任意のサラー

概要

ムスリムは任意のイバーダ(崇拝行為)によって、アッラーのご寵愛を勝ち得ます。ここでは様々な種類の任意のサラー‐アッ=スナン・アル=ラワーティブ、タハッジュド、ウィトル、タラーウィーフ、2つのイードのサラー、日・月蝕のサラー、雨乞いのサラー、ドゥハーのサラー、イスティハーラのサラー‐について見ていきましょう。

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Detailed Description

    任意のサラー

    ] 日本語 [

    صلاة التطوع

    [اللغة اليابانية ]

    ムハンマド・ブン・イブラーヒーム・アッ=トゥワイジリー

    محمد بن إبراهيم التويجري

    翻訳者: サイード佐藤

    ترجمة: سعيد ساتو

    校閲者: ファーティマ佐藤

    مراجعة: فاطمة ساتو

    海外ダアワ啓発援助オフィス組織(リヤド市ラブワ地区)

    المكتب التعاوني للدعوة وتوعية الجاليات بالربوة بمدينة الرياض

    1429 – 2008

    ⑯任意のサラー(礼拝)

    ● 任意のサラーに潜む英知:

    全ての義務的なイバーダ(崇拝行為)において任意の形で行われる同種のものが定められたのは、アッラーのそのしもべに対するご慈悲の表れ以外の何物でもありません。しもべは任意のイバーダによってイーマーン[1]を養い、審判の日には義務のイバーダの不備をそれによって補うことが出来るのです。

    そしてサラーにも義務のものと任意のものがあり、サウムにも義務のものと任意のものがあります。同様にハッジにも、サダカ(施し)にも義務のものと任意のものがあるのです。そしてしもべは任意のイバーダによってアッラーに献身し続け、至高のアッラーのご寵愛を勝ち取るのです。

    ● 任意のサラーの種類:

     任意のサラーには様々な種類があります:

    ① タラーウィーフ(ラマダーン月の夜の特別集団礼拝)や雨乞いのサラー、日・月蝕のサラーや2つのイード[2]のサラーのように、集団で行われるもの。

    ② イスティハーラ(何かの決断や選択をアッラーに仰ぐためのサラー)のように、集団で行わないもの。

    ③ アッ=スナン・アッ=ラワーティブ[3]のように義務のサラーに付随するもの。

    ④ ドゥハーのサラー[4]のように何かに付随していないもの。

    ⑤ タハッジュド[5]のように時間帯が定められているもの。

    ⑥ 完全に任意のサラーのように、時間帯が特定されてはいないもの。

    ⑦ タヒイヤト・アル=マスジド[6]やウドゥー[7]後の2ラクアのように、何らかの要因に関連付けられたもの。

    ⑧ 完全に任意のサラーのように、いかなる要因にも関連付けられていないもの。

    ⑨ 2つのイードのサラーや雨乞いのサラー、日・月蝕のサラーやウィトル[8]のようにスンナ[9]において強く推奨されているもの。

    ⑩ マグリブ(日没直後のサラー)の前に行うサラーのように、スンナにおいて強く推奨されてはいないもの。

    こうしてしもべがアッラーへの御近づきを望んで行うための任意のサラーが定められ、かつその位階が高められ、罪が洗い流されて報奨が倍増されるところの服従行為が多様化しているのは、アッラーのしもべに対する大いなる恩恵の1つです。アッラーを讃美し、感謝しましょう。

    1-アッ=スナン・アッ=ラワーティブ

    ● アッ=スナン・アッ=ラワーティブとは:義務のサラーの前後に行われる任意のサラーのことです。これには2つのカテゴリーがあります:

    1-スンナにおいて強く推奨されている12ラクア:

    ① ズフル(正午過ぎのサラー)前の4ラクア

    ② ズフル後の2ラクア

    ③ マグリブ後の2ラクア

    ④ イシャー(夜のサラー)後の2ラクア

    ⑤ ファジュル(夜明け前のサラー)前の2ラクア

    ● 預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の妻の1人であったウンム・ハビーバ(彼女にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「私はアッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)がこう言うのを聞きました:“毎日義務ではない任意の12ラクアを礼拝するムスリムのしもべには、アッラーが天国に彼のための家を立てて下さる(あるいは彼のために天国に1軒の家が建つ)。”(ウンム・ハビーバは)言いました:“そしてそれ以後、私はそれを未だに遵守しています。”」(ムスリムの伝承[10]

    ● 時には上記のような12ラクアではなく、ズフル前の4ラクアを2ラクアにして、計10ラクアのアッ=スナン・アッ=ラワーティブを行ってもよいでしょう。

    イブン・ウマル(彼らにアッラーのご満悦あれ)は言いました:「私はアッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)と共に、ズフル前に2つのサジダ(つまり2ラクア)とその後に2つのサジダ、またマグリブ後に2つのサジダとイシャー後に2つのサジダ、そして金曜礼拝の後に2つのサジダを行いました。但しマグリブとイシャーと金曜礼拝に関しては、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)と共に彼の自宅で行いました。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[11]

     2-スンナにおいて強く推奨されてもいなければ、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)自身常に行っていたわけではないもの:

    ① アスルの前の2ラクア

    ② マグリブ前の2ラクア

    ③ イシャー前の2ラクア

     またアスル前の4ラクアを遵守するのはスンナです。

    ● 完全に任意のサラーに関して:

     完全に任意のサラーは昼夜を問わず行うことが出来ますが、2ラクアずつ区切った形で行います。昼よりも夜の方がよいでしょう。

    ● 最も強調されているアッ=スナン・アッ=ラワーティブは?

     アッ=スナン・アッ=ラワーティブで最も強調されているものは、ファジュル前の2ラクアです。ファジュル前の2ラクアは短めに済ませ、1ラクア目にはアル=ファーティハ章の後に「不信仰者たちの章(第109章)」を、2ラクア目には「純正章(第112章)」を読むのがスンナです。

     また時には1ラクア目に-言うのだ、「私たちはアッラーと、私たちに啓示されたものを信じます…,(クルアーン2:136)を、そして2ラクア目には-言え、「啓典の民よ、私たちとあなた方の共通の言葉へと立ち返るのだ…」,(クルアーン3:63)か-そしてイーサー(イエス)は彼らの不信仰を察すると、言った…,(クルアーン3:52)を読むこともスンナです。

    ● もし何らかの正当な理由ゆえにこれらのアッ=スナン・アッ=ラワーティブをやり損ねてしまったら、後でやり直すことがスンナです。

    ● 例えばズフルのアザーン後にウドゥーをしてモスクに入り、タヒイヤト・アル=マスジドとウドゥー後の2ラクア、アッ=スナン・アッ=ラワーティブとしてのズフル前の2ラクアの計3つのサラーを意図して2ラクアのサラーを行えば、それら3つのサラーを行ったことになります。

    ● 義務のサラーとアッ=スナン・アッ=ラワーティブの間には、言葉や移動などの何らかの区切りを置くことがスンナです。

    ● アッ=スナン・アッ=ラワーティブはモスクででも自宅ででも行うことが出来ますが、自宅で行う方がよいでしょう。預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「…人々よ、家でサラーせよ。義務のサラーを除いては、最善のサラーは自宅でするそれなのであるから。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[12]

    ● 任意のサラーの形:

    1-任意のサラーでは例え起立することが出来たとしても、座位姿勢のまま行うことが出来ます。但し立って行う方がよいことに間違いはありません。

    一方義務のサラーにおいては、起立することが出来る者が立ってサラーを行うことはサラーの基幹的要素の1つです。そうすることが出来ない者であれば、起立以外の自分に出来る体勢で行っても問題はありません。

    2-起立することが出来るのに座って任意のサラーをすれば、その報奨は半減化されます。もしそうすることに正当な理由がある場合はその限りではなく、立ってするのと同様の報奨を得ます。

    また正当な理由ゆえに横になって任意のサラーをする者は立ってするのと同様の報奨を得ますが、正当な理由なしにそうする者は座って行うそれの半分の報奨を得ます。

    2-タハッジュド

    ● タハッジュド(夜に行う任意のサラー)をすることの法的位置づけ:

    夜に任意のサラーをすることは:特定の要因に関連付けられてはいない任意のサラーの内の1つで、スンナ・ムアッカダ(義務ではないが非常に推奨された行為)と見なされます。

    また崇高なるアッラーとその使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は、夜に任意のサラーを行うことをご命じになりました。

