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巡礼者もまた、諸々の罪ややむをえない違反などの出来事から免れません。ここでは、そのような場合に課せられるペナルティとしての贖罪について見ていきます。

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④贖罪

 

     イフラームによって禁じられたことは、贖罪の観点から4種類に分類されます:

1-贖罪がそもそも義務付けられないもの:婚姻の契約がこれに当てはまります。

2-厳しい贖罪:ハッジにおけるイフラームの部分的解除前の性交がこれに該当します。贖罪はラクダ1頭の犠牲です。

3-報い、あるいは代替物による贖罪:食用可能な陸上動物を狩猟し、殺してしまう罪に適用されます。

4-損害による贖罪:毛を切ったり香水をつけたりすることなど、上記以外の全てのイフラームによって禁じられたことがこれに該当します。

     病気などの正当な理由ゆえに、頭髪の除去やマヒートゥ[1]の着用など、イフラームにおける禁止事項(性交は除く)を犯さなければならない者には、損害による贖罪が課せられます。

 

     損害による贖罪は、以下の3つのことから選択して行います:

13日間のサウム(斎戒)。

26人の貧者の各々に小麦や米やナツメヤシの実などを半サーア[2]ずつ、あるいは各々に平均的レベルの食事をご馳走すること。

3-羊を1頭犠牲に捧げること。

至高のアッラーはこう仰られました:-それであなた方の内、病気や(害虫などによる)頭部の問題などを抱えている者は、(3日間の)斎戒、サダカ(施し)、犠牲の内から贖罪を(選ぶ)。,(クルアーン2196

尚、3日間のサウム(斎戒)はどこででも行うことが可能ですが、犠牲と食事の贖罪に関してはマッカの困窮者のみが対象となります。

 

     イフラームにおける禁止事項を犯した者に関する法的見解:

イフラームにおいて禁じられている何かを無知から、あるいは忘却から、あるいは他人からの強制ゆえに犯してしまっても、罪を犯したとは見なされません。ゆえに贖罪も義務付けられません。そのような者は即、犯してしまった禁止事項を止めなければなりません。

またイフラームにおいて禁じられている何かを何らかの必要ゆえに故意に犯した場合、贖罪が課せられますが、罪を犯したとは見なされません。

一方正当な理由や必要もなく、かつ故意にイフラームにおいて禁じられている何かを犯した者は罪を犯したと見なされ、贖罪が課せられます。

 

     陸上生物を狩猟して殺生してしまった場合の贖罪:

イフラームの状態にある時に故意に陸上生物を狩猟して殺生してしまった場合、もしその動物と同等の家畜を所有していたならば、以下の選択が出来ます:

       その家畜を屠り、聖域の困窮者にご馳走すること。

       その家畜の価格を査定し、その金額でもって食料や食事を購入し、各々の困窮者に半サーア[3]ずつ施すこと。

       あるいは施すべき困窮者の人数分だけの日数のサウム(斎戒)を行うこと。

 また狩猟して殺生した生き物と同等の家畜がない者は、その生き物の価格を査定し、同様に食事を施すか、あるいは施すべき人数分だけの日数のサウム(斎戒)を行います。

 至高のアッラーはこう仰られました:-信仰する者たちよ、あなた方がイフラームの状態にある時に狩りをして(捕らえた生き物を)殺生してはいけない。それで故意に殺してしまったら、その報いは殺生したのと同様の家畜である。(その家畜は、)あなた方の内(宗教・人格的に)信頼性のある男2人が見積もったものとし、それを聖域へ犠牲として送るのだ。もしくは困窮者たちに食を施すか、あるいはそれに相応するサウム(斎戒)を贖罪として行え。,(クルアーン595

 

     ハッジとウムラにおける性交の贖罪:

1-イフラームの部分的解除[4]前に犯してしまった性交の贖罪は、ラクダ1頭の犠牲です。そしてもしそれがなければ、ハッジ中に3日間、そして巡礼を終えて帰ってから7日間のサウム(斎戒)を行います。一方、性交がイフラームの部分的解除の後であったのなら、贖罪は「損害による贖罪[5]」となります。また女性は強制されたのではない限り、男性と同様の贖罪が課せられます。

2-ウムラにおいて、サアイ、または剃髪あるいは散髪の前に配偶者と性交してしまった者の贖罪もやはり「損害による贖罪」です。

 

