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サラー(礼拝)を正しい形で行うには、いくつかの条件を満たしていなければなりません。ここではその諸条件の他、やり損ねたサラーのやり直し方などについても簡単に見ていきます

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サラー(礼拝)の諸条件

     サラーの諸条件は以下の通りです:

       大小の穢れ[1]から清浄な状態であること。

       身体や衣服、サラーをする場所が汚物などで汚れていないこと。

       サラーの規定時間に入っていること。

       アウラ[2]を覆い隠す衣服を着用すること。

       キブラ[3]を向くこと。

       ニーヤ(意図):イフラームタクビール[4]の前に、これからしようとするサラーを心で意図すること。それを口外はしません。

     アッラーほどその御前で身だしなみを整えるべきお方はありませんから、清潔かつ美しい衣服に身を包んでサラーすることはスンナ[5]です。また下半身に着用する衣服はふくらはぎの中程まで、あるいは脛の中程まで覆うようにし、くるぶしにはかからないようにします。サラーの中であれそれ以外の時であれ、衣服のイスバール[6]は禁じられています。

     男性のアウラ(人前で隠さなければならない体の部位)はへそから膝まで、サラーにおける女性のアウラは顔と両手首、及び両足(くるぶし以下の部分)を除く全身です。

     ファジュル(夜明け前のサラー)は暗い内に行い、暗い内に終えて立ち去るのがスンナですが、時には朝の光が広がりつつある頃にまでサラーを引き伸ばしてもよいでしょう。

     野外でサラーを寝過ごしてしまった時のやり直し方:

旅行中眠気に襲われ、太陽が昇るまでファジュルのサラーをせずに寝過ごしてしまった場合、その場所を移動してからウドゥー[7]をし、アザーン[8]をしてファジュル前の2ラクアを行い、それからイカーマ[9]をしてファジュルのサラーを行うようにするのがスンナです。

     サラー中のニーヤ(意図)の変更に関する諸規定:

 1-全ての行いにはニーヤ(意図)が伴います。そしてアスル(午後遅くのサラー)をズフル(正午過ぎのサラー)にする、といった風に、特定のニーヤを他の特定のものへと変更することは許されません。また任意のサラーからファジュルにニーヤを変更する、といったように、非限定的なものから特定のものへとニーヤを変更することも出来ません。但し単独で義務のサラーをしていたら他の人たちがその義務のサラーのためにやって来たので、(彼らと共に義務のサラーを遂行するため)それを任意のサラーに変更する、といったように、特定のものから非限定的なものへと変更することは可能です。

 2-サラーの最中、イマーム(サラーを率いる者)に追従してサラーを行っている者や単独でサラーを行なっている者は、自らイマームとしてサラーを導くことにニーヤを変更することが出来ます。またイマームに追従してサラーを行っている者が単独で行なうサラーへと、あるいは義務のサラーとしてのニーヤを任意のそれへと変更することも可能です(但し任意のサラーを義務のそれへ変更することは不可能です)。

     サラーの際、身体はアッラーのご命令に従って崇敬すべきカアバ神殿へと向かい、心はアッラーへと向かうようにします。

     サラーの際は好きな衣服を着用することが出来ますが、一方禁じられた衣服の着用に関しては以下に述べるような場合があります:まず男性にとっての絹製の衣服や、男女を問わず魂のある生物が描かれた衣服などそれ自体が禁じられているもの。また男性が女性の衣服を着用したり、イスバール[10]をしたりすることなど、着用の形式において禁じられているもの。また盗んだり、奪い取ったりした衣服など、その入手の方法において禁じられているもの。

    全ての大地はサラーを行なうに適した場所です。但し浴場や便所、不当に奪い取った土地、汚物のある場所、ラクダの寝場所、墓地は除外されます。尚、葬儀のサラーのみは墓地で行なうことが許されています。

    サラーの規定時間に入った後に精神が健常でなかった者が回復したり、不信仰者がイスラームに改宗したり、あるいは月経が終了したりしたら、その規定時間内に定められたサラーを遂行しなければいけません。