     1-至高のアッラーは仰られました:-衣にくるまれた者よ。夜は僅かな時間を除いて、(サラーのために)明かすのだ。夜の半分、あるいはそれよりいくらか少ない位時間を(サラーに費やせ)。あるいはそれよりいくらか多い時間を。そしてクルアーンをゆっくりと詠唱するのだ。,(クルアーン73:1-4)

     2-至高のアッラーは仰られました:-そして夜の一部をクルアーンと共に(サラーをしつつ)明かすのだ。それはあなたにとって、義務に付随するものである。間違いなくあなたの主は、あなたを栄誉ある場所に立たせて下さるであろう。,(クルアーン17:79)

     3-そして崇高なるアッラーは、ムッタクーン(アッラーのお怒りと懲罰を招くような事柄から身を慎む者たち)の特徴の1つを挙げて、こう仰られました:-彼らは夜は少しだけしか眠らず、夜明け前にはアッラーに罪の赦しを乞うていたのだ。,(クルアーン51:17-18)

    ● 夜に任意のサラーをすることの徳:

    夜に任意のサラーをするのは最もよい行いの内の1つで、昼の任意のサラーよりも優れています。というのも夜において至高のアッラーへの真摯さは見栄などに影響されない密かなものとなり、またそこには眠気という困難への忍耐と、偉大かつ荘厳なるアッラーとの交流という歓びがあるからです。

    また最良の時間帯は真夜中とされています。

    1-至高のアッラーは仰られました:-実に夜は(昼間よりもサラーに)立つのに厳しく、また言葉がより鋭く響くのだ。,(クルアーン73:6)

    2-アムル・ブン・アバサ(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「しもべが偉大かつ荘厳なるアッラーに最も近づくのは、深夜の夜半も過ぎた折である。それゆえその時間帯に偉大かつ荘厳なるアッラーのズィクル(念唱)に勤しむことが出来るのなら、そうするのだ。太陽が昇る時まで(天使たちは)そのサラーに居合わせ、証言するだろうから…」(アッ=ティルミズィーとアン=ナサーイーの伝承[13]

    3-また預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は「義務のサラーに次ぐ最善のサラーは何でしょうか?」と訊かれ、こう答えました:「義務のサラーに次ぐ最善のサラーは、夜半のサラーである。」(ムスリムの伝承[14]

    ● ドゥアー(祈願)が受け入れられる夜のある時間帯:

    1-ジャービル・ブン・アブドッラー(彼らにアッラーのご満悦あれ)は言いました:「私は預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)が、こう言うのを聞きました:“夜には、そこにおいてムスリムが現世と来世におけるよきことをアッラーに願えば、それが与えられないことはないある時間帯がある。そしてそれは夜全体のことなのだ。”」(ムスリムの伝承[15]

    2-アブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「祝福に溢れた至高の私たちの主は毎晩、夜も最後の3分の1にさしかかった頃、天の最下層にまでご降臨なさる。そしてこう仰るのだ:“私に祈る者はいないか?それを叶えてやるぞ。私に頼み事をする者はいないか?それを与えてやるぞ。私に罪の赦しを乞う者はいないか?その罪を赦してやるぞ。”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[16]

    ● 夜のサラーに爽快な気持ちで起きるため、イシャーの後は早めに、清浄な状態で就寝することがスンナです。また雄鶏の鳴き声を聞いたら、サラーのために起きるのがスンナです。

     アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「あなた方が眠ると、シャイターンはその後頭部に3つの結び目を作る。そして(こう言いながら)各々の結び目を小突くのだ:“夜はまだ長いから、眠り続けよ。”そしてあなた方が目を覚ましてアッラーのことを思い出すと、その結び目の1つがほつれて取れる。そしてウドゥーをすれば更にもう1つの結び目が解け、サラーをすれば最後の1つも解ける。こうして活力に溢れたよい心持になるが、もしそのようにしなければ怠惰な悪い心持になってしまうのだ。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[17]

    ● 夜に任意のサラーをすることに関する理解:

    ムスリムは夜の任意のサラーを遵守し、それを放棄すべきではありません。預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は両の足が腫れ上がるまで、夜のサラーに立ち続けたのです。

     それでアーイシャ(彼女にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「“アッラーの使徒よ、なぜそこまでするのですか?あなたはアッラーによって(預言者として遣わされる)以前の罪も、それ以後の罪も赦されたお方ですのに。”すると(預言者は)言いました:“感謝深いしもべであることを望まないことがあろうか?”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[18]

    ● タハッジュドのサラーの長さ:

    ウィトル[19]を含めた11ラクア、あるいはウィトルを含めた13ラクアです。

    ● タハッジュドの時間帯:

    タハッジュドをするのに最良の時間帯は、夜半(文字通り夜の真ん中)から始めて夜全体の3分の1の時間が終わるまでです。

    つまり夜の時間をまず半分に分割し、そして後半部分の最初の3分の2の時間帯(夜全体から見れば3分の1)をサラーに費し、残りの夜は眠るようにします[20]

    アブドッラー・ブン・アムル・ブン・アル=アース(彼らにアッラーのご満悦あれ)によれば、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「アッラーが最も愛でられるサラーは、ダーウード(ダヴィデ:彼にアッラーのご満悦あれ)のサラーであり、アッラーが最も愛でられるサウム(斎戒)もダーウードのそれである。彼は夜の半分を寝、それから夜の3分の1をサラーのために起きて過ごし、その後の6分の1を眠ったのだ。そしてまた彼は、1日おきにサウムしたものなのだ。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[21]

    ● タハッジュドの形:

    1-夜のサラーをする意図をもって就寝することはスンナです。そうすればもし眠気に負けてサラーに起きられなくても、意図したところのものによって報奨を得ることが出来、またその睡眠はアッラーからのサダカ(施し)と見なされます。

    そしてタハッジュドに起きることが出来たら、顔を拭いて眠りを覚まし、「イムラーン家の章(第3章)」の最後から10アーヤ(句)を読みます。そしてスィワーク[22]とウドゥーをした後、軽い2ラクアでタハッジュドを開始します。

    預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「夜に起きたら、軽い2ラクアをもってサラーを開始するのだ。」(ムスリムの伝承[23]

    2-それからサラーを2ラクアずつ行い、2ラクアごとにタスリーム[24]で区切ります。

    イブン・ウマル(彼らにアッラーのご満悦あれ)は言いました:「ある男が言いました:“夜はどんな風にサラーしますか?”(預言者は)言いました:“2ラクアずつ行うのだ。そしてもし朝が近くなってきたら、1ラクアのウィトルで締めくくれ。”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[25]

    3-また時には、4ラクア行ってからタスリームするのもよいでしょう。

    4-タハッジュドのための特定のラクア数を決めておき、もし起きれずに眠り過ごしてしまった場合にはそれを後でやり直すことが推奨されています。アーイシャ(彼女にアッラーのご満悦あれ)はアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の夜のサラーについて訊ねられ、こう言いました:「ファジュルの(前のスンナの)2ラクアを除いた7(ラクア)と9(ラクア)、そして11(ラクア)です。」(アル=ブハーリーの伝承[26]

    5-タハッジュドは家で行い、時には家人を起こして共に行うのがスンナです。またサジダ(伏礼)はクルアーンの50アーヤを読む位の長さで行い、眠気に襲われたら寝るようにします。

    起立姿勢とクルアーン読誦を長く行うように努め、クルアーンは1ジュズ[27]かそれ以上読むようにします。

    また読誦は時に声に出し、時には声を潜めて行います。そしてアッラーのご慈悲に関するアーヤにさしかかった際にはそれを願い、懲罰に関するアーヤに出遭ったらアッラーのご加護を乞い、アッラーの崇高さに関するアーヤにさしかかった際にはタスビーフ[28]したりします。

    6-タハッジュドはウィトルで締めくくります。

    預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「あなた方の夜のサラーの最後を、ウィトルとしなさい。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[29]

    3-ウィトル

    ● ウィトルの法的位置づけ:

    ウィトルは強く推奨されたスンナで、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)が次のように奨励していました:「ウィトルは全ムスリムにとっての義務である。」(アブー・ダーウードとアン=ナサーイーの伝承[30]

    ● ウィトルの時間:

    ウィトルの時間帯は、イシャー後から真のファジュル(暁)[31]までです。しかし夜の後半に起きることに自信がある者は、そうするのが望ましいでしょう。

    アーイシャ(彼女にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は夜の初めであれ、真ん中であれ、後半であれ、毎晩ウィトルしたものです。そして晩年にはウィトルを夜明け前にするようになっていました。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[32]

    ● ウィトルの形:

    ウィトルは1ラクア、または3ラクア、または5ラクア、または7ラクア、あるいはこれらを全て1つのタスリームで終える場合には9ラクアとなります。(ムスリムとアン=ナサーイーの伝承[33]

    ● 最小のウィトルと最多のウィトル:

    1-最小のウィトルは1ラクア、最多のウィトルは11ラクアか13ラクアです。そして2ラクアずつ行い、最後に1ラクアで締めくくります。完全な形で最小のものは1つのタスリームで区切った3ラクア、あるいはタスリームで区切らずに一番最後にだけタシャッフドする形の3ラクアです。

    最初の3ラクアの1ラクア目には「至高なるお方の章(第87章)」を、2ラクア目には「不信仰者たちの章(第109章)」を、そして3ラクア目には「純正章(第112章)」唱えることがスンナです

    2-5ラクア、あるいは7ラクアのウィトルを行う際にはタシャッフドやタスリームを挟まずに連続して行い、最後のラクアにだけタシャッフドとタスリームをして終える、という形をとることも出来ます。また7ラクアのウィトルの場合は6ラクア目にさしかかるまでタシャッフドやタスリームを挟まずに連続して行い、6ラクア目の最後にタスリームを伴わない最初のタシャッフドを行い、そして7ラクア目の最後には2度目のタシャッフドをし、それからタスリームして終える、という形をとることも出来ます。

    アブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「私の愛する友人(アッラーの使徒のこと)は、私に3つのことを勧めました。そして私はそれら‐毎月3日のサウム(斎戒)とドゥハーのサラー、ウィトルをして寝ること‐を死ぬまで手放さないでしょう。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[34]

    ● また9ラクアのウィトルを行う場合、8ラクア目にさしかかるまでタシャッフドやタスリームを挟まずに連続して行い、8ラクア目の最後にはタシャッフドだけしてタスリームを行わないまま9ラクア目に移行し、9ラクア目の最後に再びタシャッフドをしてからタスリームをして終える、という形をとることも出来ます。しかしウィトルは1つの独立させた形で行う方が良いでしょう。

    そしてタスリームの後には、「(いかなる欠陥や不完全性からも無縁である)真の王、聖なるお方の崇高さよ」と3回唱え、3回目を伸ばして言うようにします。

    ● ウィトルのサラーの時間:

    ウィトルはタハッジュドの後に行います。

    もしウィトルに起きられなさそうであれば、就寝前に済ませます。預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「夜の後半にウィトル出来そうにない者は、前半に行うのだ。しかし後半に行うことを望む者は、後半に行え。夜の後半に行うサラーは(天使の)立会いがあるのであり、最善であるからである。」(ムスリムの伝承[35]

    ● 夜の前半にウィトルを済ませた後に夜の後半に起きた場合、ウィトルはせずにサラーを偶数回で終わらせます。預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「1晩に2回ウィトルはしない。」(アブー・ダーウードとアッ=ティルミズィーの伝承[36]

    ● ウィトルでクヌート[37]すること:

    ウィトルにおけるクヌートは時に行い、時には行わないようにします。預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)がウィトルで常にクヌートしたことは確認されていないので、行わない方を多くする方がよいでしょう。

    ● ウィトルにおけるクヌートの形:

    もし3ラクアのウィトルを行う場合、3ラクア目のルクーゥ前か後に両手を上げ、偉大かつ荘厳なるアッラーを讃え、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)に対しての祈願をし、それからスンナで伝えられるドゥアー(祈願)でもって祈ります。例としては以下に挙げるようなものがあります:

    「アッラーよ、あなたが導かれた者たちの間へ私を導いて下さい。あなたが無事に護られた者たちと共に私を無事にお護り下さい。あなたがその諸事を引き受けられた者たちと共に、私の諸事をお引き受け下さい。そしてあなたが与えて下さったものにおいて私を祝福して下さい。そしてあなたが運命付けられた悪から私を御護り下さい。あなたこそは判決を下されるお方で、あなたの判決に口を出す者はありません。あなたは、あなたがご寵愛された者を辱めることはありません。私たちの主よ、あなたは祝福に溢れた崇高なお方です。」(アブー・ダーウードとアッ=ティルミズィーの伝承[38]

    ● また時には、下記のウマル(彼にアッラーのご満悦あれ)が伝えるドゥアーでもってクヌートを開始します:

    「アッラーよ、私たちはあなたを崇拝し、あなたに祈り跪き、あなたへと向かって奔走し奉仕し、あなたのご慈悲を願い、あなたの懲罰を怖れます。あなたの懲罰は必ずや不信仰者たちに降りかかります。アッラーよ、私たちはあなたにご援助とお赦しを求めます。そしてあなたをよく讃美し、あなたへの不信仰には陥りません。私たちはあなたを信仰します。私たちはあなたに服従し、あなたを信仰しない者から背き去ります。」(アル=バイハキーの伝承[39]

    ● また以下に挙げるようなドゥアー(祈願)を付け足すことも出来ますが、余り長引かせないようにします:

     「アッラーよ、私の諸事の守護であるところの、私の宗教を正して下さい。そして私の暮らしがそこにあるところの、私の現世を正して下さい。そして私の還り所がそこにあるところの、私の来世を正して下さい。そして私にとって生をあらゆる善において豊かなものとし、私にとって死をあらゆる悪から安らかなものとして下さい。」(ムスリムの伝承[40]

     「アッラーよ、私はあなたに無能と怠惰、臆病と吝嗇、そして老衰と墓の中の懲罰からのご加護を願います。アッラーよ、私の魂にタクワー[41]をお授け下さい。そしてそれを清めて下さい。あなたは魂を清められるに最善のお方であり、その後見者であり庇護者であられます。アッラーよ、私はあなたに無益な知識と畏怖の念を欠いた心、そして満たされない魂と受け入れられないドゥアーからのご加護を乞います。」(ムスリムの伝承[42]

    ● そしてウィトルの最後にはこう唱えます:

    「アッラーよ、私はあなたのご満悦によってあなたのお怒りからの、そしてあなたの寛容さによってあなたの懲罰からの、あなたによる、あなたからのご加護を求めます。私たちはあなたが御自身を讃美されたようにあなたを讃美することは出来ません。」(アブー・ダーウードとアッ=ティルミズィーの伝承[43]

    それから預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)に対しての祈願をしますが、ウィトルの場合であれ他の場合であれ、ドゥアー(祈願)の後に両手で顔を撫でたりはしません。

    ● ウィトル以外でクヌートを行うのは避けるべき行為ですが、ムスリムに災難が降りかかった際のクヌートはその限りではありません。そのような場合のクヌートは、義務のサラーの最後のラクアのルクーゥ後、あるいはその前に行うようにします。

    ● 災難の際のクヌートは悲惨な状況にあるムスリムのため、または不正を働く不信仰者に対して、あるいはその両方に関して行います。

    ● 義務のサラー以外で最善のサラーは、自宅で行うものです。ゆえにウィトルは、モスクにおいて集団で行うべき日・月蝕のサラーやタラーウィーフのように、集団で行ったりはしません。

    ● 旅行時のウィトル:

    旅行中でかつ車や電車、飛行機や船などに乗っている者は、タクビーラトゥ・アル=イフラーム[44]の際には可能な限り、それらに乗った状態のままキブラ[45]の方角を向いてウィトルをするのがスンナです。もしそうするのが叶わなければ、どの方向を向いてでも構わないので、状況が許す限りの形でウィトルを行います。もし立って出来なければ、座位姿勢のままルクーゥやサジダを頭の身振りで表わしつつ行います。

    ● ウィトルを行った後、座ったまま2ラクアのサラーをすることは許されています。その場合、ルクーゥする時には立ち上がってそうするようにします。

    ● やり損ねたウィトルのやり直し方:

    ウィトルに起きられなかったり忘れてしまったりしたら、起床後、あるいはそれを思い出した時に行うようにします。

    もしそれがファジュルのアザーンからイカーマの間であれば、ウィトルを本来の形のまま行います。

    但しそれが昼間であれば、奇数回ではなく偶数回行うようにします。つまり普段夜に11ラクアのウィトルをしていた者は、昼間にそれをやり直した際には2ラクアずつ、計12ラクアのサラーを行います。

