10 - スーラト ユーヌス ()

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(1) アリフ・ラーム・ラー(このような文字の羅列は雌牛章の冒頭でも現れ、説明済みである)。本章の諸節は英知に満ちた、クルアーンの印(しるし)である。

(2) アッラーが一人の男に啓示を下し、アッラーの罰について警告するように命じ、アッラーへの信仰を持つ者たちに、善行の報奨として主の御許における高い地位があると吉報を告げたことを、人々は驚くのか。不信仰者たちは、これらの章句をもたらした男は明らかに魔術師であると言った。

(3) 本当に、あなた方の主はアッラーであり、かれは六日間で天地を広大に創造し、そして自ら玉座に鎮座した。なぜ自分たちと同じような人間が自分たちに遣わされたのかと不思議に思うのか?アッラーが単独でその御心に叶うことを決める。アッラーが許可し、懇願者に満悦しない限り、誰もかれへ懇願を執り成すことはできない。それこそが、あなた方の主アッラーであり、崇拝はかれのみへと誠実に捧げるのだ。アッラーの唯一性に関するあらゆる証拠を吟味しないのか。この訓戒に耳を傾ける人は誰であれ、それが真理であることを知り、かれを信じるのである。

(4) あなた方は復活の日、ひとりでかれに戻るのである。かれはあなた方の行いに応じて報いる。アッラーの約束は真理である。かれはそれにおいて万全である。かれは最初に土から人間を創った。アッラーを信じ、善行に励んだ正義の者たちに報いるため、彼らは死後に再び復活させ、彼らの善行を減らすこともなければ、悪行を増やすことも決してない。アッラーとその使徒に不信仰を抱いた者たちは、その不信仰ゆえに煮えたぎる水を飲まされ、痛烈な罰が与えられるのである。

(5) 太陽が光を放ち、月がそれに照らされた光となるようにしたのはかれであり、人々が太陽によって日数と、月によって月と年の数を知ることができるよう、28の段階(と24時間毎の変化)を決定した。アッラーが天地とその中にあるものを創造したのは、かれの力と真理を人々に明らかにするためである。これらの事実からアッラー以外に真の神はないという結論を導き出せる者のため、アッラーはこれらの明白な印と証拠をはっきりとさせたのである。

(6) 昼夜の移り変わり、それに伴う光と闇、それぞれの長短、そして天地における創造されたものすべては、命令を守り、禁止を忌避することによってアッラーを意識する者たちに示される、アッラーの印である。

(7) (それを恐れている、あるいは望まないことから)アッラーとの出会いを準備しない不信仰者たちは、来世での永遠の生命ではなく、儚い現世での生活に満足しきっている。彼らはアッラーの印を考慮することはない。

(8) 復活の日の彼らの住まいは、彼らが不信仰と拒絶を通して得たものにより、地獄の業火となろう。

(9) アッラーに縋り、善行する者は、その信仰心と行為にアッラーが満悦し、導きを与える。そして復活の日、アッラーは川の流れる永遠の至福の楽園に彼らを入れるであろう。

(10) 楽園での彼らの祈りは、アッラーへの賛美である。アッラーによる彼らへの挨拶と、天使同士の挨拶は「平安あれ」であり、祈りの結びはすべての被造物の主であるアッラーへの賛美である。

(11) 怒りに任せて自分自身や子供たち、または自らの富に対して悪を祈る者たちに対し、彼らが善を求めたときと同じようにすばやくアッラーが応えたなら、彼らは滅ぼされたことであろう。しかしアッラーは彼らに猶予を与える。自身の行為の結果を恐れたり、報奨を期待したり、アッラーに会うことを期待しない者たちをアッラーは見放し、来世への疑念の中、当てもなく彷徨わせる。

