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巡礼と犠牲は切っても切れない関係にあります。ここでは巡礼の際のそれに留まらず、一般的な犠牲に関する諸規定をご紹介していきましょう。

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⑪犠牲とアキーカ

 

     タマットゥ(ウムラを終えてからハッジに移行する巡礼形式)やキラーン(ハッジとウムラを同時進行する巡礼形式)の巡礼形式を選んだゆえの義務としてのものであれ、あるいは巡礼を何らかの理由で阻まれた場合に課せられたものであれ、至高のアッラーへのお近づきを意図してマッカの聖域へと連れて行く家畜[1]の犠牲のことを、ハドゥユと言います。

     一方至高のアッラーへのお近づきを意図してイード・アル=アドゥハー(ヒジュラ暦ズー・アル=ヒッジャ月10日目)に屠られる犠牲は、ウドゥヒヤと呼ばれます。

     ウドゥヒヤは:ムスリムでそれをすることが可能な者に対しての、強く推奨されたスンナ[2]です。

 至高のアッラーはこう仰られました:-そしてサラー(礼拝)し、犠牲を捧げるのだ。,(クルアーン17108

 

     ウドゥヒヤを屠る時期:

 イード・アル=アドゥハー(ヒジュラ暦ズー・アル=ヒッジャ月10日目)の集団礼拝の後から、アイヤーム・アッ=タシュリーク[3]の最後までです。

     ウドゥヒヤの肉を食し、贈与し、貧者に施すことはスンナです。またウドゥヒヤには、偉大かつ荘厳なるアッラーへのお近づきとしての行為、家人への振舞、貧者への善行、親戚や隣人との関係を深めるなどの、非常に大きな徳があります。

 

     ハドゥユウドゥヒヤアキーカの条件:

1-ハドゥユとウドゥヒヤ、アキーカとして捧げる犠牲は、ラクダなら5歳以上、牛なら2歳以上、羊なら半年以上、ヤギなら1歳以上でなければなりません。また1度犠牲にすると決めた家畜は売ったり、贈与したりしてはなりません。但しそれよりも価値の高い家畜と交換することは許されます。

2-ハドゥユとウドゥヒヤ、アキーカはラクダか牛か羊か山羊でなければならず、イスラーム法で定められた一定の年齢に達していなければなりません。また欠陥などがあってはならず、よく肉がついていて値段が高く、かつ自らが所有しているものの内最も高価なものを捧げるのが最善です。

     1頭は1人分の犠牲に、またラクダ1頭と牛1頭は各々7人分のそれに相当します。また羊であれラクダであれ牛であれ、自らと、存命中かどうかを問わず自らの家族のための犠牲として捧げることが出来ます。またハッジをする者は出来るだけ多くのハドゥユを屠ることが好ましいのですが、一方ウドゥヒヤは自分の家族のために1頭だけ屠るに留めておくのがスンナです。

     ウドゥヒヤは存命中の者のために行うことがスンナですが、存命中の者のそれに付随させるつもりで行うのなら、死人のために屠ることも可能です。但し死人が遺言で、自分のためだけに独立したウドゥヒヤを捧げるよう依頼していた場合は別です。

 

     ウドゥヒヤを捧げようとする者が禁じられること:

ウドゥヒヤを捧げようとする場合、ズー・アル=ヒッジャ月の最初の10日間にその家畜の毛や皮膚の一部、爪などを切除したりすることは禁じられています。もしそのようなことを犯してしまった場合はアッラーに罪のお赦しを乞いますが、これに対して何らかの贖罪が課せられることはありません。

ウンム・サラマ(彼女にアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「ウドゥヒヤを捧げるつもりの者はズー・アル=ヒッジャ月の(最初の)10日間に入ったら、その毛や皮膚に手を付けてはならない。」(ムスリムの伝承[4]

     自ら、あるいは家族のためにウドゥヒヤを捧げる者は、屠殺の際に次のように唱えることがスンナです:「アッラーの御名において。アッラーは偉大なり。アッラーよ、私(のこの行為)をお受け入れ下さい。アッラーよ、これは私と私の家族のためのものです。」

 

     犠牲の屠り方:

 ラクダは左前足を縛って立たせたまま、首の付け根(胸元に接した部分)を正面から刃物で突いて屠るのがスンナです。一方ラクダ以外の家畜は体の左側を下にして横たわらせ、自らの右足で首を押さえつけ、頭部をつかみながら首の上部を刃物で切って屠ります。ラクダもそれ以外の家畜も、それぞれもう一方のやり方で屠ることも可能です。屠殺の際には、「アッラーの御名において。アッラーは偉大なり」と唱えます。

 アナス(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は白地に黒の斑点がある角の生えた2頭の雄羊を、自らの手で屠りました。そして(その際には)アッラーの御名を唱え、タクビールし、足を首の片面に置き(押さえつけ)ました。(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[5]

     ハドゥユにせよウドゥヒヤにせよ、自らの手で屠ることがスンナです。屠殺に長じていなければ代理を依頼しますが、その際彼に報奨を与えてはなりません。そして屠殺の際にはその依頼人、あるいはその依頼人が代理するところの者の名に言及します。犠牲は喉と食道、そして片方か両方の頚動脈を切断し、血液が流れきった時点で食するのに合法となります。

 

     ウドゥヒヤとするに適切でないもの:

アル=バラーゥ・ブン・アーズィブ(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、彼は預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)がこう言うのを聞きました:「(以下の)4種のものはウドゥヒヤにすることが出来ない:片目であるもの、病に罹っているもの、足が悪く歩けないもの、痩せ衰えて骨の隋もないようなもの。」(アブー・ダーウードとアン=ナサーイーの伝承[6]

     ハドゥユ、あるいはウドゥヒヤなどをアッラーへのお近づきとして屠った後、初めてその家畜が病に罹っていたことを知った場合、その犠牲は有効ではありません。というのも本来の目的が失われてしまったからです。

     尻尾が少しでも切れているもの、コブのないラクダ、視力のないもの、足が切れているものなどは全て、アッラーへのお近づきとしてハドゥユ、ウドゥヒヤなどの犠牲とすることは出来ません。

 

     アキーカに関する法的見解とその時期:

 アキーカは出産の折に行われます。子供が生まれたら、死産でない限りアキーカをすることがスンナです。

 アキーカは強く推奨されたスンナで、男児なら羊2頭、女児なら羊1頭を生後7日目に屠ります。そしてその日に命名し、剃髪します。もし7日目に何らかの理由があってやり損ねた場合、犠牲はいつでも捧げることが出来ます。もし理由がなかった場合は、時期を逃したゆえ、犠牲は屠りません。また出生の際はナツメヤシかそのようなものを口で噛み、軟らかくしたものを新生児の口に含ませるのがスンナです。

     女性は以下の5つの事において、その量あるいは価値を男性の半分と定められています:①遺産、②血債、③証言、④アキーカ、⑤奴隷身分からの解放額。

     アキーカは新たな恩恵に対するアッラーへの感謝の表現であり、新生児のための犠牲であり、かつ至高のアッラーへのお近づきを意図して行われます。

 

     新生児の告知をすることに関しての法的見解:

ムスリムは、吉報をその兄弟姉妹にいち早く告知することがスンナです。それを聞いた者は出生祝いの言葉を送り、ドゥアー(祈願)してやるのがよいでしょう。

至高のアッラーはこう仰られました:-ザカリーヤー(ザカリヤ)よ、実にわれら(アッラーのこと)はあなたに、ヤヒヤー(ヨハネ)という名の男の子の吉報を伝えよう。われらはかつて、誰にもその名を与えたことはなかった。,(クルアーン197

 

     命名の時期:

1-出産日に命名することがスンナです。

 アナス・ブン・マーリク(彼にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は言いました:“今晩私に、男の子が生まれた。それで私は彼を、わが父(祖)の名であるイブラーヒームと命名したのだ。”(ムスリムの伝承[7]

 2 命名は、生後7日目よりも遅らせない方が良いでしょう。実際のところ命名の時期の範囲は広いので、その前に命名しても後に命名しても問題はありません。

 サムラ(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「全ての新生児はアキーカをされる義務がある。(生後)7日目に犠牲を屠り、剃髪し、そして命名するのだ。」(アブー・ダーウードとアフマドの伝承[8]

 

     新生児の命名の仕方:

生まれた子供に良い名前を選んで付けるのは、スンナです。至高のアッラーがお好みになられるのは「アブドッラー(アッラーのしもべ)」や「アブドッラフマーン(最も慈悲深いお方のしもべ)」ですが、それらに次ぐのが「アブド・アル=アズィーズ(最も偉大なるお方のしもべ)」や「アブド・アル=マリク(真の王のしもべ)」など、アッラーの美名に「~のしもべ」をつけた名前です。そしてその次に使徒や預言者の、それに次いで義人の名が来ます。その後に来るのがハサン(良い、美しい)やヤズィード(偉大になる)といった、人間にとっての良い性質を表す名前ですが、既につけてしまった悪い名前は良いものに変更する必要があります。

     ハドゥユとウドゥヒヤにするのが最善なのはラクダ1頭で、次が牛1頭、その次が羊です。そしてその後に、ラクダ1頭の7分の1、それから牛1頭の7分の1が来ます。一方アキーカに関してはラクダであれ牛であれ羊であれ、1人分に対して丸ごと1頭を屠る他のやり方はありません。そしてアキーカの場合は預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)がそうしたように、羊、それも雄の羊を屠るのが最も良いと見なされます。

     アキーカの犠牲も、その年齢の規定においてはウドゥヒヤと同様です。ただ1つ異なるのは、アキーカの犠牲にはラクダであれ牛であれ羊であれ、1人分につき1頭丸ごとをあてなければならないということです。

 



[1] 訳者注:家畜とはラクダか牛、羊か山羊のことを指します。

[2] 訳者注:預言者ムハンマド(彼にアッラーの祝福と平安あれ)の示した手法や道のこと。ムスリムは可能な限り、彼のスンナを踏襲するべきであるとされています。

[3] 訳者注:ヒジュラ暦12月の111213日の3日間のこと。

[4] サヒーフ・ムスリム(1977)。

[5] サヒーフアル=ブハーリー(5565)、サヒーフ・ムスリム(1966)。文章はムスリムのもの。

[6] 真正な伝承。スナン・アブー・ダーウード(2802)、スナン・アン=ナサーイー(4370)。文章はアン=ナサーイーのもの。

[7] サヒーフ・ムスリム(2315)。

[8] 真正な伝承。スナン・アブー・ダーウード(2838)、ムスナド・アフマド(20188)。文章はアフマドのもの。

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