    アーイシャ(彼女にアッラーのご満悦あれ)によれば、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は痛みなど何らかの理由で夜のサラーが出来なかった際、昼間に12ラクアのサラーを行いました。(ムスリムの伝承[46]

    4-タラーウィーフ

    ● タラーウィーフの法的位置づけ:

    タラーウィーフは預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)が行ったことを確証されている、強く推奨されたスンナです。ラマダーン月(ヒジュラ暦9月)に集団で行うことになっています。

    ● タラーウィーフという名称の由来は:そこにおいて読まれるクルアーンの量が多かったために、人々が4ラクア毎に座って休憩(タルウィーフ)したことであると言われています。

    ● タラーウィーフの時間帯:

    タラーウィーフはラマダーン月において、イシャー後からファジュル前までの間に行われます。その参加は性別を問わずスンナであり、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)はこう言ってラマダーン月の夜のサラーを人々に奨励しました:「ラマダーン月をイーマーン[47]と報奨への望みをもって夜のサラーに勤める者は、それ以前に犯した罪を赦されるであろう。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[48]

    ● タラーウィーフの形:

    1-イマームは、11ラクアのタラーウィーフを行うのがスンナで、これが最良の形です。時には13ラクア行ってもよいでしょう。

    2ラクア毎にタスリームで区切って行うのが最良ですが、時には4ラクアずつ区切って行っても構いません。

    これらを時にはこれ、また時にはこれ、という風に変化させて行えば、伝えられている様々な種類のスンナを実践することになるでしょう。

    ① アーイシャ(彼女にアッラーのご満悦あれ)は、ラマダーン月のアッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)がどのようなものだったかと訊ねられて、こう答えました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)はラマダーン月であれそれ以外の時であれ、11ラクア以上は行いませんでした。彼はえも言われぬ美しさと長さの4ラクアを行い、それからまたえも言われぬ美しさと長さの4ラクアを行いました。そして3ラクアを行いました…」(アル=ブハーリーの伝承[49]

    ② イブン・アッバース(彼らにアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は夜、13ラクア行ったものです。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[50]

    ③ アーイシャ(彼女にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)はイシャーを終えてからファジュルまでの間に、11ラクア行っていました。そして2ラクア毎にタスリームで区切り、1ラクアのウィトルで締めくくりました。」(ムスリムの伝承[51]

     2-イマームはタラーウィーフを、ラマダーン月を通して11ラクア、あるいは13ラクアの形で行うのがスンナです。そしてラマダーン月最後の10日間は特に、起立姿勢とルクーゥとサジダにおいてサラーを長引かせて行うようにします。これは預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)がラマダーン最後の10日間の夜をサラーで明かしたことによっていますが、時には日によって長短をつけても問題ありません。

    ● タラーウィーフに参加する者の報奨に関して:

    1-タラーウィーフに参加する者は、11ラクアであろうと13ラクアであろうと、また23ラクアであろうと、あるいはそれ以上や以下であろうと、イマームが全てのラクアを終えて立ち去るまで共にあることが最良です。そしてそうすることによって、夜のサラーの報奨が記録されることでしょう。

    預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「イマームが立ち去るまで共にサラーに立った者には、夜のサラーの報奨が書き留められるであろう。」(アブー・ダーウードとアッ=ティルミズィーの伝承[52]

    2-もしタラーウィーフを2人のイマームが率いたとしても、その両方と共にサラーに立った者には夜のサラーの報奨が与えられるでしょう。というのも2番目のイマームはサラーの完遂において、最初のイマームの代理と見なされるからです。

    ● タラーウィーフのイマーム:

    ラマダーン月のサラーを率いるのは朗誦と暗記に優れた者ですが、もしそのような者が居合わせていなかったらクルアーンを見ながら読んでも問題はありません。

    またイマームはラマダーン月中に、サラーにおいてクルアーンを全部読み終えるべきですが、もしそれが叶わなければ全部読み終えなくとも構いません。

    ● クルアーンを全部読み終えた後のドゥアー(祈願):

    ラマダーン月であるかどうかに関わらず、クルアーンを全部読み終えた際のドゥアーはサラー外で唱えるようにします。

    クルアーンを全部読み終えた際のドゥアーをサラー中にするということは、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)からも教友(彼らにアッラーのご満悦あれ)からも正しい形では伝えられていないためです。

    ● 個人的にタハッジュド‐夜の後半のサラー‐の習慣がある者は、ウィトルをタハッジュドの後に行うようにします。しかしイマームがウィトルした時には彼と共に行うようにし、タハッジュドの際はウィトルせずに偶数回のサラーで済ませるようにします。

    ● 義務のサラーであれ任意のサラーであれ、女性はモスクに赴く際に香水などを着用してはなりません。

    5-2つのイードのサラー

    ● イスラームにおけるイード(祭日)の数:

     イスラームにおけるイードの数は3つです:

    ① 毎年シャウワール月[53]の初日‐イード・アル=フィトゥル(ラマダーン月の斎戒明けの祭日)。

    ② 毎年ズー・アル=ヒッジャ月[54]の10日目‐イード・アル=アドゥハー(犠牲祭)。

    ③ 毎週金曜日。

    ● イードのサラーが定められたことに潜む英知:

    イード・アル=フィトゥルのサラーはラマダーン月の斎戒明けで、イード・アル=アドゥハーのサラーはハッジ(大巡礼)の義務とズー・アル=ヒッジャ月最初の10日の終了後に行われます。この2つのサラーは、ムスリムが2つの偉大なイバーダ(崇拝行為)を遂行したことに関し、祝福に溢れた至高のアッラーへの感謝の念を表わすべく行うイスラームの特質の1つとなっています。

    アナス(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)がマディーナにやって来た時、彼ら(マディーナの民)には遊興のための2日間がありました。それでアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:“アッラーはその2日間をあなた方にために、より良いものに代えて下さった:イード・アル=アドゥハー(犠牲祭)とイード・アル=フィトゥル(ラマダーン月の斎戒明けの祭日)である。”」(アブー・ダーウードとアン=ナサーイーの伝承[55]

    ● 2つのイードのサラーの法的位置づけ:

    2つのイードのサラーはムスリム男女にとって、強く推奨されたスンナです。

    ● 2つのイードのサラーの時間帯:

    2つのイードのサラーの時間帯は太陽が槍ほどの高さにまで昇ってから、子午線を通過するまでの間です。もし太陽が子午線から傾くまでにイードの日であることが判明しなかった場合は、翌日の正規の時間帯に行うようにします。

    尚イード・アル=アドゥハーの犠牲は、イードのサラー後にしか屠ってはなりません。

    ● 2つのイードのサラーへの赴き方:

    1-全身を洗浄し、この日の喜びを表すために最良の衣服を身に纏うことがスンナです。女性は装飾品などでめかしつけたりせず、香水なども身につけずに人々と共にサラーへと赴きます。月経中の女性は説教だけ聴き、サラーの際にはそこから遠ざかります。

    2-イードのサラーに参加する者はその日の朝、可能ならば徒歩で、タクビールしつつサラーの場に向かうことがスンナです。一方イマームはサラーの時まで、入場を遅らせます。

    またこの宗教儀礼を誇示し、かつスンナを遵守するという意味でも、サラーの場と自宅の間の行き帰りは別々の道筋になるようにするのがよいでしょう。

    3-イード・アル=フィトゥル(ラマダーン月の斎戒明けの祭日)のために自宅を出る前には、奇数個のナツメヤシの実を食べることがスンナです。一方イード・アル=アドゥハー(犠牲祭)の日に犠牲を屠る場合は、その犠牲の肉を口にするまで食べ物を控えておくのがスンナになります。

    ● 2つのイードの場所:

    2つのイードは町から近い砂漠で行うのがスンナです。そしてサラーの場に着いたら2ラクアのタヒイヤト・アル=マスジド[56]を行い、それから腰を下ろして至高のアッラーをズィクル(念唱)します。

    また2つのイードは雨や寒さなどの正当な理由がない限り、モスクの中で行うべきではありません。但しマッカはその限りではなく、ハラーム・モスク内でサラーを行います。

    ● イードの場に到着したら、イードのサラーの前後に任意のサラーを行うことが出来ます。但しタヒイヤト・アル=マスジドを除いては、サラーが禁止されている時間帯にはそうすることは出来ません。またイマームが現れるまで、タクビールに専念します。