(12) 限度を超える者たちが病気や不幸に苦しむとき、彼らは苦難を遠ざけるために謙虚になり、寝ていようが座っていようが立っていようがアッラーに懇願する。しかしアッラーが彼らの祈りに応え、彼らの苦難を取り除いたとしても、彼らはあたかもアッラーに苦難の除去を頼まなかったかのように、過去同様の行いを続ける。過ちを続けることが彼らにとって魅力的に見えるのと同様、限度を超える者の不信仰と不従順は彼らにとっては魅力的に見えるため、彼らはそれを改めることがない。

(13) 多神教徒たちよ、われらは確かにあなた方の過去の共同体を滅ぼした。彼らはアッラーの使徒たちを拒絶し、罪を犯したからである。彼らに遣わされた使徒たちは、主からもたらされた真理を示す明確な証拠と共に彼らのもとに来たが、彼らは信じようとはせず、アッラーは彼らを見捨てたのである。アッラーが彼ら以前の不従順な共同体に報いたように、かれはあらゆる時間と場所で彼らのような者たちに報いるのである。

(14) それからかれはあなた方を、真理を拒絶し破壊されたこれらの共同体の後継者とした。それは、あなた方の行いを見極めるためである。それが善行であればそれに応じて報われ、悪行であればその結果に直面しなければならないであろう。

(15) 彼らに対してクルアーンの明確な章句が朗誦され、アッラーの唯一性が証明されると、復活を否定し、報奨を期待しない、あるいはいかなる結末をも恐れない者たちは、ムハンマドに対し、偶像崇拝を禁じるこのクルアール以外の異なるクルアーンをもたらすように求める。もしくは彼らの欲求に沿うような、その全てあるいは一部が置き換えられたものを要求する。アッラーはムハンマドが彼らに対してこう言うよう述べる。「クルアーンのいかなる変更も、私の裁量に委ねられたことではなく、クルアーン以外の異なるものがもたらされることも決してない。アッラーが望んだならばそれを変えるのであり、私は復活の日、彼らの要求に従ってアッラーに背き、懲罰を受けることを恐れており、アッラーが私に求めた通り行動することによってのみ、アッラーの啓示に従うのみである。」

(16) 使徒よ、彼らに言うのだ。「アッラーが望んだならば、私はあなたにクルアーンを朗誦しなかっただろうし、それはあなた方にも伝えられなかっただろう。そしてもしアッラーが望んだならば、あなた方は私の口からこのクルアーンを知ることもなかったであろう。私は長い間(40年間)、あなた方と共に生きてきたが、読むことも書くこともなかったし、このような知識を求めたこともなかった。私にもたらされたものは、アッラーから来たものであり、自分で創作したものではないことをあなた方は推論し、理解することができないのか。」

(17) アッラーについて虚偽を捏造する以上の大罪はない。ではなぜこのクルアーンに変更を加え、あなた方が望むような嘘をつくことができようか。アッラーの限度を超え、かれについての嘘を捏造する者たちが成功することはない。

(18) 偶像崇拝者たちは、アッラー以外の神であると彼らが主張するものを崇拝する。それらは彼らを益することもなければ害することもない。しかし、アッラーは望みのままに恩恵を授け、また害を及ぼす。そして彼らは崇拝する神が、彼らが罰を受けないよう、彼らのためにアッラーに訴えかけてくれるであろうと言う。使徒よ、彼らに尋ねるのだ。「あなた方がは全知なるアッラーに対し、天地においてかれの知らない同位者がいるとでも言うのか。」 アッラーこそが唯一なる神であり、偶像崇拝者の虚偽をはるかに超える存在である。

(19) 人々は信仰者たちの統合された共同体だったが、彼らは相違した。彼らの一部は信仰に留まったが、他者は不信仰に陥った。もしも彼らの相違点について、アッラーが来世ではなく現世で裁くという定めだったのであれば、彼らのうち誰が導かれ、誰が迷い去ったのかが現世において既に明白となっていただろう。

(20) 偶像崇拝者たちは、なぜ主によってムハンマドの主張の真理性を証明する印がもたらされないのかと尋ねる。使徒よ、彼らに言うのだ。「印がもたらされるかどうかはアッラーのみが知っており、あなた方はその求めている印を待つのだ。私もあなた方と共に待っていよう。」

