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巡礼では様々なアクシデントや、疑問に遭遇しますが、そのような場合の法的見解の一部をご紹介します。また預言者(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)が行った、生涯一度きりのハッジの様子もご覧下さい。

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⑨ハッジとウムラに関する法的見解

  

     イードの日‐ズー・アル=ヒッジャ月[1]10日目‐の諸行:

 ハッジを行う巡礼者は、以下のようにイードの日の諸行を順序付けるのがよいでしょう:①アル=アカバジャムラ[2]の投石、②犠牲、③剃髪あるいは頭髪を切ること、④タワーフ・アル=イファーダ[3]、⑤サアイ[4]。この順番で行うことはスンナ[5]ですので、もし剃髪を犠牲の前に行ったり、タワーフを投石より前倒しにしたりしても支障はありません。

      犠牲を屠るべき時期はイードの日から、アイヤーム・アッ=タシュリーク[6]3日目‐つまりズー・アル=ヒッジャ月13日目‐の日没前までです。

 アブドッラー・ブン・アムル・ブン・アル=アース(彼らにアッラーのご満悦あれ)によれば、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は「別れのハッジ」の際ミナーに立って、人々に質問されていました。するとそこに1人の男がやって来て、こう言いました:「“知らずに、犠牲を屠る前に剃髪してしまったのですが。”(アッラーの使徒は)言いました:“(犠牲を)屠るがよい。問題はない。”すると今度は別の男が来て、こう言いました:“知らずに、投石する前に(ラクダの)犠牲を屠ってしまったのですが。”(アッラーの使徒は)言いました:“投石するがよい。問題はない。”こうして預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は(イードの日の諸行の順番が)前倒しになったり後回しになったりしたことについて尋ねられても、“(これこれを)するがよい。問題はない”と言うのみでした。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[7]

     ジャムラート[8]の投石を遅らせることに関しての法的見解:

そもそも投石は規定時間通りに行うのがスンナです。

しかし家畜番や病人など正当な理由のある者、あるいは人の混雑によって被害を被るよ

うな者は、アイヤーム・アッ=タシュリークの投石をその最終日‐ズー・アル=ヒッジャ月13日目‐まで遅らせることが出来ます。その際はまず11日目の分を最小のジャムラ、中位のジャムラ、アル=アカバジャムラ[9]と順番に行い、それから12日目と13日目の分も同様に投石していきます。正当な理由もなくアイヤーム・アッ=タシュリーク[10]の投石を13日以降にまで遅らせることは罪ですが、理由があるならば罪はありません。そしてそのどちらの場合も規定時期が既に経過してしまったことにより投石の機会は失われますが、ハッジ自体は有効です。

     家畜番、あるいは交通警察や警備員、巡礼ガイドや医師など巡礼者全体の福利のために勤しむ者は、その必要があればアイヤーム・アッ=タシュリークにミナーで夜を過ごさなくともかまいません。そしてそのことによって贖罪を課されることもありません。

 

     ミナーの境界:

東西はムハッスィルの谷(ムズダリファとミナーの中間地点)とアル=アカバジャムラの間、南北はミナーを囲う山々までです。

 

     ムズダリファ[11]の境界:

東はアル=マアザマーン路の西端、西はムハッスィルの谷、北はスバイル山、南はアル=マリーヒーヤートゥの山々までです。

 

     アイヤーム・アッ=タシュリークにおいてジャムラートに投石する時期:

1-イードの日以降のジャムラートの投石は全て、正午以降です。午前中に投石した場合は、それを午後にやり直さなければなりません。やり直さないままアイヤーム・アッ=タシュリーク3日目の日没を迎えることは罪となり、それ以降は投石の規定時期が経過してしまったことにより投石の機会は失われます。但しそのハッジ自体は有効です。

2-投石をする者にとって、アイヤーム・アッ=タシュリーク3日間は1日に等しいものと見なされます。ゆえに1日に、その日の分の投石と別の日の分の投石をすることも可能であり、そうすることによって何の罪もありません。しかし毎日規定通りの投石をすることが最善です。

 

     タワーフ・アル=イファーダ[12]を遅延させることに関しての法的見解:

