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遺体の運搬と埋葬、そして墓の形式に関する諸規定についてご説明します。

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⑤遺体の運搬と埋葬

 

     遺体の運搬: 

 遺体の運搬は男性のみが行い、女性は加わりません。そしてその前後に徒歩の参列者が並び、乗り物に乗った参列者は後方に並ぶのがスンナです。もし墓地が遠かったり、その行程に何らかの問題があったりする場合は、乗り物で遺体を運んでも構いません。

 

     ムスリムを埋葬する場所:

ムスリムは老若男女の別を問わず、ムスリム用の墓地に埋葬します。そしてモスクや非ムスリムの墓地などに埋葬したりすることは許されません。

 

     遺体の埋葬の仕方:

墓穴は深く、広く、かつ綺麗に掘らなければなりません。そして墓穴の底にはキブラ[1]に向けて、遺体がちょうど入る位の大きさの「ラハド」と呼ばれる横穴を掘ります。墓穴の底の中央に遺体がちょうど収まる位の穴を掘る方式もありますが、ラハドの方が良いでしょう。そして遺体を墓穴の中に安置する時には、こう言います:「アッラーの御名において。そしてアッラーの使徒のスンナにおいて(あるいは「アッラーの使徒の宗教において」)」(アブー・ダーウードとアッ=ティルミズィーの伝承[2]

そしてラハドには遺体の右半身を下側にして安置し、顔はキブラの方に向けます。それからラハドの入り口にレンガを並べて塞ぎ、その上と隙間に土を詰めます。こうして墓穴に砂を入れて埋め、地表から1指尺位の高さまで半円状に盛り上げます。

 

     墓の上に建築すること:

以下のことは禁じられています:

       墓の上に建築すること。

       墓に漆喰を塗ること。

       墓の上を踏むこと。

       墓でサラーをすること。

       墓をモスクとすること。

       墓に灯りを点すこと。

       墓に花などを飾ること。

       その周りを崇拝行為としてタワーフ(周旋)すること。

       墓に何か書きとめること。

       墓を決まった期日に訪れたり、そこで祝祭などを催したりすること。

 

     墓の上にモスクを建てることに関する法的見解:

墓の上にはモスクを建ててはいけませんし、遺体をモスクの中に埋葬してもいけません。もしモスクの中に墓が作られたりしたら墓を平坦にするか、あるいはそれがまだ新しければ、遺体を掘り出して墓場に埋葬し直します。一方もし墓の上にモスクが建てられたらモスクを除去するか、あるいは墓の見える部分を除去するようにします。墓の上に建てられたモスクでは、義務のサラーも任意のサラーも行ってはいけません。

     異臭が地上にまで発したり、あるいは動物などに掘り返されたりしないよう、出来るだけ墓穴を深く掘ることはスンナです。また墓の底の中央部に遺体がちょうど収まる位の穴を開けることも出来ますが、最良なのは前述したラハド(横穴)です。そしてそこに遺体を安置したら一旦レンガでそこと元々の墓穴部分の間を堰き止め、それから墓穴を砂で埋めるようにします。

     遺体の埋葬は昼間に行うのがスンナであり、夜間の埋葬は禁じられています。

     死者の増加や埋葬を務める者の減少などによる必要性がない限り、1つの墓には2体以上の遺体を埋葬することが出来ません。そのような時は、複数の遺体の内で最も優れていた者をラハドに安置するようにします。また存命中に自分の墓を掘っておいたり、死に装束を用意しておいたりすることは許されません。

 

     遺体を墓から移転することについて:

墓地が洪水に遭ったり、あるいはムスリムが非ムスリムの墓地に埋葬されてしまったりした場合など遺体の福利に関わる理由があるならば、遺体をある墓地から別の墓地へと移転させることが可能です。墓地は私たちに先駆けてこの世を去った死人の場所であり住処であり、私たちの訪問先でもあります。それゆえ遺体にとっての何らかの福利がなければ、彼らを墓地から掘り起こすことは許されません。

 

     誰が埋葬に携わるか?

遺体を墓穴に降ろすのは男性の仕事で、故人の後見人にその優先権があります。そして女性を墓穴に下ろすのは、その前の晩に妻と性交渉を持たなかった男性が行います。遺体は頭の部分から先に、足が置かれる場所の方から墓穴に入れるのがスンナですが、どこから入れても問題ではありません。尚遺体の骨を折ったりすることは禁じられます。

 

     女性が埋葬に参列すること:

女性が埋葬時まで遺体に同伴することは禁じられています。一般的に言って女性は繊細で感情的になりやすく、故人との別れに際してイスラーム法的に禁じられている言動などが発されてしまう恐れがあるからです。

 

     墓に目印をつけること:

故人の後見人はその場所を見分け、また将来における遺族の埋葬の際に役立てるため、墓の場所に石などによって目印をつけるのがスンナです。

     海などの移動中に水死し、陸に着くまで待てばその遺体の損傷の恐れがあるような場合、その場で洗浄して死に装束を着せ、葬儀のサラーを行ってから水の中に沈めます。しかしもし上陸するまで遺体の状態が変わらなそうであれば、上陸するまで待って墓地に埋葬します。

     存命中のムスリムから分断した身体部分は、いかなる場合があっても焼いたりしてはなりません。そのような物は洗浄もサラーも行わず、粗めの紙などに包んで墓地に埋めます。

     ムスリムは葬儀の列に出遭ったら、そこに参加するのが推奨されています。そのような者は座っていても問題ありません[3]

 

     墓場における訓戒:

遺体が安置されてから埋葬されるまでの間、時には座って一族の長や学のある者が死とその後に待ち受けていることについて参加者に訓戒を垂れることはスンナです。

 

     埋葬後に何をするか?

葬儀の参加者は遺体の埋葬後しばらくその場に留まり、故人が墓の中における質問において堅固であること[4]を祈り、またその罪の赦しを乞います。また他の者にもそうするように勧め、「ラー・イラーハ・イッラッラー(アッラーの他に真に崇拝すべきものはなし)」という念唱はここでは特別な形では行いません。それはむしろ故人の臨終の際に行われるべきです。

 


[1] 訳者注:カアバ神殿のあるマッカの方角のこと。

[2] 真正な伝承。スナン・アブー・ダーウード(3213)、スナン・アッ=ティルミズィー(1046)。

[3] 訳者注:葬列の参加者が遺体の安置前に座るのは、厭われるべき行いです。

[4] 訳者注:人は死後埋葬された後、墓の中において天使から主と宗教と使徒についての3つの質問を受けます。現世で真に信仰者であった者はその質問に容易に答えられますが、そうでなかった者は回答が出来ず、その結果懲罰に晒されることになります。

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