(21) 干ばつや苦難の後、アッラーが雨や豊かさのような慈悲を偶像崇拝者たちに経験させるならば、彼らはアッラーの印を拒否して策謀を始める。使徒よ、これらの偶像崇拝者たちに言うのだ。「アッラーはより迅速に策謀し、誘惑し、そして罰を与える。」天使たちは彼らの策謀を記録しており、彼らが記録し逃すものは何もない。創造主からは逃れ得ないのであり、アッラーは彼らの策謀に報いるのである。

(22) アッラーこそが人々を陸で、徒歩で又は乗り物で旅行させ、そしてかれこそが海上の船で彼らを旅行させるのである。彼らは良い風で航海し、人々はそれに喜ぶ。そして強風が彼らにやって来ると、海の波が四方八方から彼らに押し寄せ、彼らは滅ぼされると確信すると、他の神々を一切排除してアッラーのみに呼びかけてこう祈る。「もしもこの破滅的な状況から私たちを救ってくだされば、その祝福に対して心から感謝します。」

(23) しかし、かれが祈りに応えて彼らを苦難から救い出しても、彼らは地上で腐敗を広め、不信仰や不義を犯す。人々よ、目を覚まし、気づくのだ。あなた方の罪と不義の悪い結末はあなた方自身の上に降りかかるだけであり、アッラーを傷つけることは一切ない。彼らは現世の儚い生活の中でそれを楽しみ、そして復活の日にアッラーへと戻り、彼らの不義を彼らに告げ知らせ、彼らに報いるであろう。

(24) この現世の生活とそこでの儚い享楽は、地上の植物が吸収する雨に例えられる。人々はそこから穀物や果物を食べ、動物はその植生から恩恵を受ける。鮮やかな色を帯びて成長している様々な植物のために地上が美しく見え、そして人々は彼らが育てたものを収穫できると思い込むものの、アッラーの指令でそれが破壊されると、それはあたかもなかったかのように台無しとなる。アッラーはこのようにして現世での生活の本質を明らかにする。それは、あなた方がそれについて考え、力強い教訓とするためである。

(25) アッラーは全人類を平安の住まいである楽園へと呼びかける。そこで人々は苦難や心配、そして死から解放される。そしてアッラーはお望みのまま、僕たちをイスラームにやって来ることを可能とし、彼らをこの平安の住まいに導くのである。

(26) アッラーによって義務付けられたことや善行に励み、アッラーが禁じた罪から遠ざかる者たちは、最高の報いを受けるであろう。それは楽園であり、さらにはアッラーの高貴な顔を見ることである。埃や屈辱、不名誉のいずれも彼らの顔を覆うことはない。そのような善行をなす者たちは天国の仲間であり、彼らはそこに永遠に留まるであろう。

(27) 不信仰や不義などの悪行をなす者たちは、現世で犯した罪のために、来世で相応の返済を受ける。彼らの顔は屈辱と不名誉で覆われ、アッラーによって与えられる罰から彼らを救う者は誰ひとりいない。地獄の業火から彼らに届く大量の煙と暗さのせいで、彼らの顔はあたかも闇夜の黒い斑点で覆われているかのようになるだろう。そのような者たちは地獄の業火の民であり、そのなかに永遠に住むのである。

(28) 使徒よ、復活の日を想起せよ。アッラーがすべての被造物を集め、アッラーに同位者を配した世界中の者たちに、彼らがアッラーをよそに崇拝していた偽の神々と共にその場に留まるよう述べる時のことを。かれは崇拝されていた者たちから崇拝していた者たちを切り離すであろう。そして崇拝されていた者たちは、「あなた方が崇拝していたのは私たちではなかった」と主張し、彼らを崇拝していた者たちを突き放すのである。

(29) 彼らの偽の神々は、彼らによって崇拝されていたことは本望ではなかったと言うだろう。そして彼らにそうするよう命じもしなかったし、彼らの崇拝についても気づかなかったと主張するだろう。そしてその証人としてアッラーこそが万全であると言い放ち、彼らから彼ら自身を遠ざけるのである。