タワーフ・アル=イファーダはイードの日に行うのがスンナですが、アイヤーム・アッ=タシュリーク、更にはズー・アル=ヒッジャ月の最終日まで遅らせることも可能です。但し徒歩でも担がれてもタワーフが不可能な位の病気や、産後の出血などの正当な理由でタワーフ・アル=イファーダをズー・アル=ヒッジャ月以降にまで遅らせることは許されています。

 

     ムズダリファで逗留する羽目になってしまった場合の法的見解:

 アラファからムズダリファに向かう際、混雑などの原因でイシャー(夜の礼拝)の時間内にムズダリファ到着が叶いそうにない場合は、到着前の道中で礼拝します。また何らかの理由でファジュルの時間に入った後、あるいは太陽が昇った後にムズダリファに到着した者は、そこに少しの間滞在した後、引き続きミナーに向かって移動します。このような者に関しては罪もなく、また贖罪も課されることもなく、そのハッジも有効なものと見なされます。

     ジャムラートの投石で複数の小石を一度に投げた場合、1個の小石を投げたとしか見なされません。ゆえにそのような者はそれを考慮し、残りの投石を完遂する必要があります。また投石する場所というのは小石を入れる穴のことであり、目印としてそこに建てられている壁のことではありません[13]

 

     日没以降に投石することに関する法的見解:

 巡礼者はアイヤーム・アッ=タシュリークにおいて、正午を過ぎてから昼間の内に投石を済ませることが最善です。しかしもし混雑を恐れる場合は、日没以降に投げることも可能です。というのも預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は投石開始の時刻は定めましたが、終了時刻は明示しなかったからです。

 イブン・アッバース(彼らにアッラーのご満悦あれ)によれば、ある者が預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)にこう質問しました:「“日没以降に投石してしまったのですが。”(預言者は)言いました:“問題はない。”また別の者はこう質問しました:“犠牲を屠る前に剃髪してしまったのですが。”すると(預言者は)言いました:“問題はない。”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[14]

 

     月経中の女性のタワーフ:

タワーフ・アル=イファーダの前に月経、あるいは産後の出血を見た者は、身体が清浄な状態になるまでタワーフをしません。そしてグスル[15]をして清浄な状態になれる時が来るまでマッカに滞在し、それからタワーフします。しかしもし彼女の同行者がその時期まで待っていることが出来なかったり、彼女がそれまでマッカに滞在することが出来なかったりする場合には、生理用品などを装着してタワーフします。というのも彼女はそうする必要に迫られているのであり、アッラーは人が抱えきれないような負担を課されることはないからです。そしてそのような者のハッジは、‐アッラーのお許しと共に‐正しく有効なものとなることでしょう。

 

     投石における代理に関する法的見解:

 そうする能力のない老若男女の弱者のために投石の代理を依頼することは、合法です。そのような場合、代理人は各ジャマラートにおいてまず自分の分の投石を済ませ、それから依頼人のための投石をします。

     女性がウムラのためのイフラーム[16]に入り、タワーフをする前に月経を見た場合、ズー・アル=ヒッジャ月の9日前に月経があがったらグスルをしてウムラを完遂します。そしてハッジのイフラームに入り、アラファへと向かいます。しかしもしその日までに月経が終わらなかったら、「ウムラとハッジのためにあなたの御許に馳せ参じます」と唱えてウムラにハッジを併合してしまいます。こうすることで彼女はキラーン(ハッジとウムラを同時進行する巡礼形式)に入り、人々と共にアラファの地に立ちます。そして月経が終了したらグスルをし、タワーフをするのです。

     イフラード(ハッジのみを行う巡礼形式)、あるいはキラーン(ハッジとウムラを同時進行する巡礼形式)をする者は、マッカ入りしてタワーフとサアイを終えたら、巡礼形式をタマットゥ(ウムラを終えてからハッジに移行する巡礼形式)へと変更すべく、行った行をウムラと変換することがスンナです。タワーフ・アル=イファーダを行うまでは、巡礼形式をタマットゥへと変換することが出来ます。一方イフラードをする者がキラーンへと巡礼形式を変更したり、キラーンをする者がイフラードへと変更したりはしません。飽くまでスンナは、イフラードキラーンをする者が巡礼形式をタマットゥへと変更することです。但しキラーンをする者が犠牲を連行している場合、そのままキラーンを継続します。

