裁決の意味と法的位置づけ (⮫)


裁決

1裁決の意味と法的位置づけ

] 日本語 [

القضاء

1- معنى القضاء وحكمه

[اللغة اليابانية ]

ムハンマド・ブン・イブラーヒーム・アッ=トゥワイジリー

محمد بن إبراهيم التويجري

翻訳者: サイード佐藤

ترجمة: سعيد ساتو

校閲者: ファーティマ佐藤

مراجعة: فاطمة ساتو

海外ダアワ啓発援助オフィス組織(リヤド市ラブワ地区)

المكتب التعاوني للدعوة وتوعية الجاليات بالربوة بمدينة الرياض

1429 – 2008

裁決

1-裁決の意味と法的位置づけ

● 裁決とは:イスラーム法上の見解を明らかにしてその法的強制力を行使し、争いに収拾をつけることです。

● 裁決が定められたことに潜む英知:   

アッラーは諸権利の保護と正義の確立、そして人間の生命と財産と尊厳の保護のために裁決を定められました。アッラーは人間をお創りになり、彼らを売買行為や婚姻、離婚や賃貸、生活費の負担などの生活上の必要において、お互いに依存し合うものとされました。こういった中でイスラーム法は人々の間に公正と安寧が行き渡るべく、人間関係を調整するための諸条件や諸規則を定めたのです。

しかしこれらの条件や規則において時には悪意から、また時には無知から違反が発生する場合があります。そしてその違反行為により様々な問題や諍い、分裂や敵意、憎悪などが生じ、時にはそれが財産の横領や流血沙汰、破壊行為などにつながることもあります。こうしてそのしもべの真の福利をご存知であるアッラーは、これらの諍いや問題に収拾をつけ、彼らの間を真理と公正でもって裁くべくイスラーム法による裁決を定められたのです。

至高のアッラーはこう仰られました:-そしてわれら(アッラーのこと)はあなたに、真実をもって(クルアーン)を下した。それはそれ以前の諸啓典を確証し、かつ従属させるものである。ゆえにアッラーが下されたものでもって彼らの間を裁くのだ。そしてあなたに到来した真理をさしおいて彼らの欲望に従ってはならない。,(クルアーン5:48)

● 裁決の法的位置づけ:

 裁決は連帯義務[1]です。

 イスラーム法統治者は争いの調停や固定刑の実施、真理と公正による裁きや諸権利の保護、不正を被っている者の援助やムスリムの福利考慮などのために、各地域に必要に応じて1人、あるいは複数の裁判官を任命しなければなりません。

● 裁決の条件:

 1-統治者は、知識と敬虔さにおいて最も優れ、アッラーのタクワー[2]と正義を命じるような者を裁判官として選ばなくてはなりません。

 2-裁判官となる者は以下の条件を満たしていなければなりません:

①  ムスリムであること。

②  男性であること。

③  成人であること。

④  正常な理性を備えていること。

⑤  宗教を遵守し良識を備えていること。

⑥  正常な聴覚を備えていること。

⑦  自由民であること。

[1] 訳者注:共同体内の誰かがそれを行いさえすれば、共同体内の他の者の義務が免除されるような類の義務のこと。これに対し、サラー(礼拝)やサウム(斎戒、いわゆる断食)のような個人義務は個々に課されてきます。

[2] 訳者注:「タクワー」は「自らを守る」という動詞の名詞形。つまりアッラーを畏れ、またそのお怒りと懲罰につながるような行い‐つまりかれが命じられたことに反したり、あるいは禁じられた事柄を犯したりすることなど‐を避けることで、自らの身をアッラーのお怒りや懲罰から守ることを意味します。