(30) その偉大なる場で、それぞれの魂は現世の生活の中で何をしたかについて告げ知らされるであろう。それから偶像崇拝者は彼らの真理の主であり、審判者であるアッラーに戻り、そこには彼らが作り出した偶像の執り成しも存在しないであろう。

(31) 使徒よ、これらの偶像崇拝者たちに言うのだ。「誰が空からあなた方のため雨を降らせるのか。誰があなた方のため、金属と鉱物を含む大地から植物を育たせるのか。誰が死から生をもたらし、一滴の精液から人間を、または卵から鳥を生み出させるのか。そして、誰が天地を創造し、その中のすべてを統治するのか。」彼らはアッラーであると答えるだろう。彼らに言うのだ。「それを知るのなら、アッラーの指令に従い、かれの禁止を忌避し、かれを意識すべきではないのか。」

(32) 人々よ、そのすべてをなすのは真理なる御方アッラーであり、あなた方の創造主であり、あなた方の管理者である。真理がなければ、そこに誤りと損失以外の何があろうか。明白な真理に背き、虚偽の気まぐれや欲望に従うのはなぜなのか。

(33) アッラーの主権性が確立されたように、かれの定めもまた確立されている。傲慢さによって真理から背き去る者たちは、信仰を持つことはない。

(34) 使徒よ、彼らに言ってやるがいい。「彼らがアッラーを差し置いて崇拝する者たちに、無から創造を生み出し、それらの死後にそれらを甦らせる者はいるのか。」 彼らに言うのだ。「アッラーは無から創造し、それらの死後にそれらを甦らせる。あなた方偶像崇拝者たちは、どうして真理から虚偽へと背き去ることができるのか。」

(35) 使徒よ、彼らに言うのだ。「彼らがアッラーを差し置いて崇拝する者たちに、真理へと導く者はいないのか。従われるのに相応しいのは、人々を真理に導き、そこへと呼びかける者なのか、それとも導かれない限りは自らをも導くことができないあなた方の神々なのか?それらをアッラーの同位者であると主張する、あなた方の誤った判断は、一体どうしたことなのか。アッラーはあなた方の主張よりも遥か上の存在である。」

(36) 偶像崇拝者のほとんどは、知識のないことや、憶測による仮定に従う。単なる仮定は知識の代わりとはならず、何の役にも立たない。アッラーは彼らの行いを知り尽くしており、彼らの行いの何もかれからは隠されてはいない。そして彼らはそれに応じて報われるであろう。

(37) その奇跡的な雄弁さと法をもたらすクルアーンは捏造することができなかった。そしてそれはアッラー以外の誰にも帰することができない。なぜなら人々はそれに似通った何かを作り出すことができないからである。むしろ、それはそれ以前に啓示された諸啓典を確証し、その中の法を明確にしており、それがすべての創造主によって啓示されたことに疑いの余地はないのである。

(38) それとも、これらの偶像崇拝者たちは、それがアッラーからであると主張してムハンマドがクルアーンを作り出したとでも言うのか。使徒よ、彼らに言うのだ。「私があなた方のような人間として、それを作り出すことができたならば、あなた方も同じような章句を作り出すべきであり、クルアーンがアッラーのものではないという主張が真理なら、あなた方を助けることのできる援助者に呼びかけてみると良い。しかし、あなた方は言語能力に長け、雄弁であるにもかかわらず、それができなかった。つまり、それはクルアーンがアッラーによって啓示されたことを示しているのである。」

(39) 不信仰者たちはこの挑戦に応じ得なかったが、それを理解しようともせず、考えもせずにクルアーンを拒絶した。警告された罰はまだ来てはいないが、それは間近である。同様に、過去の共同体は真理を拒絶し、アッラーは彼らに罰を与えて滅ぼした。それゆえ、真理を拒絶したこれらの共同体の終焉について考察するのだ。