    ● 2つのイードのサラーの形:

    サラーの時間が来たらイマームは前に進み出て、アザーンもイカーマもなしに2ラクアのサラーを率います。そして1ラクア目にはタクビーラトゥ・アル=イフラーム[57]を含めて7回、あるいは9回のタクビールを行い、1ラクア目から立ち上がって2ラクア目に入る前にはタクビールを5回唱えます。

    そして1ラクア目で「至高なる者章(第87章)」、2ラクア目では「ガーシヤ章(第88章)」を読むか、あるいは1ラクア目で「カーフ章(第50章)」、2ラクア目では「月章(第54章)」を読みます。伝えられている様々なスンナを実践するべく、時にはこれを読み、また時にはこれを読む、という風に変化をつけるのがよいでしょう。

    イマームはサラーの後に聴衆の方を向いて挨拶し、説教を始めます。そしてそこではアッラーを讃え、かれに感謝し、かれの法に則して行うことの義務に言及し、またイード・アル=アドゥハー(犠牲祭)においては犠牲を捧げることを奨励し、かつその規定について説明します。

    ● イードの日が金曜日に重なった場合、イードのサラーに参加することで金曜礼拝の参加義務はなくなります。そして金曜礼拝の代わりにズフルのサラーをします。但しイマームはイードのサラーを済ませた後も金曜礼拝の義務がなくなることはなく、同様にイードのサラーに参加しなかった者も金曜礼拝には参加しなければなりません。尚イードのサラーを済ませた者でも金曜礼拝に参加すれば、ズフルのサラーをする必要はありません。

    ● イマームがタクビーラトゥ・アル=イフラーム以外のタクビールを1回忘れたままクルアーン読誦に移行してしまった場合、それをやり直す必要はありません。というのもそれはスンナであり、既にその時が過ぎてしまったからです。尚イマームに従う者たちは義務のサラーとその他の任意のサラーで行うように、タクビールと共に両手を上げます。そして2つのイードと雨乞いのサラーの際には、ラクア始めの連続したタクビール(タクビーラトゥ・アル=イフラームを除く)の際には両手を上げないようにします[58]

    ● イマームは説教においてその義務やサダカ(施し)の奨励などに関し、女性にも訓戒の言葉を向けるようにするのがスンナです。

    ● イードのサラーに遅れ、イマームがタスリームする前に途中参加した場合、イマームのタスリーム後に立ち上がり、イマームが行うのと同様の形でラクアの不足分を補います。またイードのサラーをやり損ねてしまった者は、それをやり直したりはしません。

    ● イマームがサラーを終えたら、説教を聴かずにその場を去ることも出来ますし、あるいはその場に留まって説教に耳を傾けることも出来ます‐そしてそれが最善でしょう。

    ● イードの日のタクビールの法的位置づけ:

    全ムスリムはイードの期間、自宅や市場、公道やモスクなどの場所を問わず、声を上げてタクビールすることがスンナです。尚女性はマハラム‐その夫や、またいかなる状態においても婚姻が許されない関係にある父親や兄弟や息子など‐以外の男性の前では声を上げてタクビールしないようにします。

    ● タクビールの時期:

    1-タクビールの時期はイード・アル=フィトゥル(ラマダーン月の斎戒明けの祭日)においては、イードの日の夜[59]からイードのサラーを終えるまでの間です。

    2-一方イード・アル=アドゥハー(犠牲祭)におけるタクビールの時期は、ズー・アル=ヒッジャ月[60]初日から同月13日の日没までです。

    ● タクビールの形:

    1-タクビールを偶数回唱える形式:「アッラーフ・アクバル、アッラーフ・アクバル、ラー・イラーハ・イッラッラー。ワッラーフ・アクバル、アッラーフ・アクバル、ワ・リッラーヒル=ハムド(アッラーは偉大なり。アッラーは偉大なり。アッラーの他に真に崇拝すべきものはなし。そしてアッラーは偉大なり。アッラーは偉大なり。そして全ての称賛はアッラーにこそあり)。」

    2-タクビールを奇数回唱える形式:「アッラーフ・アクバル、アッラーフ・アクバル、アッラーフ・アクバル、ラー・イラーハ・イッラッラー。ワッラーフ・アクバル、アッラーフ・アクバル、アッラーフ・アクバル、ワ・リッラーヒル=ハムド(アッラーは偉大なり。アッラーは偉大なり。アッラーは偉大なり。アッラーの他に真に崇拝すべきものはなし。そしてアッラーは偉大なり。アッラーは偉大なり。アッラーは偉大なり。そして全ての称賛はアッラーにこそあり)。」

    3-タクビールを最初に奇数回唱え、それから偶数回唱える形式:「アッラーフ・アクバル、アッラーフ・アクバル、アッラーフ・アクバル、ラー・イラーハ・イッラッラー。ワッラーフ・アクバル、アッラーフ・アクバル、ワ・リッラーヒル=ハムド(アッラーは偉大なり。アッラーは偉大なり。アッラーは偉大なり。アッラーの他に真に崇拝すべきものはなし。そしてアッラーは偉大なり。アッラーは偉大なり。そして全ての称賛はアッラーにこそあり)。」

    ここにおける相違は大した問題ではないので、各言葉を時にはこれ、時にはこれ、といった風に変化をつけて用いるようにします。

    ● 新奇な祝祭に関する法的見解:

    誰かの誕生記念日や、ヒジュラ暦あるいは西暦の元旦、イスラーゥ[61]の夜、シャアバーン月[62]15日の夜、預言者生誕節、母の日のお祝いなど、現在多くのムスリムの間に蔓延している祝祭の数々は糾弾すべきビドゥア[63]です。

    ゆえにこのようなイスラームに根拠のない祝祭を行ったり、認証したり、そこに招待したり、あるいはそのための拠出を担ったりすることは罪深い行いです。そのような者は自ら犯す罪と共に、その者が原因となってそれに参加した他人の罪をも問われることになるでしょう。

    6-日蝕と月蝕のサラー

    ● 月蝕とは:夜に月の光が全部、あるいは部分的に消えてしまうことです。

    ● 日蝕とは:昼に太陽の光が全部、あるいは部分的に消えてしまうことです。

    ● 日・月蝕のサラーの法的位置づけ:

    日・月蝕のサラーは、旅行中か定住中か、男性か女性かを問わず全ムスリムにとって強く推奨されたスンナです。

    ● 日・月蝕の時間の知り方:

    日・月蝕は太陽や月の周期が定められているのと同様に、特定の周期に沿って起こります。アッラーは日蝕が(ヒジュラ暦の)月末に、そして月蝕が月の中程に起こるように自然界の法則を定められました。

    ● 日・月蝕の原因:

    日蝕や月食が起こったら、恐れへりくだりつつモスクか自宅に赴くようにしますが、モスクの方がよいでしょう。

    地震や台風、火山などにも原因があるように、日・月蝕にもアッラーが定められた自然法則に則った原因があります。そしてそこに潜む英知とは、しもべがその恐怖によりアッラーへと立ち返ることなのです。

    ● 日・月蝕のサラーの時間帯:

    蝕が始まってから終わるまでです。

    ● 日・月蝕のサラーの形:

    日蝕のサラーにも月蝕のサラーにも、アザーンやイカーマはありません。ただ昼か夜に「集団礼拝をします」と1度、あるいは何回か告知するのみです。

    イマームはタクビールをし、アル=ファーティハ章を読み、次いでクルアーンを声に出して長めに読誦します。それから長いルクーゥを行い、「サミアッラーフ・リマン・ハミダフ(アッラーはかれを讃える者をお聞き入れになられよう)」「ラッバナー・ワ・ラカ・アル=ハムド(私たちの主よ、そしてあなたにこそ全ての称賛があります)」と唱えつつ立ち上がります。そしてサジダに移行せずに、再びアル=ファーティハ章とクルアーンの別の箇所を読みますが、その際最初よりは短めに済ませます。またルクーゥも1回目のそれよりは短めに切り上げ、今度は長い2回のサジダをします。

    1ラクア目は2ラクア目よりも長く、その間には座位姿勢があります。2ラクア目も1ラクア目と同様に進めますが、1ラクア目より短めに済ませ、最後はタシャッフドとタスリームで締めくくります。

    ● 日・月蝕のサラーの説教の形:

    サラーの後イマームは人々を戒め、彼らの心が強く印象付けられるべくその偉大な現象について想起させ、またドゥアー(祈願)とイスティグファール(アッラーに罪の赦しを乞うこと)を数多く行うよう命じる説教を行うのがスンナです。

    アーイシャ(彼女にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)の時代に、日蝕が起こりました。それでアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)はサラーに立ち、非常に長く立ち続けました。そして非常に長いルクーゥをし、そこから頭を上げるとまた長く‐1回目のそれよりは短く‐立ち続けました。それからまた長い‐1回目のそれよりは短い‐ルクーゥをし、それからサジダに移りました。

    そして(サジダを終えると)また長く立ち続けましたが、それは1回目のそれよりは短いものでした。また長いルクーゥをしましたが、これも1回目のそれよりは短いものでした。それから頭を上げてまた立ち続けましたが、これも1回目のそれよりは短く、次いでまた長いルクーゥをしましたが、これまた1回目のそれよりは短いものでした。そしてサジダに移行しました。

    それからアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は立ち去りましたが、日蝕は既に終わっていました。彼は人々に説教し、アッラーを讃え、こう言いました:“実に太陽と月はアッラーのみしるしの1つであり、その蝕は誰かの死や誕生によって起こるのではないのだ。ゆえにそれ(蝕)を目の当たりにしたらタクビールし、アッラーにドゥアー(祈願)し、サラーし、サダカ(施し)するのだ。ムハンマドのウンマ(共同体)よ!その男女のしもべが姦淫することを、アッラーよりも激しく非難されるお方はないのだぞ。ムハンマドのウンマ(共同体)よ!アッラーにかけて!もしあなた方が私の知るところのものを知ったなら、沢山泣き少ししか笑わなかったことであろう。私は確かに伝えたぞ。”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[64]

    ● 日・月蝕のサラーのやり直し:

     日蝕のサラーのラクアは、各ラクアの最初のルクーゥをイマームと共に行えば遂行したことになります。そしてもしやり損ねた場合、日蝕が終わってしまったらやり直しすることもありません。

    ● サラーしている途中に日蝕が終わったら、残りのサラーを短めに完遂します。そしてもしサラーを終えた時点で日蝕が終わっていなかったら、それが終わるまでドゥアー(祈願)やタクビール、サダカ(施し)などに努めるようにします。

    ● 日・月蝕というみしるしの理解:

     日蝕という現象は人々を、タウヒードの純化やアッラーへの献身的服従、罪悪やアッラーへの反逆の抑制、アッラーに対する畏怖の念や悔悟の気持ちへといざなってくれます。

    1-至高のアッラーは仰られました:-われら(アッラーのこと)がみしるしをもたらすのは、(しもべに)畏怖の念を呼び起こさせるためなのである。,(クルアーン17:59)

    2-アブー・マスウード・アル=アンサーリー(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は言いました:“太陽と月は、それでもってアッラーがそのしもべを恐れさせるところのかれのみしるしである。そしてその蝕は誰かの死や誕生によって起こるわけではない。ゆえにそれを目にしたら、それが無くなるまでサラーし、アッラーにドゥアー(祈願)するのだ。”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[65]

    ● みしるしのサラー:

    地震や洪水、噴火やその他の自然災害などのみしるしに遭遇した場合、各ラクアが3つのルクーゥと2つのサジダからなる4ラクアか6ラクアの「みしるしのサラー」を行うことが出来ます。

    7-雨乞いのサラー

    ● 雨乞いのサラーとは:特定の形において、至高のアッラーに雨の恵みを乞い祈願することです。

    ● 雨乞いのサラーの法的位置づけ:

     雨乞いのサラーは強く推奨されたスンナで、サラーが禁じられている以外の時間帯でなければいつでも行うことが出来ます。しかし最良の時間帯は、太陽が昇ってから槍1本分の高さほどにまで上がった頃でしょう。

    ● 雨乞いのサラーが定められたことに潜む英知:

     雨が滞って旱魃になり始めたら、雨乞いのサラーが可能になります。

     イマームが雨乞いのサラーをすると決めた日には、ムスリムの老若男女が質素な格好で慎み深くへりくだりながら、畏怖の念と哀願に包まれつつ砂漠へと赴きます。

    ● 雨乞いの種類:

     雨乞いは:集団による雨乞いのサラーの形か、あるいは金曜日の説教の後や不特定のサラー後のドゥアー(祈願)、または説教やサラーに付随しない単なるドゥアーだけの形でも行われ得ます。

    ● 雨乞いのサラーの形:

    イマームがアザーンとイカーマなしに、2ラクアのサラーを行います。

    最初のラクアではタクビーラトゥ・アル=イフラーム[66]を含む7回のタクビールを唱え、声に出してアル=ファーティハ章とクルアーンの章句を読みます。それからルクーゥとサジダをし、2ラクア目に移行すべく立ち上がります。

    2ラクア目には、起き上がった際のタクビールを除いて5回のタクビールを唱えます。それから声に出してアル=ファーティハ章とクルアーンの章句を読み、2ラクア目を終えたらタシャッフドをしてタスリームします。

    ● 説教の時間帯:

    イマームは、雨乞いのサラー前に説教をすることがスンナです。

    1-ウバード・ブン・タミーム(彼にアッラーのご満悦あれ)が彼の叔父から伝えるところによれば、彼は言いました:「私は、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)が雨乞いに赴くのを目にしました。彼は人々に背を向けると、キブラの方に向かってドゥアー(祈願)しました。それから衣服を左右逆にして纏い、クルアーンを声に出しつつ2ラクアのサラーを率いました。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[67]

    2-アーイシャ(彼女にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は太陽が欠け始めた時、家を後にしました。そして説教壇に昇るとタクビールとタハミード[68]を唱え、こう言いました:“実にあなた方は土地の旱魃を嘆いている…”そして人々の方を向くと説教壇を降り、2ラクアのサラーを行いました。」(アブー・ダーウードの伝承[69]

    ● 雨乞いのサラーの形:

    イマームは立ったまま、サラーの前に1部からなる説教を行います。そして至高のアッラーを讃え、タクビールし、イスティグファール(アッラーに罪の赦しを乞うこと)し、スンナで確証された次のようなことを喋ります:

    「実にあなた方は土地の旱魃と、長期間の雨の遅延を嘆いている。そして偉大かつ荘厳なるアッラーは、あなた方にかれに祈るようご命じになられた。そしてかれは、それにお応えになられることをご約束されたのだ。」それからこう唱えます: -万有の主アッラーにこそ全ての賞賛はあり。(かれは)最も慈悲遍く慈悲深いお方。審判の日の裁き手。,(クルアーン1:1-3)「アッラーの他に真に崇拝すべきものはなし。かれはお望みになられることを行われます。アッラーよ、あなたこそはあなた以外に真に崇拝すべきもののないお方。あなたこそは何ものをも必要とされぬお方で、私たちは窮乏者です。私たちに恵みの雨をお降らしになり、それでもって私たちの暫しの力と成長として下さい。」(アブー・ダーウードの伝承[70]

    「アッラーよ、日延べすることなく、私たちに害の無い有益な、祝福された豊穣の恵みの雨をお降し下さい。」(アブー・ダーウードの伝承[71]

    「アッラーよ、あなたのしもべたちと畜獣たちに雨を降らせ、あなたのご慈悲を広く行き渡らせ、あなたの枯れ果てた土地を蘇らせて下さい。」(アブー・ダーウードとマーリクの伝承[72]

    「アッラーよ、私たちに恵みの雨をお降らし下さい。アッラーよ、私たちに恵みの雨をお降らし下さい。アッラーよ、私たちに恵みの雨をお降らし下さい。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[73]

    「アッラーよ、私たちを潤して下さい。アッラーよ、私たちを潤して下さい。アッラーよ、私たちを潤して下さい。」(アル=ブハーリーの伝承[74]

    ● もし多量の降雨で被害の危険がありそうな場合は、このように唱えるのがスンナです:

    「アッラーよ、私たちの真上ではなく私たちの周囲に[75]。アッラーよ、山や丘に、渓谷に、苗木に(雨を押しやって下さい)。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[76]

    ● 雨は主からの新参者です。雨が降ったら衣服の一部をはだけさせ、次のように言いながらそれを体の一部に浴びるのがスンナです。

    「アッラーよ、豊かで有益な雨を(お恵み下さい)。」(アル=ブハーリーの伝承[77]