     サラーの規定時間に入った後に月経の出血が止まったものの、グスル[11]をしていたら時間が終了してしまいそうな場合、時間が終了してしまったとしてもグスルをしてからサラーします。また大きな穢れ[12]の状態で目覚め、グスルをしていたら太陽が昇ってしまいそうな場合、太陽が昇ってしまったとしてもグスルを済ませてからサラーをします。というのも眠っている間というのは、義務が課せられているとは考慮されないからです。

    サラーはキブラ[13]に向かって行なわなければなりません。もしキブラの方向が分からず、誰も尋ねる人がいないような場合、自分なりに努力してキブラの方向と思しき方向に向かってサラーします。もしサラーをした後にその方向が正しくなかったと判明しても、サラーをし直す必要はありません。

    地面の上で直にサラーをすることはスンナですが、絨毯やマットレスなどの敷物の上でするのも許されています。

    睡眠や酩酊などにより一時的に理性を失っていた場合、その期間にやり損ねたサラーをやり直す必要があります。麻酔や薬品の使用などによりそのような状態に陥った者も、同様です。但し失神など、自らの選択ではない外的要因によって同様の状態に陥った場合、サラーのやり直しはしません。

     サラーのやり直しの仕方:

 サラーには5つの義務のサラーのように、その規定時間が終わった後もその遂行を妨げていた要素がなくなり次第やり直さなければならないようなものもあれば、金曜日の集団礼拝のようにそれをやり損ねた場合そのやり直しはせず、その代わりにズフルを行なうことで済ます、といったものもあります。またイード[14]のサラーのように、その規定時間以外にはやり直しをしないようなものもあります。

     やり損ねたサラーは、迅速にかつその時間順にやり直さなくてはなりません。但しその規則に関する無知や忘却ゆえに、その順番を変えてしまったような場合は問題ありません。またやり損ねたサラーをやり直していたら、その時点で義務が発生しているサラーの規定時間が終了してしまいそうな時、あるいは義務の集団礼拝や金曜日の集団礼拝が終わってしまいそうな場合は、サラーの順番を入れ替えてしまっても問題ありません。

     義務のサラーを始めた後にその前の時間の義務のサラーをやり損ねていたことを思い出した者は、とりあえず始めてしまったサラーを完遂し、それからやり損ねたものをやり直します。ゆえにアスルをやり損ねた者がモスクに入った時、既にマグリブが始まっていたとしたら、まずイマームと共にマグリブを行い、その後にアスルのやり直しをするのです。

     義務のサラーを寝過ごしたり忘れたりしてやり損ねた者は、それを思い出した時にやり直します。預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)はこう言いました:「サラー(をするの)を忘れたり、寝過ごして(やり損ねて)しまったりしたような者の罪滅ぼしは、それを思い出した時にやり直すことである。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[15]

     時には清浄な靴や靴下を履いたまま、そしてまた時には裸足でサラーするのがスンナです。

     サラーをしようとする時、靴や靴下を脱いだらそれを自分の右側には置かず、正面か、あるいはそこに誰もいなければ左側に置きます。また靴を履くときは右足から、脱ぐときは左足から始めるのがスンナです。尚、履物を片方だけ着用して歩いてはいけません。

     衣服のない裸の者は、もし暗闇の中のように誰にも見られる恐れがなければ、立ったままサラーします[16]。そしてイマームは通常通り前に進み出ます。しかしもし周りに誰かいたり、明るい場所にいたりするのであれば、座った姿勢でサラーし、イマームは列の中央に陣取ります。またこのような状況において、男女は別々にサラーします。