(40) 死ぬ前にクルアーンを信じる偶像崇拝者たちや、死ぬまで頑固さと驕りから信じることのない偶像崇拝者たちがいる。アッラーは不信仰と不誠実に固執する者たちを最もよく知っており、彼らの行為に応じて報いるのである。

(41) 使徒よ、もし彼らがあなたを拒絶したとしても、あなたには行いに応じた報酬が与えられる。あなたの行為はあなた自身の責任である。そして彼らは行いに応じて報われ、その行いの結末に対処しなければならないだろう。彼らはあなたの身に起こることに対して責任を負わない。そしてあなたは彼らの身に起こることからは無関係である。

(42) 使徒よ、偶像崇拝者の何人かは、あなたがクルアーンを朗誦すると、それに従おうとは望まないものの、耳は傾ける。あなたは聞こえない者に聞かせることはできない。彼らは理解しようとせず、あなたは真理に耳を貸さない者たちを導くことはできない。

(43) 使徒よ、そして彼らのうちには、目であなたが見えてはいるものの、洞察しない者たちがいる。あなたは盲人の目を見えるようにすることは可能であろうか。あなたにはそうすることができず、同様にあなたは知覚と理解を欠く者たちを導くことはできない。

(44) 疑いなく、アッラーは人々を不当に扱うにはあまりにも高貴な存在である。そしてかれは原子の重さですら不正をもたらさない。虚偽や傲慢、頑固さに固執する者たちが、彼ら自身に破滅をもたらすのである。

(45) アッラーが復活の日、人々を集めて裁くときは、彼らはあたかも地上で生きた後、死後に一刻も待たなかったかのようである。彼らはその日にお互いを認識するが、彼らの知人は彼らが復活の時に目撃した恐怖の強さから、お互いを切り離すだろう。復活の日に主との面会を拒絶した者たちとは、現世で復活を信じず、損失に備えもしなかった、明らかな失敗者たちなのである。

(46) アッラーが使徒の生前、彼らに約束された罰を彼に見せたか、あるいはその前に彼を死なせたかに関わらず、彼らは復活の日、アッラーへと戻るのである。アッラーは彼らの行いの証人であり、かれからは何一つ隠されておらず、彼らはその行いに応じて報いを受ける。

(47) 過去、それぞれの民に使徒が遣わされた。使徒は命じられたものを彼らに届け、彼らが彼を拒絶したとき、彼と彼らは公正に判断された。アッラーはその恵みから使徒を救い、正義によって彼らを滅ぼした。彼らはその行いに対する報いとして、まったく不当な扱いを受けはしないのである。

(48) 頑固な不信仰者たちは言う。「あなたが真理を語っているなら、いつ私たちに約束された罰がもたらされるのか。」

(49) 使徒よ、彼らに言うのだ。「私自身でさえ、アッラーの意志とは別に、自らに恩恵を与えたり害を及ぼしたりするものについて何の力もないというのに、どうして他者への恩恵または害を制御できようか。私には不可視界の知識はない。アッラーはあらゆる民を滅ぼすための時間を定められた。そしてアッラーだけがその時を知るのである。あなた方の破滅の時が来たならば、それは早めることも、一瞬たりとも遅らせることはできない。」

(50) 使徒よ、迅速な罰を望むこれらの者たちに言うのだ。「アッラーの罰が昼夜を問わず来たときは、私に知らせるのだ。あなた方が迅速に望む罰とは何なのか。それは幸福と喜びなのか、もしくは悲しみと後悔なのか。それゆえ、あなた方はそれが迅速になるのを求めるべきではない。」

(51) それとも彼らは、約束された罰が彼らに下された後になり信じるのだろうか。彼らは信仰が役に立たなくなるそのときになって、信じていなかったことをようやく信じるのか。そして彼らは以前、信じていなかったために、罰を早めようとさえとしていたのだ。