    ● 雨が降った後には、このように唱えます:「アッラーの恩恵とご慈悲によって、私たちは雨に恵まれました。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[78]

    ● イマームは雨乞いの際両手を上げ、人々もそれに習うのがスンナです。また説教の際のイマームのドゥアー(祈願)には、タアミーン[79]するようにします。

    ● 説教の後に行うこと:

    イマームは説教が終わったら、キブラに向かってドゥアー(祈願)します。それから衣服を左右逆にして纏い、人々も両手を上げてドゥアーします。そして2ラクアの雨乞いのサラーに移行するのです。

    ● イバーダ(崇拝行為)や服従行為において集まることには2種類あります:

    ① 決まって繰り返されるもの:これは5つの義務のサラーや金曜礼拝のような義務的なものと、2つのイードのサラーやタラーウィーフ、日・月蝕のサラーや雨乞いのサラーのようなスンナであるものがあります。これらは決まって繰り返されるべきものであり、遵守されなければなりません。

    ② 決まって繰り返されはしないもの:これは夜の任意のサラーやドゥアー(祈願)など、集団では常習的に行われるべきではないものです。このようなことは時にするのは問題はありませんが、決まった習慣としてはなりません。

    8-ドゥハーのサラー

    ● ドゥハーのサラーは:スンナであり、最低2ラクアで、上限はありません。

    ● 時間帯は:太陽が昇ってから槍1本分の高さほどになるまで‐計測的目安としては1m、時間的目安としては(太陽が昇ってから)約15分後‐から、子午線にさしかかる前までです。その中でも最良の時間帯は、暑さが増して子ラクダの足が(太陽の灼熱で熱された砂の熱さに)熱される時と言われています。

    ● ドゥハーのサラーの徳:

    1-アブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「私の愛する友人(アッラーの使徒のこと)は、私に3つのことを勧めました。そして私はそれら‐毎月3日のサウム(斎戒)とドゥハーのサラー、ウィトルをして寝ること‐を死ぬまで手放さないでしょう。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[80]

    2-アブー・ザッル(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「毎朝あなた方の身体の各関節には、サダカ(あらゆる形での慈善行為)が課せられる。全てのタスビーフ[81]は1つのサダカであり、全てのタハミード[82]は1つのサダカであり、全てのタハリール[83]は1つのサダカであり、全てのタクビール[84]も1つのサダカである。また善行を勧めることも1つのサダカであれば、悪行を禁じることも1つのサダカである。そしてドゥハー(午前)に礼拝する2ラクアは、それら全てに相当するのだ。」(ムスリムの伝承[85]

    9-イスティハーラのサラー

    ● イスティハーラとは:何らかの義務的なあるいは推奨されるべき物事同士が対立したり、あるいは何らかの合法的な物事における福利が明確でなかったりした場合に、至高のアッラーに最良の選択を仰ぐことです。

    ● イスティハーラの法的位置づけ:

    イスティハーラのサラーはスンナです。

    2ラクアからなり、イスティハーラのドゥアー(祈願)はタスリーム[86]の前後に唱えますが、タスリーム前の方が望ましいでしょう。

    イスティハーラのサラーは時間を変えて、何回も行うことが出来ます。またイスティハーラの前には雑念が入らぬよう、自分の心を整理して落ち着いた状態にしておきます。

    ● アッラーに対するイスティハーラにせよ、人間に対する相談事にせよ、非合法なことや厭われるべき以外のことに関して思い迷っている者にとって、それらは推奨された行いとなります。物事に関して創造主にイスティハーラし、被造物に相談事をして決定する者は、後悔することがないでしょう。至高のアッラーはこう仰られました:-そして諸事において彼らに相談し、一旦決心したら、アッラーにタワックル(全て委ねること)するのだ。,(クルアーン3:159)

    ● イスティハーラの形:

    ジャービル・ブン・アブドッラー(彼らにアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒はクルアーンの章を教えるように、全ての物事においてイスティハーラをすることを私たちに教えました。(預言者は)言いました:“もしあなた方が何かに迷ったら任意の2ラクアの礼拝をし、それからこう唱えるのだ:「アッラーよ、私はあなたの知識による選択を乞います。あなたのお力を求めます。私は偉大なるあなたの恩恵を求めます。あなたこそは何事も可能なお方で、私は無力です。あなたこそご存知で、私は無知です。あなたは不可視なる世界をご存知の御方です。アッラーよ、もしこの事が私の宗教と生活と事の結末にとって最善であるとご存知ならば(あるいは次のように言いました:「私の現世と来世にとって最善であるとご存知ならば」)、私にそれを可能にし、容易くして下さい。それからそれにおいて私を祝福して下さい。そしてもしこの事が私の宗教と生活と事の結末にとって悪いとご存知ならば(あるいは次のように言いました:「私の現世と来世にとって悪いとご存知ならば」)、それを私から遠ざけ、そして私をそれから遠ざけて下さい。そしてそれがどんなことであろうと、最善の事を私に可能にして下さい。それからそれによって私を満足させて下さい。”そして必用な事に言及するのだ。」(アル=ブハーリーの伝承[87]

    [1] 訳者注:詳しくは「タウヒードとイーマーン」の章の「イーマーン」の項を参照のこと。

    [2] 訳者注:「2つのイード」とは、イード・アル=フィトゥル(ラマダーン月の斎戒が明けた翌日、つまりシャウワール初日の祭日)と、イード・アル=アドゥハー(ズル=ヒッジャ月10日目の、いわゆる犠牲祭)のことです。

    [3] 訳者注:義務のサラー(礼拝)の前後に行うことが推奨されている随意の礼拝のこと。

    [4] 訳者注:太陽が昇ってから正午前までに行われるスンナの礼拝。ラクア数は2、4、6,8,12など諸説あります。

    [5] 訳者注:深夜に任意で行う礼拝。普通は一旦寝た後に、そのために深夜に起き上がってする礼拝のことを言います。

    [6] 訳者注:モスクに入った時、腰を下ろす前に行う2ラクアのサラーのこと。預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)のスンナです。

    [7] 訳者注:イスラームにおいて定められたある一定の形式における、心身の清浄化を意図した体の各部位の洗浄。

    [8] 訳者注:「ウィトル」とは、イシャー後からファジュル前までに行うのがスンナ・ムアッカダ(義務ではないが非常に推奨された行為)とされている、奇数回の形式をとる礼拝。

    [9] 訳者注:預言者ムハンマド(彼にアッラーの祝福と平安あれ)の言動や、彼の認証したこと、及び彼の性質的・形質的諸特徴のこと。ムスリムは可能な限り、彼のスンナを踏襲するべきであるとされています。

    [10] サヒーフ・ムスリム(728)。

    [11] サヒーフ・アル=ブハーリー(937)、サヒーフ・ムスリム(729)。文章はムスリムのもの。

    [12] サヒーフ・アル=ブハーリー(731)、サヒーフ・ムスリム(781)。文章はアル=ブハーリーのもの。

    [13] 真正な伝承。スナン・アブー・ダーウード(3579)、スナン・アッ=ティルミズィー(572)。文章はアン=ナサーイーのもの。

    [14] サヒーフ・ムスリム(1163)。

    [15] サヒーフ・ムスリム(757)。

    [16] サヒーフ・アル=ブハーリー(1145)、サヒーフ・ムスリム(758)。文章はアル=ブハーリーのもの。

    [17] サヒーフ・アル=ブハーリー(1142)、サヒーフ・ムスリム(776)。文章はアル=ブハーリーのもの。

    [18] サヒーフ・アル=ブハーリー(4837)、サヒーフ・ムスリム(2820)。文章はアル=ブハーリーのもの。

    [19] 訳者注:「ウィトル」とは、イシャー後からファジュル前までに行うのがスンナ・ムアッカダ(義務ではないが非常に推奨された行為)とされている、奇数回の形式をとる礼拝。

    [20] 訳者注:例えば日没時間が19時で、夜明けが5時とします。すると夜は10時間ですから、それを半分にすれば前半が19時から0時まで、後半は0時から5時までとなります。その結果、タハッジュドに適した時間帯は0時から大体3時15分頃までの時間帯であることが分かります。

