婚宴

概要

ムスリム男性にとって婚宴を開くのは義務です。そのマナーや招待と参加、時期などについて見ていきましょう。

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Detailed Description

    婚姻⑦

    婚宴

    ] 日本語 [

    النكاح7: وليمة العرس

    [اللغة اليابانية ]

    ムハンマド・ブン・イブラーヒーム・アッ=トゥワイジリー

    محمد بن إبراهيم التويجري

    翻訳者: サイード佐藤

    ترجمة: سعيد ساتو

    校閲者: ファーティマ佐藤

    مراجعة: فاطمة ساتو

    海外ダアワ啓発援助オフィス組織(リヤド市ラブワ地区)

    المكتب التعاوني للدعوة وتوعية الجاليات بالربوة بمدينة الرياض

    1429 – 2008

    婚宴

    ● 婚宴とは:結婚の折に特別に開かれる食事会のことです。

    ● 婚宴の時期:

     婚宴の時期はその地の慣例に従い、昼夜を問わず、婚姻契約時あるいはその後、または初夜前後などに開きます。

    ● 婚宴の法的位置づけ:

     1-婚宴を設けることは夫にとって義務です。経済力に応じて羊1頭、あるいはそれ以上のものを振舞うことがスンナ[1]ですが、婚宴に限らず浪費することは禁じられます。

     2-その貧富を問わず、婚宴には宗教的に真面目な人々を招待するのがスンナです。食事の内容は合法な物であれば、何であっても構いません。尚、貧者を除外して裕福な者だけ招待するのは禁じられています。

     3-経済的に余裕のある者が婚宴の準備において当事者に援助の提供をすることは、推奨されています。

    ● 婚宴の招待に応じることに関して:

     婚宴に招待された者は、以下のような条件を満たしていればその招待に応じることが義務となります:

    ① 招待者がムスリムであること。

    ② 明確に指名されて招待されていること。

    ③ 婚宴の第1日目であること。

    ④ それより重要な用事がないこと。

    ⑤ その婚宴において矯正不可能なほどの非合法な物事や悪事が存在していないこと。

     アブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は言いました:“あなた方が(食事に)呼ばれたら、応じるのだ。もし(その時あなた方が)サウム‐いわゆる断食‐中だったら、(招待者のために)ドゥアー(祈願)してやるがいい。そしてサウム中でなければ、食事せよ。”」(ムスリムの伝承[2]

    ● 婚宴、あるいはその他の食事会などに出席した者が言うこと:

     婚宴などに招待されて出席した者は適当な頃合を見つけ、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)が言ったとされる以下のような言葉を招待者にかけることが推奨されます:

     1-「アッラーよ、あなたが彼らにお恵みになられた物において、彼らをご祝福下さい。そして彼らの罪をお赦しになり、またご慈悲をおかけ下さい。」(ムスリムの伝承[3]

     2-「アッラーよ、私に食を与えた者に食をお与えになり、また私に飲ませた者にお飲ませ下さい。」(ムスリムの伝承[4]

     3-「あなた方の下でサウム(いわゆる断食)する者たちがそれを解き、善人たちがあなた方の食事を食べ、天使たちがあなた方にお祈りを捧げてくれますよう。」(アブー・ダーウードとイブン・マージャの伝承[5]

    ● 新郎は初夜が明けた翌朝その家族と共に、彼らをお祝いしてくれた親戚などの家を訪問し、彼らに挨拶と祈願の言葉をかけるのが勧められます。そしてその訪問を受けた者たちも同様に、挨拶と祈願の言葉を返します。

    ● 婚宴の食事を口にすることに関して:

     婚宴の食事を口にすることは推奨されますが、義務ではありません。それで招待されたその日にその者にとって義務のサウム(いわゆる断食)を行っている者がいたら、そこに出席し、祈願の言葉をかけるだけに留めて退出します。

     また任意のサウムをしている日に婚宴や食事に招待された場合、それを解除して食事する方が好ましいとされます。そうすることで彼は同胞の気分を和らげ、かつ彼を嬉しくさせることになるでしょう。

    ● ムスリムはある集団の会合などを訪れたら彼らに挨拶し、それから上座から見て一番遠い空席に腰を下ろすようにします。尚、その場の長はキブラ(カアバ神殿のあるマッカの方向)の方を向きます。そしてその場を退出する時にも、挨拶を忘れないようにします。

    ● 非合法な物事の存在する婚宴や会合への出席に関して:

    何らかの非合法な物事を伴う婚宴に招待されたら、もしそれが自分の手によって矯正可能である場合に限って出席し、それを正すようにします。

    一方それが自分の手に負えない類の物事であるならば、出席する必要はありません。

    また出席してみて初めてその婚宴にそのような物事が存在しているのを知った場合、それを正すようにしますが、それが出来なければそこを退出することが出来ます。

    またもしその婚宴にそのような物事が存在しているのを知ったものの、それが自分の目や耳に入らないところにあるのならば、そのような時はその場に留まるかあるいは退出するかの選択をすることが出来ます。

