飲酒に対する固定刑

概要

酒類はそれを摂取する者の理性を鈍らせ、その心身や財産、子息や尊厳、個人や社会に対する有害な行為を生じさせます。また高血圧や、本人とその子孫の知的障害や精神障害、そして身体障害や犯罪性などの原因ともなります。
また飲酒は善悪の判断を司る理性を鈍らせる快楽と恍惚感であり、酩酊状態にある者は自分の言っていることも分かりません。このような理由からイスラームは飲酒を禁じ、それを取り扱う者に対しての厳しい懲罰を定めたのです。

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Detailed Description

    固定刑

    4飲酒に対する固定刑

    ] 日本語 [

    حد الخمر

    [اللغة اليابانية ]

    ムハンマド・ブン・イブラーヒーム・アッ=トゥワイジリー

    محمد بن إبراهيم التويجري

    翻訳者: サイード佐藤

    ترجمة: سعيد ساتو

    校閲者: ファーティマ佐藤

    مراجعة: فاطمة ساتو

    海外ダアワ啓発援助オフィス組織(リヤド市ラブワ地区)

    المكتب التعاوني للدعوة وتوعية الجاليات بالربوة بمدينة الرياض

    1429 – 2008

    3-飲酒に対する固定刑

    ● ハムル(酒類)とは:いかなる種類の飲料物であろうと、理性の働きを妨げ、閉鎖させてしまう物質のことです。

    ● 沢山飲酒すれば酩酊を及ぼすような飲料物は、例え少量であっても例外なく非合法です。

     アーイシャ(彼女にアッラーのご満悦あれ)は言いました:「アッラーの使徒(彼にアッラーからの平安と祝福あれ)は、ビトゥァ‐蜂蜜から造られた飲料物‐について訊ねられ、こう言いました:“沢山飲酒すれば酩酊を及ぼすような飲料物は、全て非合法である。”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[1]

    ● 飲酒に対する固定刑が定められたことに潜む英知:

     酒類は悪の根源です。そして飲用であろうが、はたまた売買、製造などであろうが、その摂取へと導くあらゆる行為は全て、いかなる形であろうと禁じられます。

     酒類はそれを摂取する者の理性を鈍らせ、その心身や財産、子息や尊厳、個人や社会に対する有害な行為を生じさせます。また高血圧や、本人とその子孫の知的障害や精神障害、そして身体障害や犯罪性などの原因ともなります。

    また飲酒は善悪の判断を司る理性を鈍らせる快楽と恍惚感であり、酩酊状態にある者は自分の言っていることも分かりません。このような理由からイスラームは飲酒を禁じ、それを取り扱う者に対しての厳しい懲罰を定めたのです。

    1-至高のアッラーは仰られました:-信仰する者たちよ、酒と賭け事、偶像とアル=アズラーム[2]はシャイターン(悪魔)の行いであり、不浄である。ゆえにそれらを避けるのだ。(そうすれば)あなた方は成功するであろう。シャイターンは酒と賭け事をもって、あなた方の間に敵意や憎悪をもたらし、そしてあなた方をアッラーのズィクル(念唱、想起)やサラー(礼拝)から遠のけたいのである。一体あなた方は(それらを)止めないというのか?,(クルアーン5:90‐91)

    2-アブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)はこう言いました:「姦淫を犯す者は、ムウミン(イーマーンの徒)[3]である状態の時に姦淫する事はない。また飲酒を犯す者は、ムウミン(イーマーンの徒)である状態の時に人が飲酒することはない。また盗人はムウミン(イーマーンの徒)である状態の時に盗みを犯すことはない。そして人はムウミン(イーマーンの徒)である状態の時に、人々が目を見開くような(価値のある)物品を略奪することはないのだ。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[4]

    ● 飲酒に対する固定刑の確定:

    飲酒に対する固定刑は、以下のいずれかによって確定します:

    1-飲酒の自認。

    2-宗教を遵守し常識を備えた男性2人の証言。

    ● 飲酒をした者に対する懲罰:

     1-ムスリムが自らの選択で、それを多量に飲酒すれば酩酊することを知りつつ何らかの酒類を飲んだのであれば、40回の鞭打ち刑が科されます。尚統治者[5]は、もし人々の間に飲酒がはびこっているような場合、それを裁量によって80回にまで増やすことも出来ます。

     2-初めて飲酒をした者は、飲酒の固定刑を科されます。それは2度目でも3度目でも同様です。しかし4度目に至った場合は、統治者は人々の保護と腐敗防止のためにその者を拘束し、裁量刑によって死刑に処すことも可能です。

