Description

ザカーの目的は財を集め、それを貧者などに分配するだけではありません。むしろその第一の目的は人間が財よりも高きに達し、そのしもべではなく主となることです。ザカーはその拠出者と受給者が清められ、浄化されるようにという意味から定められたのです。ここではその法的位置づけや徳、またその条件やいくつかの法規定について見て行きましょう。

Detailed Description

4ザカー(浄財

 

①ザカーの意味とそこに潜む英知

 

     イバーダ(崇拝行為)の形が多様であることの英知:

アッラーはそのしもべに多様な形のイバーダ(崇拝行為)を定められました。つまりイバーダにはサラー(礼拝)のように身体に関連したもの、ザカーやサダカ(様々な意味での施し)のように心が欲するところの財産を拠出することに関連したもの、ハッジ(大巡礼)やジハード(様々な意味での奮闘)のように身体と金銭に関連したもの、サウム(斎戒)のように自らが欲するものを抑制することに関連したものなどがあります。

アッラーは自らの欲望に打ち克って主に服従するかどうかしもべを試されるべく、そして各自が自らにとってより容易かつ得意なものを行うことが出来るように、これらのイバーダを様々な形にされたのです。

 

     所有者を益する財産の条件:

財産は以下に挙げる3つの条件抜きにはその所有者を益しません:

       合法な手段をもって得られたもの。

       その所有者が、アッラーとその使徒への服従行為をそっちのけにしてそこに没頭しないこと。

       その財産におけるアッラーへの義務を果たすこと。

     ザカーとは:元々は成長や増加という意味で、特定の時期に特定の者が特定の財に関して義務付けられるものです。

 

     ザカーはいつ義務付けられたか?

ザカーはマッカにおいて義務付けられましたが、ザカーが課せられる最低法的基準となる数量や財や受給者の種類はヒジュラ暦2年にマディーナにおいて定められました。

 

     ザカーの法的位置づけ:

 ザカーはシャハーダ[1]とサラー(礼拝)に次ぐ、イスラームの5つの基幹の内の3番目です。

 1-至高のアッラーは仰られました:-彼らの財産から施しのためのものを取り、それでもって彼らを(罪から)清め、浄化してやるのだ。そして彼らのために祈れ。実にあなたの祈願は(彼らの心を)平穏にするであろう。アッラーは全てを聞かれ、ご存知になられるお方である。,(クルアーン9103

 2アブドッラー・ブン・ウマル(彼らにアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は言いました:“イスラームは5つ(の基幹)の上に成り立っている:(それらとは)「アシュハド・アッラー・イラーハ・イッラッラー、ワ・アシュハド・アンナ・ムハンマダン・アブドゥフ・ワ・ラスールフ(私は、アッラーの他に真に崇拝すべきものはなく、ムハンマドがそのしもべであり使徒であることを証言する)」というシャハーダと、サラー(礼拝)を行うこと、ザカーを施すこと、ハッジ(大巡礼)、そしてラマダーン月のサウム(斎戒)である。”(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[2]

 

     ザカーが定められたことに潜む英知:

1-ザカーの目的は財を集め、それを貧者などに分配するだけではありません。むしろその第一の目的は人間が財よりも高きに達し、そのしもべではなく主となることです。ザカーはその拠出者と受給者が清められ、浄化されるようにという意味から定められたのです。

2-ザカーは一見財産の量の減少と映るかもしれませんが、実のところは財産に恵みの増加と物質的な量的増加、心におけるイーマーン[3]と高徳の増加をもたらすのです。

ゆえにザカーは手放すと共に与えられることなのであり、自らの心が欲するものを投じることでより一層好ましいものを得ることなのです。そしてザカーは崇高なる主のご満悦と天国を勝ち得るための、1つの大きな手段でもあります。

尚イスラームの経済システムは、アッラーこそが全ての真の所有者である、ということの認識に基づいています。ゆえに崇高なるかれのみが財の所有に関しての組織化やそこにおける義務の制定、及びその義務の範囲や量に関する制限、そしてその用途や財の取得手段や消費先についての権利を有しているのです。

 3-ザカーは罪を贖います。そして地獄からの救いと天国への扉への1つの手段となります。

 4-アッラーは、人の心が吝嗇さや貪欲さといった悪徳から清められるべくザカーを定め、それを奨励されました。またザカーは富裕な者と貧者との間を繋ぐ、堅固な絆です。それにより心は喜び清澄になり、また快適さを得ます。そして社会全体が平穏と愛情と、同胞愛の恩恵を享受することになるのです。

5-ザカーは拠出者の善行による報奨を増加させ、その財産を被害から守り、増加成長させます。また貧者や困窮者を助け、窃盗や略奪、強盗などの金銭に関連する罪の減少にもつながります。

 

     ザカーの定額:

 アッラーは、財産に要した労力に応じて拠出すべき定額を定められました。

 1-労力を用いることなく、イスラーム以前の時代の埋蔵物などを発見した場合:その5分の1、つまり20%が定額です。 

 2-自ら種を蒔いたものの、灌漑において労力を払うことなしに得た収穫物:その10分の1、つまり10%が定量です。

 3-自ら種を蒔き、かつ灌漑の労力を払いつつ獲得した収穫物:5パーセントが定量です。

 4-貨幣や商品などのように常にその管理における労力を要し、また状態の変化に晒されたもの:2.5%が定額です。

 

     ザカーを払うことの徳:

1-至高のアッラーは仰られました:-実に信仰して善行に励み、サラー(礼拝)を行いザカーを施す者たちには、その主の御許に彼らの報奨があろう。彼らは恐れることもなければ、悲しむこともないのだ。,(クルアーン2277

2-また至高のアッラーは仰られました:-昼に夜に、密かに露わに財を施す者たちには、その主の御許に報奨があるのである。彼らは恐れることもなければ、悲しむこともないのだ。,(クルアーン2274

 

     ザカーの条件:

1-ザカーはある特定の財産が完全に所有され、その量や数が最低法的基準に達し、所有後丸1年(注:ヒジュラ暦)が経過し、かつ所有者がムスリムの自由民であれば、老若男女や精神的健常性のいかんを問うことなく義務付けられます。

2-非ムスリムはザカーのみならず、全てのイバーダ(崇拝行為)を課せられてはいません。しかし現世においてそれを要求されていなくても、審判の日においてはそれを放棄していたことを咎められるでしょう。尚イバーダが受け入れられるには、イスラームを受け入れていることが条件になります。

 

     取得後丸1年の経過が条件付けられない類の財産:

大地から産出した物や放牧した家畜が産んだ子供、商売による利益に関しては、その取得・収穫後丸1年が経過しなくても、その量や数が最低法的基準に達せばザカーが課されます。

但し発見した埋蔵物に関しては特定の法的基準量や取得後丸1年の経過という条件はなく、その量が多かれ少なかれザカーが課されます。

     放牧した家畜の数や商売による利益は常に変動します。それでその最低法的基準数(額)に達した後に丸1年が経過した時、出産や利益増などの理由により、1年の計算を開始した時点より数や額が増加している可能性があります。そのような場合は1年の計算を開始した後に新たに増加した分も、その増加の原因となったものと同時期に所有していたものとしてザカーを計算することになります。例えば80頭の羊が、1年後には出産によって125頭まで増えたとしましょう。その時には例え増加した何頭かが生まれたのがつい数ヶ月前だったとしても、それらの増加の原因となった母親を軸にして考え、1年間が経過した頭数を125頭としてザカーの計算をします。

 

     ワクフ(財産寄進)のザカー:

モスクや学校など、不特定の者を対象にした慈善的分野におけるワクフには、ザカーは課されません。また同様に、不特定の者を対象にした慈善において使用するためのものに関しても、ザカーは義務付けられません。

但し自分の子息に対するそれのように特定の者を対象にしたワクフに関しては、ザカーが義務付けられます。

 

     債務のある者にはザカーを拠出する義務はあるか?

ザカーは無条件の義務であり、その額を差し引けばザカーが課せられる最低法的基準量には達しないような債務を抱えていたとしても、その義務は発生します。但しザカーの義務が発生する前に返済義務を負った債務に関してはまずそれを返済し、それからその残りの財産からザカーを拠出します。

 

     ザカーは何によって払うか?

ザカーはその財産自体から拠出しなければなりません。穀物は穀物、羊は羊、貨幣は貨幣によって拠出し、必要性や福利に適わない限りそれ以外の物で代替することは出来ません。

 

     ザカーの対象とはならない類の財産:

住居や衣服、家具や乗り物用の家畜、車など、自分が使用するための所有物としての財産には、ザカーは課されません。

アブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)はこう言いました:「ムスリムは、その奴隷や馬にザカーを課されない。(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[4]

     貨幣が最低法的基準量に達した後に丸1年が経過したら、例えそれを結婚や不動産の購入、債務の返済など何らかの出費にあてる予定であったとしても、ザカーが義務付けられます。

     ザカーの義務がありながらもそれを拠出する前に他界した場合、その相続人が故人の遺言の遂行や遺産分配の前にそれを遺産から拠出するようにします。

     ザカーの拠出を回避する目的ではなくして、売買などにより1年のある時期において財産が最低法的基準を割った場合、1年の計算は一時中断されます。そしてその後にその財産が再び最低法的基準に達すれば、またその時点から新たに1年の計算を開始します。また交換取引などにより財産を同種のものと交換しても、そうすることによってその財産の量や額が一時的にでも減少したとは見なされません。

     ザカーと借金返済の義務を果たさないまま他界し、それを拠出するに十分な遺産を残さなかった場合、ザカーの拠出を優先させます。というのもザカーは、アッラーがザカー受給者にその受給を義務付けられたところのかれの権利なのであり、アッラーこそはその権利に対して最も忠実でなければならないお方であるからです。

 

     ザカーの義務対象となる類の財産は4種類です:

1-金銭:金銀や貨幣のことです。

2-放牧する家畜:家畜とはラクダ、牛、羊と山羊のことです。

3-大地から産出した物:つまり穀物や果実、鉱物などのことです。

4-商品:商売用の物資のことです。

 

 



[1] 訳者注:「ラー・イラーハ・イッラッラー、ムハンマドッラスールッラー(アッラーの他に真に崇拝すべきものはなく、ムハンマドはそのアッラーの使徒である)」という信仰告白のこと。

[2] サヒーフアル=ブハーリー(8)、サヒーフ・ムスリム(16)。文章はムスリムのもの。

[3] 訳者注:詳しくは「タウヒードとイーマーン」の章の「イーマーン」の項を参照のこと。

[4] サヒーフアル=ブハーリー(1463)、サヒーフ・ムスリム(982)。文章はムスリムのもの。

feedback