(52) それから彼らが地獄に入り、彼らがそこから取り除かれることを求めたら、彼らにはこう言われるだろう。「来世の永遠の苦しみを味わえ。あなた方は不信仰と不服従の報いを受けているだけなのだ。」

(53) 使徒よ、偶像崇拝者たちは約束されたこの罰が真理であるかどうか尋ねる。彼らに言うがいい。「アッラーに誓ってそれは真理であり、あなた方はそれから抜け出すことはできないのである。」

(54) もし、アッラーに同位者を配する者たちが地上のすべての富を所有しており、アッラーの罰から逃れる代償としてそれを差し出す機会が与えられたなら、そうしたであろう。偶像崇拝者たちは、復活の日の罰を目の当たりにすると、不信仰を後悔するが、それを隠すだろう。アッラーは公正さをもって彼らを裁く。彼らは不当に扱われることはなく、その行いに応じて報われるだけである。

(55) 天地のすべてを支配するのはアッラーだけである。不信仰者たちに対するアッラーの罰の約束は間違いなく起こるが、彼らのほとんどはそれを知らないか、疑っている。

(56) かれは、死者を蘇らせ、生者を死なせる。あなたが復活の日に戻るのは、かれのもとのみである。そしてかれはあなた方の行為に応じて報いるのである。

(57) 人々よ、このクルアーンはあなた方の元にもたらされた。それは強力な教訓であり、励ましと警告でもある。それは心の中にある疑念という病の治癒である。そこには真理の道への導きがあり、そこから利益を得る信仰者にとっての慈悲でもある。

(58) 使徒よ、人々に言うのだ。ムハンマドがあなた方にもたらしたクルアーンは、あなた方にとってアッラーの恵みと慈悲である。だからこそ、他ならぬこのクルアーンの啓示によるアッラーからの恵みと慈悲を喜ぶのだ。ムハンマドが主から彼らにもたらしたものは、現世の儚い些細なことよりも優れているのだ。

(59) 使徒よ、これらの偶像崇拝者たちに言うのだ。「アッラーがあなた方に下した恩寵について述べよ。あなた方は欲望のまま、それらの一部を合法とし、また一部を非合法とした。アッラーはそれらの合法化、あるいは非合法化をあなた方に許可したのか。それともあなた方は、アッラーについての嘘を捏造しているのか。」

(60) アッラーについて嘘を捏造する者たちは、復活の日に彼らに何が起こると思うのか。彼らは赦されるとでも思い込んでいるのか。断じてそうではない。アッラーは人々に猶予を与え、即座に罰を与えない。しかしほとんどの者はアッラーによるこうした恩寵を否定し、感謝しない。

(61) 使徒よ、あなたがいかなる事柄にも関与し、またクルアーンのいかなる部分を朗誦しても、われらがそれを聞き逃すことはない。信仰者たちよ、あなた方のどのような行為も、われらがそれを見届けないことはない。われらはあなた方の言動を知り尽くしている。天地におけるあらゆるものは、たとえそれが原子の重さであれ、主の知識からは隠されていない。それよりも少ない、またはそれ以上の重さの何であれ、それは明確な書物に記録されており、大小を問わず、何ひとつとして省かれてはいないのである。

(62) アッラーの友は、復活の日に来る恐怖を恐れることはない。そして彼らは逃した現世の喜びも悲しまないであろう。

(63) アッラーの友は、アッラーを信頼し、その使徒に追従する資質を持つ者たちである。彼らはアッラーを意識し、主の指示を成し遂げ、禁じられた行為を忌避する。

(64) アッラーの友には主からの吉報があり、良い夢や人々からの賞賛として、彼らの現世の生活を幸せにするだろう。彼らはまた、魂を奪われるときにも天使からの吉報を受けるだろう。アッラーの約束は決して破られない。それは彼らの願望の実現と、彼らの恐れに対する救済を伴う。その報奨は大いなる成功である。

(65) 使徒よ、あなたの宗教を侮辱し、攻撃する者たちの主張を嘆いてはならない。すべての権力と支配はアッラーに属するのである。かれの力に際限はない。かれは彼らの言動を知り尽くし、彼らはそれに応じて報われる。

