根拠のない姦淫の告発に対する固定刑

概要

イスラームは人の尊厳が汚され、貶められることの防止に努めています。そしてそのために、無実な者の尊厳を不当に侵害することを禁じているのです。

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Detailed Description

    固定刑

    3根拠のない姦淫の告発に対する固定刑

    ] 日本語 [

    حد القذف

    [اللغة اليابانية ]

    ムハンマド・ブン・イブラーヒーム・アッ=トゥワイジリー

    محمد بن إبراهيم التويجري

    翻訳者: サイード佐藤

    ترجمة: سعيد ساتو

    校閲者: ファーティマ佐藤

    مراجعة: فاطمة ساتو

    海外ダアワ啓発援助オフィス組織(リヤド市ラブワ地区)

    المكتب التعاوني للدعوة وتوعية الجاليات بالربوة بمدينة الرياض

    1429 – 2008

    2-根拠のない姦淫の告発に対する固定刑

    ● 姦淫の告発とは:誰かを姦淫や同性愛、血筋の偽称など、それが真実であれば固定刑が科されるようなことでもって訴える[1]ことです。

    ● 根拠のない姦淫の告発に対する固定刑が定められたことに潜む英知:

     イスラームは人の尊厳が汚され、貶められることの防止に努めています。そしてそのために、無実な者の尊厳を不当に侵害することを禁じているのです。

     しかしある種の者は様々な意図から、姦淫の告発や人の尊厳を貶めるような発言のようにアッラーが禁じている物事を犯そうとします。そして人の意図は察することの困難な秘められたものゆえ、そのようなことを行う者にはその発言の正当性を裏付けるための4人の証人を要求されます。そしてもしそうすることが出来なかった場合、根拠もなく他人の名誉を毀損したかどで80回の鞭打ち刑という固定刑を科されるのです。

    ● 根拠のない姦淫の告発の法的位置づけ:

     根拠もなく他人を姦淫で告発することは、禁じられています。これは大罪[2]の1つであり、ゆえにアッラーはそのようなことを行う者に対して現世と来世における懲罰を科されたのです。

     1-至高のアッラーはこう仰られました:-そしてムフサン[3]を姦淫で告発した後に4人の証人を呼んで来れない者は、80回の鞭打ち刑にせよ。そして(その後、)その者の証言はもう永久に受け入れてはならない。彼らは放埓者なのである。,(クルアーン24:4)

     2-至高のアッラーはこう仰られました:-醜行などからは程遠い、信仰者のムフサンを(根拠もなく)姦淫で訴える者は、現世と来世において呪われよう。そして彼らにはこの上ない懲罰があるのだ。,(クルアーン24:23)

     3-アブー・フライラ(彼にアッラーのご満悦あれ)によれば、アッラーの使徒(彼にアッラーからの祝福と平安あれ)は言いました:「“7つの大罪を避けよ。”(教友たちは)言いました:“アッラーの使徒よ、それは何のことでしょうか?”すると(預言者は)言いました:“アッラーに対するシルク[4]。リバー[5]を貪ること。孤児の財産に不当に手を付けること。戦場からの逃亡。無実なムフサンの婦人の貞節に関する名誉毀損。”」(アル=ブハーリーとムスリムの伝承[6]

    ● 根拠のない姦淫の告発に対する固定刑は:自由民であれば80回、奴隷であれば40回の鞭打ち刑です。

    ● 姦淫の告発の形:

     1-直接的告発:例えば「おい、姦通者」といった風に、あからさまな表現を用いることです。

     2-比喩的告発:例えば「尻軽め」とか「淫売め」とかいったように、どちらとも取れるような表現を用いることです。

     この場合もしそれを口にした者がそれでもって姦淫を意図していたのなら、それは姦淫の告発と見なされます。一方もしそう意図していなかった場合それは姦淫の告発とは見なされませんが、裁量刑が科されます。

    ● 根拠のない姦淫の告発に対する固定刑が科される条件:

     根拠のない姦淫の告発に対して固定刑が科されるには、以下の条件を満たすことが必要です:

     1-告発者が責任能力を有する者[7]で、かつ自らの選択でそれを行うこと。また告発者が被告の父親ではないこと。

     2-被告が責任能力を有するムスリム自由民で、放縦ではなく貞節があり、また性交渉が可能な者であること。

     3-被告が告発者への固定刑の執行を請願すること。

     4-告発は固定刑が科される姦淫に関するものであり、かつそれを確証出来ないこと。

    ● 姦淫に対する告発はいかに確証されるか:

     姦淫に対する告発は被告がそれを認めるか、あるいは告発者が他の2人の証人‐宗教を遵守し常識を備えた男性2人‐を連れて来ることが出来れば確証されます。

    ● 根拠のない姦淫の告発に対する固定刑の却下:

     根拠のない姦淫の告発に対する固定刑の執行は、以下のことで却下されます:

     1-被告が自ら姦淫の事実を認めた場合。

     2-被告が姦淫した証拠が上がった場合。

     3-夫がその妻を姦淫の告発で訴え、リアーン[8]をした場合。

    ● 姦淫の告発が無根拠であることが判明した場合:

     姦淫の告発が無根拠であることが判明したら、以下のような結果が生じます:

     1-鞭打ち刑の実施。

     2-その後告発者が悔悟しない限り、その証言が一切受理されなくなること。

     3-その後告発者が悔悟しない限り、宗教的放縦者の烙印を押されること。

    ● 姦淫や同性愛行為以外のことに関して嘘の告発をすることもまた、禁じられています。そのような者は姦淫告発に対する固定刑を科されはしませんが、裁判官[9]はその結果生じた被害などを考慮しつつ、その者に対して適切な裁量刑を科します。

    ● 姦淫や同性愛行為以外のことに関する虚偽の告発には、以下のような例があります:   

    1-他人を不信仰者と告発すること。

    2-他人を偽信者と告発すること。

    3-他人を飲酒者と告発すること。

    4-他人を窃盗犯と告発すること。

    5-他人を詐欺師と告発すること、などです。

    ● 根拠もなく他人を姦淫で告発した者の悔悟:

     根拠もなく他人を姦淫で告発した者は、以下のような物事でもって悔悟します。

     1-イスティグファール(アッラーに罪のお赦しを乞うこと)。

     2-後悔の念。

     3-もう同じ過ちを犯さないという、確固とした決意。

     4-自分のした虚偽の告発を自白すること。

    [1] 訳者注:「訴える」とか「告発」とかいう表現を用いましたが、別に裁判の場に限らず、日常的な会話の中でもそのような意味に取れる表現の言葉を用いれば、姦淫の告発に該当することがあります。詳しくは後述の「姦淫の告発の形」を参照のこと。

    [2] 訳者注:「大罪(カビーラ)」とは、それに対し現世において刑罰が適用されたり、あるいはそれを犯すことで来世において地獄を警告されていたり、またアッラーのご慈悲からの放逐やかれのお怒りを招くこととされているものです。例としてはシルクや殺人、ズィナー(姦淫)や魔法、リバー(不法商取引)、親不孝、嘘の誓いなどがあります。

    [3] 訳者注:「ムフサン」とは男女の別なく、成人ムスリムで精神的に健常な自由民で、婚姻の経験(つまり合法的な性交渉の経験)があり、慎ましく放縦ではない者のことです。

    [4] 訳者注:詳しくは「1-タウヒードとイーマーン」の章の「シルク」の項を参照のこと。

    [5] 訳者注:詳しくは「4-ムアーマラート」の章の「④リバー」の項を参照のこと。

    [6] サヒーフ・アル=ブハーリー(2766)、サヒーフ・ムスリム(89)。文章はアル=ブハーリーのもの。

    [7] 訳者注:つまり未成年や精神的に異常のある者ではないこと。

    [8] 訳者注:リアーン(詳しくは「4-ムアーマラート」の章の「⑦リアーン」の項を参照のこと)とは夫が妻を姦淫の罪で訴え、妻がそれを否定して夫の嘘を主張し、そしてお互いが自分の意見を譲らないまま互いの正当性をある手続きの元で誓い行うことです。これが成立すると離婚となり、そしてお互いに縁を取り戻すことは永遠に不可能になります。

    [9] 訳者注:イスラーム法で裁く裁判官のことです。

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