     もしモスクが一杯になってしまい、そうする他に手段がないような時は、路上にまではみ出てサラーすることが出来ます。但し列は繋がっていなければなりません。

     アッラーから命じられたことにおいて、無知と忘却を言い訳にすることは出来ません。ゆえに無知から、あるいは物忘れからウドゥーなしでサラーした者に罪はありませんが、後にウドゥーをしてサラーをやり直す必要があります。一方、無知や忘却からアッラーから禁じられたことを犯してしまった場合は、それを正当な言い訳とすることが出来ます。つまり知らないまま、あるいはそれを忘れて不浄な物質の付着した衣服を身に付けたままサラーをしてしまった場合、それは罪とは見なされないことはもちろん、そのサラー自体も正しく有効なものであると見なされます。

    色々なモスクをとっかえひっかえ廻って歩かず、家から一番近いモスクでサラーすることがスンナです。

    モスクに入る時の礼儀作法:

 モスクには静寂さと厳粛さをもって向かい、両手の指を組み合わせたりしないのがスンナです。というのもサラーをするためにモスクに向かう最中も、人はサラーの中にあると見なされるからです。

 アブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は言いました:「サラーが始まったら、あくせくしてやって来るのではない。静粛さをもってやって来るのだ。そして間に合った分を(人々と共に)行い、出来なかった分は(人々がサラーを終えた後に)完遂するのだ。実にあなた方はサラーを意図して歩み行く間、サラーの中にあるのである。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[17])”

 1-モスクに入る時は、次のように唱えて右足から入るのがスンナです:

アブドッラー・ブン・アムル(彼らにアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)はモスクに入る時にはこう言ったものでした:「私は偉大なるアッラーに、その尊い御顔に、そして原初よりのかれの権威において、呪われシャイターンからのご加護を与えて下さるよう求めます」(アブー・ダーウードの伝承[18]

 アッラーの御名において、そしてアッラーの使徒に祝福と平安あれ。アッラーよ、あなたのご慈悲の扉を私にお開き下さい。」(アブー・ダーウードの伝承[19]

 2-モスクから出る時は左足から出るようにし、次のように唱えます:

 アッラーの御名において、アッラーの使徒に祝福と平安がありますように。アッラーよ、私にあなたの恩恵をお恵み下さい」イブン・マージャはこの伝承を次の言葉と共に伝えています:「アッラーよ、私を呪われし悪魔からお守り下さい。」(アブー・ダーウードとイブン・マージャとイブン・アッ=スンニーの伝承[20]

    モスクに入ったら、そこにいる人たちに挨拶をし、それからタヒイヤト・アル=マスジド[21]を行います。そしてサラーが始まるまで至高のアッラーをズィクル(念唱)したり、任意のサラーに従事したりすることが推奨されます。またサラーの最前列、イマームの右側に立つことが出来るよう早めにモスクに向かうよう努力します。

     旅行者や貧者などのように住居がないような者の内で、必要に迫られた者が時にモスクで睡眠をとることは許されています。しかしモスクを完全に寝場所としてしまうことは、イァティカーフ[22]をする者など以外には禁じられています。

     サラーをしている者の脇を通りかかったら、サラーム[23]を言うことが推奨されます。そしてそれを受けた者は指や手や顔による合図でそれに答えますが、言葉で返すことはしません。

スハイブ(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「私はサラーをしている預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)のもとを通りかかったので、彼に挨拶しました。すると彼は、仕草でもってそれに応じました。」(アブー・ダーウードとアッ=ティルミズィーの伝承[24]

     モスクで自分の場所を予約すること:

モスクへ人より先んじて赴くことはスンナです。しかし前もってモスクのある場所に自分の敷物などを置いておき、それをもって自分より先にモスクに来た者たちに対しての自分専用の場所の予約とすることは、2つの観点からイスラームの教えに反しています:

1つには、彼自身が遅刻して来ること。彼は物によってではなく、自分自身が早く来るべきなのです。

そしてもう1つには、彼がモスクの一角を不当に占拠し、他の者がそこでサラーをすることを妨げていることです。ゆえにモスクに自分の敷物を敷いておき、自分自身はモスクに遅れてやってくるような者がいたら、彼より先にモスクに来た者はそれをどけてそこでサラーすることが出来ます。そして彼にはそうすることで、何の罪もありません。