     聖域において草木を伐採したり、動物を狩猟して殺生したりすることの法的見解:

1ムフリム(イフラームの状態にある者)であろうとそうでなかろうと、マッカの聖域においてレモングラス以外の草木を刈ったりしてはなりません。但し人為で植えたものはその限りではなく、贖罪は義務付けられません。また聖域において狩猟することも禁じられており、もしその禁止を犯してしまったら贖罪しなければなりません。

2-狩猟と植物の伐採はマディーナの聖域においても禁じられていますが、贖罪は義務付けられません。しかしそれらを犯した者は罪を犯したことに違いはなく、かつ裁判官の裁量による刑罰を適用されます。また飼葉などのために必要な草の伐採などは許されています。この世には、この2つの聖域‐マッカとマディーナ‐以外の聖域は存在しません。

 

     マディーナの聖域の境界:

東は東部溶岩地帯、西は西部溶岩地帯、そして北はウフド山裏のサウル山、南はその東側の麓にアル=アキークの谷があるところのイール山までです。

 

     イフラームにおける禁止事項を何度も繰り返し犯すことの法的見解: 

 イフラームにおける同種類の禁止事項を何度も繰り返し犯した者は、1度の贖罪しか義務付けられません(但し狩猟は別です)。一方、イフラームにおける禁止事項を複数種類犯してしまった場合、‐例えば剃髪と香水など‐贖罪は各種類につき1度ずつ課せられます。

     イフラーム中の婚姻契約は禁じられており、かつ無効で、贖罪は義務付けられていません。但しイフラーム中でも復縁[6]することは許されています。

 

     巡礼において犠牲を捧げる義務のある者:

タマットゥ(ウムラを終えてからハッジに移行する巡礼形式)を行う者とキラーン(ハッジとウムラを同時進行する巡礼形式)を行う者は、マッカ居住者でない限り犠牲を捧げなければなりません。犠牲は羊1頭かラクダ、あるいは牛7分の1頭です。犠牲を手に入れることが出来ない者や購入する能力のない者は、ハッジ中のアラファの日[7]以外に3日間のサウム(斎戒)‐アラファの日前後に行うことが出来ますが、後の方が良いとされ、最後の日はズー・アル=ヒッジャ月[8]13日目です‐を、そして国に帰ってから7日間の合計10日間のサウムをしなければなりません。一方イフラード(ハッジのみを行う巡礼形式)を行う者には、犠牲はそもそも課せられません。

至高のアッラーはこう仰られました:-そしてウムラをもって(一旦イフラームを解除し、)ハッジ(の時期)まで(イフラームによる禁止事項の制限を受けないことによる)タマットゥ(享受)を受ける者は、容易に得られる犠牲を屠るのだ。そして(犠牲を)手に入れることの出来ない者は、ハッジ(の時期)に3日間の、(自国に)帰った後に7日間のサウム(斎戒)をせよ。それが10日間一杯の(サウムの)である。そしてそれはハラーム・モスク(つまりマッカの聖域)居住者以外の者に適用される。アッラー(のお怒りや懲罰の原因となるような物事)から身を慎み、アッラーこそ厳しい懲罰を与えられるお方であることを知るのだ。,(クルアーン2196

     聖域内で屠られた犠牲の肉や食事の施しの分配は、全て聖域の困窮者に施されます。また損害のための犠牲や巡礼を阻まれた場合の犠牲は、それが生じたその場で屠ります。また聖域内で犯した狩猟のペナルティとしての犠牲は、聖域内の貧者に施します。一方犠牲を屠ることが出来ない場合のサウム(斎戒)は、どこででも行うことが出来ます。

     タマットゥ(ウムラを終えてからハッジに移行する巡礼形式)及びキラーン(ハッジとウムラを同時進行する巡礼形式)のための犠牲は、自らそれを率い、その肉を自ら食し、かつ聖域の困窮者にその肉を分配することがスンナです。

     イフラームに入った後に何らかの理由で巡礼の完遂を妨げられた者は、イフラームを解除するために犠牲を捧げ、頭髪を刈るか剃るかします。もし犠牲がない場合はそれは免除され、そのままイフラームを解除することが出来ます。

 

     狩猟の獲物で同等の動物が存在するものと、そうでないものに関する法的見解:

1-狩猟の獲物で同等の動物が存在するものは、以下に挙げるような種類のものです:ダチョウはラクダに値します。ノロバ(野生のロバ)とレイヨウ、鹿などは各々牛に匹敵します。ハイエナは羊で、ガゼルは山羊に値します。ハイラックスとトカゲは各々雄の子山羊で、トビネズミは4ヶ月以上の雌の子山羊に相当します。ウサギには1歳未満の雌の子山羊です。また鳩やそれに類するものには、羊です。これ以外の動物に関しては、この分野に見識のある、宗教を遵守し常識を備えた2人の男性の見解を仰ぎます。

2-それと同等な家畜が存在しないような狩猟の獲物に関しては、その価値を金額で見積もり、その額で食料や食事を購入します。そして各困窮者に半サーア[9]ずつ施すか、あるいはその人数分だけサウム(斎戒)します。

 

     ハッジにおける犠牲の種類:

1タマットゥ(ウムラを終えてからハッジに移行する巡礼形式)とキラーン(ハッジとウムラを同時進行する巡礼形式)の犠牲:ハッジをする者はそれを聖域まで連れて行き、その肉を自分自身で食べ、かつ貧者に施します。

2-贖罪ゆえの犠牲:頭髪の除去やマヒートゥ[10]の着用など、イフラームにおける禁止事項を犯した者に課せられます。

3-報い、あるいは代替物による贖罪:食用可能な陸上動物を狩猟し、殺してしまった者に課されます。

4-前もって条件付けていなかった場合[11]を除き、何らかの正当な理由で巡礼の儀の完遂やハラーム・モスクへの入場を阻まれてしまった者に課される犠牲。

5-イフラーム解除前に性交してしまった者に課される、性交のペナルティとしての犠牲。

 上記の犠牲の内最後の4種に関しては、自分自身でその肉を食べることをしません。それを屠り、肉はマッカの貧者に施します。

 

     犠牲の肉を聖域外へと持ち出すことに関する法的見解:

この点に関して、ハッジをする者が屠る犠牲の種類には3種類あります:

1タマットゥ(ウムラを終えてからハッジに移行する巡礼形式)、あるいはキラーン(ハッジとウムラを同時進行する巡礼形式)の犠牲で:聖域内で屠り、その肉を自分自身で食べ、かつマッカの貧者に分配します。聖域外にも持ち出し可能です。

2-狩猟に対する報い、あるいは損害のための犠牲、またはイフラーム中の禁止事項を犯してしまったペナルティとして聖域内で屠られるもの:肉は聖域の貧者に分配され、本人はその肉を食しません。

3-ハッジの完遂を阻まれたことによる犠牲、あるいは狩猟に対する報いとしての犠牲など、聖域外で屠られるもの:その肉は屠ったその場で分配され、本人はその肉を食しません。また別の場所に携帯しても構いません。

 



[1] 訳者注:詳しくは「③イフラーム」の項を参照のこと。

[2] 訳者注:サーアはマディーナの計量単位の1つで、果実や種子・穀物類などに用いられます。1サーア(2752ml)は4ムッドに相当します。

[3] 訳者注:サーアはマディーナの計量単位の1つで、果実や種子・穀物類などに用いられます。1サーア(2752ml)は4ムッドに相当します。

[4] 訳者注:詳しくは「③イフラーム」の項参照のこと。

[5] 訳者注:この項の最初を参照のこと。

[6] 訳者注:詳しくは「婚姻」の章「復縁」の項を参照のこと。

[7] 訳者注:ヒジュラ暦12月の9日目のこと。

[8] 訳者注:ヒジュラ暦12月のこと。

[9] 訳者注:サーアはマディーナの計量単位の1つで、果実や種子・穀物類などに用いられます。1サーア(2752ml)は4ムッドに相当します。

[10] 訳者注:詳しくは「③イフラーム」の項を参照のこと。

[11] 訳者注:ムフリム(イフラームに入る者)は病気や(敵による妨害などの)恐怖の状態にある場合、イフラームの際に巡礼の形式を唱える時にこう言うことがスンナです:「もし阻むものが私(の巡礼の遂行)を阻んだら、私の(イフラームを解く)場所はあなたが私を阻まれた所です」こうすれば、もし何かによって巡礼を妨害されたり病状が悪化したりしても、イフラームを解く際に犠牲を捧げなくても済むのです。

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