    [21] サヒーフ・アル=ブハーリー(1131)、サヒーフ・ムスリム(1159)。文章はアル=ブハーリーのもの。

    [22] 訳者注:歯磨き用に用いる、ある特定の種類の小枝のこと。それを用いて歯磨きをすることが最善ですが、なければ他の物で代用します。

    [23] サヒーフ・ムスリム(768)。

    [24] 訳者注:礼拝最後の動作で、右と左に振り向いて挨拶すること。

    [25] サヒーフ・アル=ブハーリー(1137)、サヒーフ・ムスリム(749)。文章はアル=ブハーリーのもの。

    [26] サヒーフ・アル=ブハーリー(1139)。

    [27] 訳者注:「1ジュズ」とは量的に言えば、クルアーンの30分の1にあたります。

    [28] 訳者注:アッラーの完全無欠性、全ての物事から超越する崇高さを讃えること。「スブハーナッラー」という言葉による唱念に代表されます。

    [29] サヒーフ・アル=ブハーリー(998)、サヒーフ・ムスリム(751)。

    [30] 真正な伝承。スナン・アブー・ダーウード(1422)、スナン・アン=ナサーイー(1712)。文章はアブー・ダーウードのもの。

    [31] 訳者注:イスラーム法におけるファジュル(暁)には2つあり、偽のファジュルと真のファジュルがあります。前者は夜明け前に縦に伸びる光で、後者は全体的に広がってくる光です。

    [32] サヒーフ・アル=ブハーリー(996)、サヒーフ・ムスリム(745)。文章はムスリムのもの。

    [33] サヒーフ・ムスリム(746)、スナン・アン=ナサーイー(1713)。

    [34] サヒーフ・アル=ブハーリー(1178)、サヒーフ・ムスリム(721)。文章はアル=ブハーリーのもの。

    [35] サヒーフ・ムスリム(755)。

    [36] 真正な伝承。スナン・アブー・ダーウード(1439)、スナン・アッ=ティルミズィー(470)。

    [37] 訳者注:「クヌート」とは、ウィトルの最後のラクアのルクーゥ(お辞儀の形の礼)前か後に行われるドゥアー(祈願)のことです。

    [38] 真正な伝承。スナン・アブー・ダーウード(1425)、スナン・アッ=ティルミズィー(464)。

    [39] 真正な伝承。アル=バイハキー(3144)。イルワーウ・アル=ガリール(428)を参照のこと。

    [40] サヒーフ・ムスリム(2720)。

    [41] 訳者注:「タクワー」は「自らを守る」という動詞の名詞形。つまりアッラーを畏れ、またそのお怒りと懲罰につながるような行い‐つまりかれが命じられたことに反したり、あるいは禁じられた事柄を犯したりすることなど‐を避けることで、自らの身をアッラーのお怒りや懲罰から守ることを意味します。

    [42] サヒーフ・ムスリム(2722)。

    [43] 真正な伝承。スナン・アブー・ダーウード(1427)、スナン・アッ=ティルミズィー(3566)。文章はアブー・ダーウードのもの。

    [44] 訳者注:サラーを開始する際に行うタクビールのことです。

    [45] 訳者注:カアバ神殿のあるマッカの方角のこと。

    [46] サヒーフ・ムスリム(746)。

    [47] 訳者注:詳しくは「タウヒードとイーマーン」の章の「イーマーン」の項を参照のこと。

    [48] サヒーフ・アル=ブハーリー(2009)、サヒーフ・ムスリム(759)。文章はアル=ブハーリーのもの。

    [49] サヒーフ・アル=ブハーリー(1147)。

    [50] サヒーフ・アル=ブハーリー(1138)、サヒーフ・ムスリム(764)。文章はムスリムのもの。

    [51] サヒーフ・アル=ブハーリー(4497)、サヒーフ・ムスリム(92)。文章はアル=ブハーリーのもの。

    [52] 真正な伝承。スナン・アブー・ダーウード(1375)、スナン・アッ=ティルミズィー(806)。文章はアッ=ティルミズィーのもの。

    [53] 訳者注:ヒジュラ暦10月のこと。

    [54] 訳者注:ヒジュラ暦12月のこと。

    [55] 真正な伝承。スナン・アブー・ダーウード(1134)、スナン・アン=ナサーイー(1556)。文章はアブー・ダーウードのもの。

    [56] 訳者注:モスクに入った時、腰を下ろす前に行う2ラクアのサラーのこと。預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)のスンナです。

    [57] 訳者注:サラーを開始する際に行うタクビールのことです。

    [58] 訳者注:この見解はハナフィー学派のもので、その他の3学派では両手を上げます。

    [59] 訳者注:ヒジュラ暦は日没から始まるので、西暦的感覚から言うとイードの日の前日の晩からです。

    [60] 訳者注:ヒジュラ暦12月のこと。

    [61] 訳者注:預言者ムハンマドが、1晩でマッカからエルサレムまで移動した奇跡の「夜の旅」の事を指しています。そして更に彼は、そこから大天使ジブリールに伴われて天界を訪問しました。

    [62] 訳者注:ヒジュラ暦8月のこと。

    [63] 訳者注:「ビドゥア」とは、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)やその教友、その次世代の者たちも行っていなかったような宗教に関する物事を新規に発明したり、実践したりすることです。またあるいは法的典拠にそぐわないような物事で、預言者ムハンマド(彼にアッラーの祝福と平安あれ)の示した手法や道である「スンナ」の反対語です。

    [64] サヒーフ・アル=ブハーリー(1044)、サヒーフ・ムスリム(901)。文章はムスリムのもの。

    [65] サヒーフ・アル=ブハーリー(1041)、サヒーフ・ムスリム(911)。文章はムスリムのもの。

    [66] 訳者注:サラーを開始する際に行うタクビールのことです。アッラーが何よりも偉大であり、それ以外の存在はかれなしでは存在することが出来ない小さな存在であることを実感することで、サラー中の畏怖の念を呼び起こし、またかれ以外の何かに心を囚われることがないようにします。

    [67] サヒーフ・アル=ブハーリー(1025)、サヒーフ・ムスリム(894)。文章はアル=ブハーリーのもの。

    [68] 訳者注:アッラーにこそ全ての賛美があると唱念すること。「アル=ハムドリッラー」という言葉に代表されます。

    [69] 良好な伝承。スナン・アブー・ダーウード(1173)。

    [70] 良好な伝承。スナン・アブー・ダーウード(1173)。

    [71] 真正な伝承。スナン・アブー・ダーウード(1169)。

    [72] 良好な伝承。スナン・アブー・ダーウード(1176)、ムワッタア・マーリク(449)。文章はアブー・ダーウードのもの。

    [73] サヒーフ・アル=ブハーリー(1014)、サヒーフ・ムスリム(897)。

    [74] サヒーフ・アル=ブハーリー(1013)。

    [75] 訳者注:つまり被害を及ぼすような大雨ではなく、適度かつ有益な雨を願うことを示しています。

    [76] サヒーフ・アル=ブハーリー(1013)、サヒーフ・ムスリム(897)。文章はアル=ブハーリーのもの。

    [77] サヒーフ・アル=ブハーリー(1032)。

    [78] サヒーフ・アル=ブハーリー(1038)、サヒーフ・ムスリム(71)。

    [79] 訳者注:アル=ファーティハ章を読み終わった後に唱える、「アーミーン」という言葉を指します。キリスト教の普及によって日本人が誰でも知るようになった「アーメン」という言葉と同様に、「アッラーよ、(祈りに)お応え下さい。」という意味があります。

    [80] サヒーフ・アル=ブハーリー(1981)、サヒーフ・ムスリム(721)。文章はアル=ブハーリーのもの。

    [81] 訳者注:アッラーの完全無欠性、全ての物事から超越する崇高さを讃えること。「スブハーナッラー」という言葉による唱念に代表されます。

    [82] 訳者注:アッラーにこそ全ての賛美があると唱念すること。「アル=ハムドリッラー」という言葉に代表されます。

    [83] 訳者注:アッラーこそが唯一の主であり、真に崇拝すべき対象であることを唱念するための言葉。「ラー・イラーハ・イッラッラー」という言葉に代表されます。

    [84] 訳者注:アッラーこそが最も偉大であり、それ以外のものは全て些少な存在であることを唱念するための言葉。「アッラーフ・アクバル」という言葉に代表されます。

    [85] サヒーフ・ムスリム(720)。

    [86] 訳者注:礼拝最後の動作で、右と左に振り向いて挨拶すること。

    [87] サヒーフ・アル=ブハーリー(6382)。

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