     3-現世で飲酒をし、その罪を悔悟することのなかった者は、例え天国に入れたとしても来世でそれを味わうことは出来ません。また飲酒の常習者は、天国には入れません。また飲酒して酩酊した者は、40日間そのサラー(礼拝)を受け入れられません。飲酒者は悔悟すればアッラーがそれを受け容れて下さるでしょうが、そうでなければ地獄に入ることになるでしょう。また飲酒を繰り返す者は、審判の日に地獄の徒の体液を飲まされることになります。

    ① ジャービル(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、ジャイシャーン‐イエメンの地名‐から1人の男がやって来て、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)に彼らの地で飲まれているミズルという名の、とうもろこしから造られた飲料について訊ねました。預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「“それは酩酊を催させるか?”(男は)言いました:“ええ。”(預言者は)言いました:“酩酊を催させる物は、全て非合法である。偉大かつ荘厳なるアッラーは、酩酊を催させる物を飲む者に忌まわしい泥を飲ませることをお約束なされた。”(教友たちは)言いました:“アッラーの使徒よ、忌まわしい泥とは何ですか?”(アッラーの使徒は)言いました:“地獄の民の汗、あるいは地獄の民の体液である。”」(ムスリムの伝承[6]

    ② イブン・ウマル(彼らにアッラーのご満悦あれ)によれば、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「現世で酒を飲み、それを悔悟することもなく死んだ者は、来世においてそれを口にすることがないであろう。」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[7]

    ● 統治者は酒盃の廃棄や造酒工場の焼却など、飲酒の禁止と抑止につながるような処罰をその状況における福利に応じて裁量刑として実行することが出来ます。

    ● 麻薬に関して:

     麻薬とは:身体を害し、心身に脱力感や麻痺状態をもたらすような物質のことです。また麻薬には中毒作用があり、病気や諸悪の原因でもあります。

     麻薬はその摂取はもちろんのこと、その密輸や取引、商売なども禁じられています。統治者は悪と腐敗の根絶と、人の生命と財産と尊厳と理性の保護のため、そのようなことに携わる者たちを死刑や鞭打ち刑、拘禁刑や罰金刑など、福利に叶う形での刑罰に処すことが出来ます。

    ● 麻薬を取り扱った者に対する固定刑:

     その危険性の大きさと破滅的な被害ゆえ、ある学者たちは麻薬を取り扱った者に対して以下のような刑罰を提案しています:

     1-麻薬を密輸する者はその害悪と悪質さゆえ、その懲罰は死刑。

     2-麻薬を売買や製造、輸出や贈与などにより事実上その普及に貢献する者は、それが初犯である場合において拘禁刑や鞭打ち刑や罰金、あるいはそれらの重複刑など裁判官が適当であると判断する裁量刑に処します。

     そしてもし犯行を繰り返した場合には、例えそれが死刑であっても、社会の悪を根絶するにふさわしい形の裁量刑でその者を処します。というのもこのような犯行を繰り返す者は、地上に腐敗をもたらす者以外の何者でもないからです。

    ● 麻薬以外で覚醒効果や弛緩効果のある物質の摂取に関して:

     つまり煙草やジラーク[8]、カート[9]など摂取者に酩酊を及ぼすこともなく、また理性の働きを遮ってしまうまでには至らないまでも、身体に覚醒効果や弛緩効果を及ぼすもののことです。これらの物は人の宗教と健康、身体と財産と理性を損なう物であり、その摂取を許されません。

    このような物を摂取する者は裁判官が福利を考慮しつつ、その裁量による刑を科します。

    [1] サヒーフ・アル=ブハーリー(5586)、サヒーフ・ムスリム(2001)。文章はアル=ブハーリーのもの。

    [2] 訳者注:「アル=アズラーム」とは、当時賭け事やくじ引きに使われていた火打石のことであると言われます。

    [3] 訳者注:詳しくは「1-タウヒードとイーマーン」の章の「イーマーンとイーマーンの諸特質」の項を参照のこと。

    [4] サヒーフ・アル=ブハーリー(6772)、サヒーフ・ムスリム(57)。文章はアル=ブハーリーのもの。

    [5] 訳者注:イスラーム法で裁く統治者のことです。

    [6] サヒーフ・ムスリム(2002)。

    [7] サヒーフ・アル=ブハーリー(5575)、サヒーフ・ムスリム(2003)。文章はアル=ブハーリーのもの。

    [8] 訳者注:煙草に発酵した果実を混合させた物。

    [9] 訳者注:主にイエメン地方で嗜好される、軽度の覚醒作用のある植物の葉や芽。

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