(66) 天地のあらゆるものを支配するのはアッラーのみである。アッラーに同位者を配して崇拝する偶像崇拝者たちが従っているのは何なのか。実は、彼らは疑念に従っているだけであり、彼らがアッラーに配するものは虚偽に過ぎない。アッラーは彼らの言説をはるかに超越する。

(67) 疲れからあなたを休ませるのはあなた方のために夜を作ったかれだけである。かれはあなたが働き、あなたが生計を立てるために日中を明るくした。その中には、意識し、受け入れ、よく聴き、洞察力のある人々のための明確な証拠がある。

(68) 一部の偶像崇拝者たちは、「アッラーは天使たちを娘とした」と述べた。 アッラーは彼らの主張とは無縁である。かれは自存し、被造物を何一つ必要としない。天地の一切を支配するのはかれである。あなた方偶像崇拝者には、その主張におけるいかなる根拠もない。あなた方は現実を知らず、そして根拠なく、アッラーに子を帰属させ、嘘を言い張る。

(69) 使徒よ、彼らに言うのだ。「アッラーに子を帰属して虚偽を捏造する者たちは、その願望を達成できず、恐れるものから救われることもない。」

(70) 彼らは現世の贅沢に騙されるべきではない。それは束の間の儚い享楽であり、彼らは復活の日、われらの元へ戻るのだ。その後、われらへの不信仰と、われらの使徒たちへの拒絶から、彼らは痛烈な罰を味わうことになる。

(71) 使徒よ、拒絶するこれらの偶像崇拝者に、民に対してこう言ったヌーフの逸話を物語るのだ。「民よ、私があなた方の間で、アッラーの印を思い起こさせ、助言するのが迷惑で、あなた方は私の殺害を決め込んだ。私はアッラーを信頼する。あなた方の神々に対し、私の殺害の援助を呼びかけてみよ。あなた方は策謀を秘密にしてはならない。私を殺す計画をしたなら、あなた方の策謀を実行するのだ。そして私に猶予を与えてはならない。

(72) たとえあなた方がそうせずとも、私はあなた方に主の教えを伝えるための報奨を一切求めなかったことを知るべきである。あなた方が私を信じるかどうかに関わらず、私の報奨はアッラーによるものだけである。アッラーは私に、帰依と善行をもって自らを献身的に捧げるよう命じたのである。」

(73) ヌーフの民は彼を拒絶し、受け入れなかった。それでわれらは彼と共に船に入った信仰者たちを救った。われらは彼らを過去の人類の後継者とした。そして洪水の徴候と証拠を拒絶した者たちを滅ぼした。使徒よ、ヌーフによって警告されたにも関わらず、信じなかった者たちの運命について考察するのだ。

(74) われらはそれからしばらくして、ヌーフの後に使徒たちを民に遣わした。使徒たちは圧倒的な奇跡と純粋な法を携え、彼らの共同体に遣わされた。しかし、彼らは過去同様、信じようとはしなかった。それでアッラーは彼らの心を封じられた。過去に使徒たちを拒絶した者たちの心を封じたように、われらはあらゆる時代と場所において、不信仰を犯し、アッラーの定めた限度を超えた不信仰者の心を封じるのである。

(75) その後しばらくして、われらはムーサーとその兄ハールーンをエジプト王フィルアウンとその民の貴族たちへと遣わした。われらは真理を示す奇跡を彼ら2人と共に下したが、フィルアウンの民は使徒たちがもたらしたものを受け入れるにはあまりにも傲慢であった。彼らはアッラーへの不信仰とその使徒たちを拒絶した罪深い者たちであった。

(76) ムーサーとハールーンによって、真理がフィルアウンとその民の貴族たちにもたらされた時、彼らは言った。「ムーサーがもたらした、これらの(杖や手の)奇跡は明らかな魔術であり、啓示された真理ではない。」

