

機械の騒音やかまどの煙などで隣人を害することは禁じられています。隣人の権利には様々なものがありますが、主なものは以下に挙げる通りです:

       よき関係。

       善行。

       害悪の駆除。

       隣人から受ける害悪を耐えること。

 イブン・ウマル(彼らにアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「もしかすると遺産相続までさせるのでは、と私が訝るほどに、ジブリール(ガブリエル)は私に隣人への善行を命じ続ける。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[5]



[1] 訳者注:つまり、そうする時期を問わないということです。

[2] サヒーフアル=ブハーリー(2707)、サヒーフ・ムスリム(1009)。文章はアル=ブハーリーのもの。

[3] 訳者注:詳しくは「タウヒードとイーマーン」の章の「イーマーン」の項を参照のこと。

[4] 訳者注:「タクワー」は「自らを守る」という動詞の名詞形。つまりアッラーを畏れ、またそのお怒りと懲罰につながるような行い‐つまりかれが命じられたことに反したり、あるいは禁じられた事柄を犯したりすることなど‐を避けることで、自らの身をアッラーのお怒りや懲罰から守ることを意味します。

[5] サヒーフアル=ブハーリー(6015)、サヒーフ・ムスリム(2625)。

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