[1] 訳者注:「大きな穢れ」とは、精液の発射、性交、月経や産後の出血などによって陥る状態のことです。一方「小さな穢れ」とは、排便、放屁、熟睡や失神や酩酊などによる一時的な分別の喪失などによって陥る状態のことです。

[2] 訳者注:「アウラ」とは人前で晒してはいけない体の部位で、男性のアウラはへそから両膝までで、男性に対する女性のアウラは顔と両手を除く全身ですが、その他にも諸見解があります 。

[3] 訳者注:カアバ神殿のあるマッカの方角のこと。

[4] 訳者注:「アッラーフ・アクバル」と言って、サラーを開始すること。

[5] 訳者注:預言者ムハンマド(彼にアッラーの祝福と平安あれ)の示した手法や道のこと。ムスリムは可能な限り、彼のスンナを踏襲するべきであるとされています。

[6] 訳者注:くるぶしの下まで衣服を垂らすこと、あるいは衣服の1部分を必要以上の長さにすること。

[7] 訳者注:詳しくは「1.タハーラ」の章の「4.ウドゥー」の項を参照のこと。

[8] 訳者注:定型句をもって、礼拝時刻に入ったことを告知する呼びかけ。詳しくはこの章の「アザーンとイカーマ」の項を参照のこと。

[9] 訳者注:定型句をもって、礼拝開始を知らせる呼びかけ。詳しくはこの章の「アザーンとイカーマ」の項を参照のこと。

[10] 訳者注:訳者注6参照のこと。

[11] 訳者注:心身の清浄化を意図した全身の洗浄。

[12] 訳者注:「大きな穢れ」とは、精液の発射、性交、月経や産後の出血などによって陥る状態のことです。

[13] 訳者注:カアバ神殿のあるマッカの方角のこと。

[14] 訳者注:「イード」とは、イード・アル=フィトゥル(ラマダーン月の斎戒が明けた翌日、つまりシャウワール初日の祭日)と、イード・アル=アドゥハー(ズル=ヒッジャ月10日目の、いわゆる犠牲祭)のことです。

[15] サヒーフ・アル=ブハーリー(597)、サヒーフ・ムスリム(684)。文章はアル=ブハーリーのもの。

[16] 訳者注:このような状況は、例えば旅路で追いはぎに遭い、衣服を含む全ての物を奪われて置き去りにされてしまったような場合などにあり得ます。

[17] サヒーフ・アル=ブハーリー(908)、サヒーフ・ムスリム(602)。文章はムスリムのもの。

[18] 真正な伝承。スナン・アブー・ダーウード(466)、サヒーフ・スナン・アブー・ダーウード(441)。

[19] 真正な伝承。スナン・アブー・ダーウード(466)、サヒーフ・スナン・アブー・ダーウード(441)。

[20] 真正な伝承。スナン・アブー・ダーウード(465)、サヒーフ・スナン・アブー・ダーウード(440)、スナン・イブン・マージャ(773)、サヒーフ・スナン・イブン・マージャ(627)、イブン・アッ=スンニー(88)。元々の伝承はサヒーフ・ムスリム(713)。

[21] 訳者注:モスクに入った時、腰を下ろす前に行う2ラクアのサラーのこと。預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)のスンナです。

[22] 訳者注:詳しくは「5.サウム」の章の「4.イァティカーフ」の項を参照のこと。

[23] 訳者注:イスラームにおける挨拶「アッ=サラーム・アライクム(あなた方に平安あれ)」のこと。詳しくは「クルアーンとスンナのフィクフ」の章の「3.礼儀作法」の項「4.挨拶の礼儀作法」を参照のこと。

[24] 真正な伝承。スナン・アブー・ダーウード(925)、サヒーフ・スナン・アブー・ダーウード(818)、スナン・アッ=ティルミズィー(367)、サヒーフ・スナン・アッ=ティルミズィー(301)。文章はアッ=ティルミズィーのもの。

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