    ● 婚宴において浪費することの禁止:

    婚宴のみに限らず、飲食や衣服などにおける浪費、楽器の使用は禁じられています。

    ウマラーン・ブン・フサイン(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「“このウンマ(イスラーム共同体)に、(審判の日の予兆、あるいはアッラーからの懲罰として)月蝕と(容姿の醜い)変化、そして強風が出現するであろう。”するとある男が言いました:“。アッラーの使徒よ、それはいつのことですか?”(預言者は)言いました:“女性の歌唄いと楽器、飲酒が出現する時である。”」(アッ=ティルミズィーの伝承[6]

    ● 貴人や学者を食事に招待すること:

    サハル・ブン・サアド(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました「アブー・ウサイド・アル=サーイディーはアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)を婚宴の食事に招待しましたが、その日は新婦である彼の妻が人々に仕えていました。サハルは言いました:“あなた方は彼女が何をアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)に注いだか知っているか?彼女は昨夜からナツメヤシの実を水に漬けて溶かしておいたものを、彼が食事を終えた時に差し出したのだ。”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[7]) 

    ● 婚姻の告知の方法:

    1-婚姻を告知すること、及び女性たちがその折に太鼓を叩いたり、歌詞に不埒で下品な箇所のないような歌を歌ったりすることはスンナです。

    アーイシャ(彼女にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「私の所で2人のアンサール[8]の少女がブアースの日々[9]に関連した詩を歌っていると、アブー・バクルがやって来ました。彼は言いました:“アッラーの使徒の家でシャイターン(悪魔)の唄(を歌うとは何事)か?”それはイード(祭り)の日のことでした。するとアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:“アブー・バクルよ、全ての民にはイードがある。そしてこれが私たちのイードなのだよ。”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[10]

    2-婚宴に限らず、男女の同席は非合法です。またイスラーム法に適った形で体を覆っていない女性たちの中にいる新婦のもとに新郎が姿を見せるのも、禁じられています。

    3-女性の美しさや情愛などを描写する歌、弦楽器や管楽器やその他の音楽器の使用、また歌手を雇うことなどは、婚宴かどうかを問わず禁じられています。

    アブー・アーミル・アル=アシュアリー(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、彼は預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)がこのように言うのを聞きました:「私のウンマ(イスラーム共同体)に、姦淫や絹、酒や楽器を合法とする輩が出現するであろう。」(アル=ブハーリーとアブー・ダーウードの伝承[11]

    ● 婚宴やその他の場における写真撮影に関して:

     1-魂を有する物を写真に撮影するのは非合法であり、大罪[12]の1つです。それで立体であれ平面であれ、またその対象に影があろうとなかろうと、あるいは手仕事であれ写真であれ、写真や絵を壁に掛けたりすることも禁じられます。[13]

     但し医学的理由や犯罪者の記録や告知などの必要性がある場合には、それらを利用することが許されます。

    2-男女の別を問わず、婚宴などで写真撮影することは禁じられます。それよりも危険で醜悪なのはそれらをビデオ撮影することで、またそれよりも醜悪なのはそのテープを人に見せたり、市場に流したりすることです。このような行いを合法だと言い、あたかもよい行いであるように見せかける者は罪を犯す者であり、またその言葉に沿って罪を犯した人々の罪も審判の日まで彼に課せられるでしょう。

    イブン・ウマル(彼らにアッラーのご満悦あれ)によれば、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「これらの彫像(あるいは絵)を作成した者は、審判の日に“お前の作った物に魂を吹き込んでみよ。”と言われて罰されるであろう。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[14]

    ● 女性がしてはいけないこと:

     以下の物事は女性に禁じられています:

    ① 眉毛を抜くこと。

    ② かつらや付け毛。

    ③ 刺青。

    ④ 眉を整えること。

    ⑤ (美容のため)歯を削ったりして手を入れること。

    ⑥ 男性と踊ること。

    ⑦ 40日以上爪を切らずに伸ばしったぱなしにすること。

    ⑧ 男性の出で立ちをすること。

    ⑨ 目立った格好や尊大な衣装、浪費の賜物のような衣服を着ること。

    ⑩ きちんと体を覆わないこと。

    ⑪ 夫以外の者の前で裸になること。

    ⑫ 催し事などにおける男性との同席。

    ● 男女に許されていること:

    1-男性はその体に害がなく、かつ女性らしくすることを意図するのではないことを条件に、背中や胸、脛や腿などの体毛を除去することが許されます。

    2-女性は絹と金製品を身にまとうことが許されますが、それらは男性には禁じられます。また女性は、水が完全に染み込まない形にはならないことを条件に、ヘンナ[15]などを用いて爪を染色することが許されます。また顔面部の通常毛が生えないような部分に生えてきた毛に関しては、除去することが可能です。

    また服装などにおいて非ムスリムを模倣してはなりません。ある人々に似る者は、その仲間であるからです。

    ● 女性が服装などにおいて非ムスリムの真似をすること:

    女性は同性の前であろうと、ズボンを着用してはなりません。というのもそれを着用することで体の線が浮き上がり、かつ非ムスリムや男性の服装にも似通ってくるからです。また同様に頭髪を赤とか黄色とか青とかに染めることも、同様の理由とその他様々な問題ゆえにしてはいけないことです。但し白髪を隠すために、ヘンナなどを用いて染めることに問題はありません。

    またハイヒールは上記の理由は無論のこと、アッラーが禁じられたところの異性の注意を惹いたり欲望を掻き立てたりする効果があることからも、禁じられます。

    [1] 訳者注:預言者ムハンマド(彼にアッラーの祝福と平安あれ)の示した手法や道のこと。ムスリムは可能な限り、彼のスンナを踏襲するべきであるとされています。

    [2] サヒーフ・ムスリム(1431)。

    [3] サヒーフ・ムスリム(2042)。

    [4] サヒーフ・ムスリム(2055)。

    [5] 真正な伝承。スナン・アブー・ダーウード(3854)、スナン・イブン・マージャ(1747)。文章はアブー・ダーウードのもの。

    [6] 真正な伝承。スナン・アッ=ティルミズィー(2212)。

    [7] サヒーフ・アル=ブハーリー(5176)、サヒーフ・ムスリム(2006)。文章はアル=ブハーリーのもの。

    [8] 訳者注:「アンサール」とはマッカからマディーナへと宗教迫害を逃れて移住した信仰者である「ムハージル」をマディーナで迎え入れ、財や住居などの物質的側面と精神的側面から援助した信仰者たちのこと。

    [9] 訳者注:「ブアースの日々」とは、ムスリムの移住前にマディーナの2主要部族であったアル=アウス族とアル=ハズラジュ族が主導権を巡って争い合った戦争の事を指しています。その当時彼らは詩でもって自分たちの部族を誇り合い、相手を罵っていたものでした。但し学者たちはこの時少女たちが歌っていたのは戦いにおける勇ましさや勇猛さについての唄であり、それゆえに預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)はそれを禁じはしなかったのだと解釈しています(イブン・ハジャル著サヒーフ・アル=ブハーリー解釈「ファトゥフ・アル=バーリー」参照)。

    [10] サヒーフ・アル=ブハーリー(952)、サヒーフ・ムスリム(892)。文章はアル=ブハーリーのもの。

    [11] サヒーフ・アル=ブハーリー(5590)、スナン・アブー・ダーウード(4039)。文章はアル=ブハーリーのもの。アッ=スィルスィラト・アッ=サヒーハ(91)も参照のこと。

    [12] 訳者注:「大罪(カビーラ)」とは、それに対し現世において刑罰が適用されたり、あるいはそれを犯すことで来世において地獄を警告されていたり、またアッラーのご慈悲からの放逐やかれのお怒りを招くこととされているものです。例としてはシルクや殺人、ズィナー(姦淫)や魔法、リバー(不法商取引)、親不孝、嘘の誓いなどがあります。

    [13] 訳者注:この問題も他の法学的問題と同様、学者の見解が分かれています。例えばワハバ・アル=ズハイリー博士は写真撮影及びそれを壁に掛けたりすることに関し、その著「アル=フィクフ・アル=イスラーミー・ワ・アッディラトフ」の中でそこには何の問題もない旨を述べています。というのも写真は丁度物が鏡や水に反映するように陰や形を固定するだけのことであり、それは伝承の中で禁止されている「タスウィール(絵や彫刻などの作成)」にはあたらないからである、ということを理由として挙げています(4/2676-2677)。一方禁止される絵や工作などの条件として彼は、以下の3つの条件を挙げています:①人間や動物など、魂を有する生物をその対象とすること、②それを賛美したり偉大視するために行うこと、③至高のアッラーの創造物や行いの模倣や相似をその目的とすること(4/2670)。但し女性の肉体や踊り、低劣なドラマ、女性歌手の歌など人々の間に問題を巻き起こすような恐れのあるものを写真やビデオなどで撮影することに関しては、明らかに禁止されていることで学者の意見は一致しています。

    [14] サヒーフ・アル=ブハーリー(5951)、サヒーフ・ムスリム(2108)。文章はアル=ブハーリーのもの。

    [15] 訳者注:頭髪や髭、手足や爪などの染料や薬品として用いられる植物の1種。

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