     ハッジであれウムラであれ、巡礼者は嘘やギーバ[17]、口論などから口を慎み、悪い品格を回避するようにしなければなりません。またよい同行者を選び、合法かつよき手段で得た財でもって巡礼します。

 

     カアバ神殿の中に入ることに関しての法的見解: 

カアバ神殿の中に入る機会があればそれはよいことですが、本来それは義務でもスンナでもありません。そのような機会を得た者は中でサラー(礼拝)をし、タクビール[18]し、ドゥアー(祈願)します。またカアバ神殿のドアから入った際にはそのまま真っ直ぐ進み、突き当りの壁と自分との間に約3ズィラーァ[19]ほどの間隔を空け、ドアを背にしてサラーします。

 

     ハッジの中には、特にドゥアー(祈願)すべき6つのポイントがあります:

以下に挙げる6つの地点が、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)から確実に伝えられているドゥアーに専念すべき場所です:サアイにおける①サファーと②マルワの丘、③アラファ、④ムズダリファ、⑤最初のジャムラの投石後、⑥2番目のジャムラの投石後。

     ハッジの巡礼者が一斉に移動するポイントは、3箇所あります:①イードの日の夜、アラファからムズダリファまでの間と、②ムズダリファからミナーまでの間、そしてタワーフ・アル=イファーダのために③ミナーからマッカへと移動する際です。

 

     聖なる儀式の場における過ごし方:

1-ミナーとムズダリファとアラファはハッジの聖なる儀式の場であり、誰も私有することは出来ません。

ミナーにおいて、正当な理由もなくアイヤーム・アッ=タシュリーク2晩あるいは3晩の滞在を放棄した者のハッジは有効ですが、罪を犯したことになります。ミナー内に滞在する場所を見出すことが出来ない者は、ミナーの外でも構わないので、ミナーの境界線付近にあるテントから最も近い場所に腰を据えます。そのような場合ミナーの外に滞在しても問題はなく、贖罪も義務付けられません。尚ミナー内の歩道や路上で夜を過ごしたりして自らを害し、他人に迷惑をかけたりしてはいけません。

2-ミナーとムズダリファとアラファはモスクのような場所であり、誰もそこにおいて家を建てて賃貸したり、あるいはその土地を取得して賃貸したりするようなことをしてはなりません。もしそのような状況に遭遇した場合でも賃貸料金など払う義務はなく、罪はその場所を勝手に私有しようとした者にあります。またイマームは巡礼者の快適な滞在と福利の実現のため、これらの聖地における諸々の都合を取り計らう義務があります。

アブドッラフマーン・ブン・ムアーズ(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)の教友のある者はこう言いました:「預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)はミナーで説教をし、人々を各々の場所に配置しました。そして(預言者は)は、“ムハージルはここに宿営させよ”と言ってキブラの右側を示し、また“アンサールはこちらに宿営させよ”[20]と言ってキブラの左側を示しました。(それから預言者はこう言いました)“そして人々を彼らの回りに宿営させよ。”」(アブー・ダーウードとアン=ナサーイーの伝承[21]

 

     預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)のハッジの形:

ジャービル・ブン・アブドッラー(彼らにアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は(マディーナに移ってから)9年間、ハッジをせずに過ごしました。そして10年目になってアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)がハッジの巡礼に出発するという通達がなされ、彼に従い、彼と同じように(ハッジを)行うことを望む多くの者がマディーナに集結しました。こうして私たちは彼と共にマディーナを出発し、ズー・アル=フライファ[22]に到着しました。そこでアスマーゥ・ビント・ウマイスがアブー・バクルの息子であるムハンマドを出産しましたが、彼女はその件についていかにすべきか訊ねるべく、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)に使いを送りました。(それに関して預言者は)言いました:“グスル[23]をし、布類でもって(出血が漏れぬよう)抑えるのだ。そしてイフラームに入るがよい”。それからアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)はモスクでサラー(礼拝)をし、アル=カスワーゥ[24]に乗りました。そして彼のラクダが砂漠で立ち止まった時、私は彼の前後左右が乗り物用の家畜に乗って、あるいは徒歩で歩む巡礼者で見渡す限り埋め尽くされているのを眺めました。クルアーンの啓示が下り、そしてその解釈を心得ているアッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は私たちの中心におり、そして私たちは彼の成すこと全てを模倣しました。そして彼は、タウヒードの言葉

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