棄教

概要

棄教者とはイスラームを受け入れた状態から、自ら望んで不信仰へと戻る者のことです。

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Detailed Description

    9棄教

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    [اللغة اليابانية ]

    ムハンマド・ブン・イブラーヒーム・アッ=トゥワイジリー

    محمد بن إبراهيم التويجري

    翻訳者: サイード佐藤

    ترجمة: سعيد ساتو

    校閲者: ファーティマ佐藤

    مراجعة: فاطمة ساتو

    海外ダアワ啓発援助オフィス組織(リヤド市ラブワ地区)

    المكتب التعاوني للدعوة وتوعية الجاليات بالربوة بمدينة الرياض

    1429 – 2008

    9-棄教

    ● 棄教者とは:イスラームを受け入れた状態から、自ら望んで不信仰へと戻る者のことです。

    ● 棄教者の法的位置づけ:

     棄教者は、不信仰者として生まれた者よりもひどい不信仰の中にあります。イスラームからの棄教は文字通りイスラームからの逸脱を意味し、他界する前にそれを悔い改めてイスラームに改宗し直さない限り、来世においては永劫の業火による懲罰を科されます。また棄教者が悔悟しないまま死んだか殺害されたかしたら、その遺体は洗浄されず、葬儀の礼拝も執り行われません。またムスリムの墓地に埋葬されることもありません。

     1-至高のアッラーはこう仰られました:-そしてあなた方の内でその宗教(イスラーム)から不信仰へと戻り、そして(その状態のまま)死んだ者は、不信仰者である。彼らの行いは現世と来世において無益なものとなり、そして彼らは地獄の業火の中に永遠に留まることになる。,(クルアーン2:217)

     2-イブン・アッバース(彼らにアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「その宗教(イスラーム)を替える者は、殺すのだ。」(アル=ブハーリーの伝承[1]

    ● 棄教者が定められたことに潜む英知:

     イスラームは人生における完全な手法であり、人類が必要としているもの全てを網羅する包括的な秩序です。またイスラームは人間の先天的素質と理性に合致し、根拠と明証の上に成立しています。イスラームこそは最大の恩恵であり、現世と来世における幸福は正にそれによってのみ実現されるのです。

     このイスラームを一旦受容した後に棄教することは、自らを奈落の奥底にまで突き落とし、またアッラーが私たちの宗教としてお悦びになられたものを突き返し、かつアッラーとその使徒を騙すにも等しいことと見なされます。彼はそれ抜きには現世と来世が正しい状態とはならない真理を否定したのであり、それゆえに死刑が義務付けられます。[2]

    ● 棄教の種類:

    棄教には3種類あります:

     1-信条的棄教:例としては、以下のようなものが挙げられます:

    ① アッラーのルブービーヤ[3]において、かれ以外の同位者や共同者などを認めること。

    ② アッラーのウルーヒーヤ[4]において、かれ以外の同位者や共同者などを認めること。

    ③ アッラーのルブービーヤの否定。

    ④ アッラーの唯一性の否定。

    ⑤ アッラーの属性のいずれかを否定すること。

    ⑥ 諸預言者(彼らにアッラーからの祝福と平安あれ)の真実の否定。

    ⑦ 諸啓典の真実の否定。

    ⑧ 死後の復活の否定。

    ⑨ 天国、あるいは地獄の存在の否定。

    ⑩ 例えそれを実践していたとしても、イスラームの教えを全体的に、あるいは部分的に嫌悪していること。

    ⑪ 飲酒や姦淫など、イスラームが明白に禁じている物事を合法と見なすこと。

    ⑫ サラー(礼拝)やザカー(義務の喜捨)などのように、イスラームが明白に命じている義務行為を否定したり、疑念を持ったりすること。

     尚上述のことを無知から犯している場合は、不信仰に陥ったことにはなりません。あくまでそれらの規定を知りつつ、そのような誤った信条や考えに固執する者のみが不信仰に陥ったと見なされるのです。

     2-言動的棄教:例としては、以下のようなものが挙げられます:

    ① アッラーの悪口を言うこと。

    ② 諸預言者の悪口を言うこと。

    ③ 諸天使の悪口を言うこと。

    ④ 諸啓典の悪口を言うこと。

    ⑤ 預言者ではない者に対しての預言者性の主張。

    ⑥ アッラーと並べて何か他のものにも祈願すること。

    ⑦ アッラーに子供や配偶者がいる、などという言葉。

    ⑧ 飲酒や姦淫など、イスラームが明白に禁じている物事を否定する言動。

    ⑨ アッラーがお約束され、また警告された物事など、イスラームそのものやその一部を嘲笑すること。

    ⑩ 預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)のサハーバ(教友たち)の中傷。

    3-行動的棄教:例としては、以下のようなものが挙げられます:

    ① アッラー以外の何かに対して犠牲を捧げること。

    ② アッラー以外の何かに対してサジダ(伏礼)すること。

    ③ サラーの放棄。

    ④ イスラームに背を向け、それについて学びもしなければ教授もしないこと。

    ⑤ ムスリムに対して、シルク[5]の徒を援助すること。

    ● 棄教者に対し義務付けられること:

     正常な理性を備えた成人で自ら望んでイスラームを棄教した者は、イスラームに再びいざない、悔悟して再改宗することを勧めます。それで悔悟すればその者はムスリムですが、もし悔悟せずに棄教に固執し続ける場合は刀による斬首刑に処されます。この場合その者は固定刑ではなく、不信仰者として死刑に処されることになります。

     アブー・ムーサー(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、ある男がイスラームを受容した後、ユダヤ教徒になりました。するとそこにムアーズ・ブン・ジャバルがやって来て、‐その男はアブー・ムーサーのもとにいました‐言いました:「“一体この男はどうしたのだ?”(アブー・ムーサーは)言いました:“イスラームを受け入れた後にユダヤ教徒になったのだ。”(ムアーズは)言いました:“私は彼を殺すまで腰を下ろすまい。(それは)アッラーとその使徒が定めたことなのだ。”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[6]

    ● イスラームの何かの否定によって棄教した者の悔悟は、その否定したことを肯定し、かつそれに2つのシャハーダ[7]の宣言が伴わなければなりません。

    ● 配偶者の棄教に関して:

     配偶者が棄教したら、その者はその伴侶にとって合法ではなくなります。

     棄教した者が夫である場合は、妻がイッダ(待婚期間)中である限りにおいて、悔悟した後に彼女と復縁することが可能です。もしイッダ中に復縁しなければ彼女は婚姻状態から解消されることとなり、もし両者が後に再婚を望む際には‐無論元夫のイスラーム改宗が条件となりますが‐新たな婚姻契約とマハル(婚姻の際の贈与財)が義務付けられます。

    ● 魔術の法的位置づけ:

     魔術はその学習や教授、実行や実演など全て禁じられます。

     1-シャイターンを媒介する魔術を行う者は、不信仰に陥ります。もし悔悟しない場合は棄教者と同様の形で死刑に処されます。

     2-薬物類などを用いた魔術を行う者は、不信仰者に陥りません。このような者は悔悟しない限り、他人の権利を侵犯する犯罪者として裁判官[8]の裁量により死刑に処されます。

     至高のアッラーはこう仰られました:-そしてスライマーン(ソロモン)が不信仰に陥ったのではない。シャイターン(悪魔)こそが不信仰をはたらき、人々に魔法を教授したのである。,(クルアーン2:102)

     またアブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、預言者(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「“7つの大罪を避けよ。”(教友たちは)言いました:“アッラーの使徒よ、それは何のことでしょうか?”すると(預言者は)言いました:“アッラーに対するシルク[9]。魔術。アッラーが禁じられた人の命を不当に奪うこと。リバー[10]を貪ること。孤児の財産に不当に手を付けること。戦場からの逃亡。無実なムフサンの婦人の貞節に関する名誉毀損。”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[11]

    [1] サヒーフ・アル=ブハーリー(3017)。

    [2] 訳者注:刑罰の執行は全て、イスラーム法でもって治める統治者の命によって行われます。イスラーム法治国家は無論のこと非イスラーム国においてもまた、一般人が勝手な判断で私刑を行うことは禁じられています。

    [3] 訳者注:いわゆる主性。つまりこの世の創造や管理、所有や支配などに関する権威。

    [4] 訳者注:いわゆる神性。つまり真に崇拝されるべき権威。

    [5] 訳者注:詳しくは「タウヒードとイーマーン」の章の「シルク」の項を参照のこと。

    [6] サヒーフ・アル=ブハーリー(7157)、サヒーフ・ムスリム(1824)。文章はアル=ブハーリーのもの。

    [7] 訳者注:「ラー・イラーハ・イッラッラー、ムハンマドッラスールッラー(アッラーの他に真に崇拝すべきものはなく、ムハンマドはそのアッラーの使徒である)」という信仰告白のこと。

    [8] 訳者注:イスラーム法で裁く裁判官のことです。

    [9] 訳者注:詳しくは「1-タウヒードとイーマーン」の章の「シルク」の項を参照のこと。

    [10] 訳者注:詳しくは「4-ムアーマラート」の章の「④リバー」の項を参照のこと。

    [11] サヒーフ・アル=ブハーリー(2766)、サヒーフ・ムスリム(89)。文章はアル=ブハーリーのもの。

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