(77) ムーサーは彼らを否定して言った。「あなた方は真理がもたらされたとき、それを魔術だと言ったが、断じてそれは魔術ではない。魔術師は決して成功しない。」

(78) フィルアウンの民はムーサーに言った。「私たちが従う宗教から私たちを引き離し、あなた方2人が私たちを支配できるように、この魔術をもたらしたのか。ムーサーとハールーンよ、私たちはあなた方2人を信じるつもりはない。」

(79) フィルアウンは民に言った。「魔術の知識を持つ、すべての熟練者たちを私の元へ連れてこい。」

(80) 魔術師たちがフィルアウンの元に連れて来られたとき、ムーサーは勝利を確信して言った。「魔術師たちよ。あなた方がやろうとしていることをやりなさい。」

(81) 彼らが魔術をかけると、ムーサーは言った。「それが魔術である。アッラーはそれを無効化し、何の影響も持たせないだろう。あなた方はその魔術によって地上で腐敗を引き起こすが、アッラーは腐敗を起こす者たちの行動を正しいものとはしない。」

(82) たとえフィルアウンの民の罪深い不信仰者たちがそれを忌み嫌ったとしても、アッラーは真理を確立し、それを立証する。

(83) ムーサーがもたらした明白な奇跡と証明にもかかわらず、イスラエルの民の数人の若者を除き、人々は決してムーサーを受け入れなかった。もし暴露されたなら、懲罰でもって信仰から逸らせようとするのではないかとフィルアウンとその民の貴族たちは恐れたのである。フィルアウンはエジプトの民に対する権威を徹底しており、彼は不信仰、そしてイスラエルの民の迫害において、限度を超えた者の一人であった。

(84) ムーサーは民に言った。「民よ、もしあなた方がアッラーを真に信じて帰依するならば、かれのみに頼るのだ。アッラーを頼りにすることはあなた方を害から守り、あなた方に善をもたらすだろう。」

(85) 彼らはムーサーに答えてこう言った。「私たちはアッラーにのみ頼ります。主よ、不義者たちに私たちを支配させないでください。彼らは私たちを迫害し、私たちを殺し、または私たちを誘惑し、私たちをこの教えから引き離そうとします。

(86) 主よ、あなたの憐れみをもって、不信仰の民から私たちをお救いください。彼らは私たちを奴隷とし、私たちに罰を加え殺害します。」

(87) われらはムーサーと彼の兄ハールーンに、人々がわれらのみを崇拝するための家を造るよう啓示した。その家が(当時はエルサレムの)キブラの方向を向き、彼らが定めの礼拝を完全に行うよう命じた。またわれらはムーサーに、彼らを喜ばせる吉報を信仰者たちに告げ知らせるよう述べた。それは、われらが彼らを援助すること、彼らの敵を破滅させること、そして彼らを地上における後継者とすることである。

(88) ムーサーは言った。「主よ、あなたはフィルアウンとその民の貴族たちに、現世での豪華で裕福な生活を与えました。しかし彼らはあなたから与えられたものに感謝せず、あなたの道から他者を逸脱させる為、それを用いました。主よ、彼らの富を一掃してください。彼らが痛烈な罰を見るまでは信じないよう、彼らの心を頑なにしてください。」

(89) アッラーはムーサーとハールーンに、フィルアウンの民の貴族に対する彼らの祈りを受け入れたと述べた。かれは、彼らが教えを堅く守り、それから逸脱しないよう、そして真理の道を知らない無知な者たちの道をたどらないよう命じた。

(90) われらは海を二つに分け、イスラエルの民を安全に渡らせた。フィルアウンとその軍隊は彼らへの弾圧と敵意から追跡した。そして海が閉じ、彼らは溺れ、救いの希望を失った時、フィルアウンは言った。「私は、イスラエルの民が崇拝の対象として受け入れた唯一なる御方以外には、なにも崇拝に値しないと信じます。そして私は、アッラーに帰依して従う者の一人です。」

(91) 生きる希望を失った今となって、あなたは信じるのか。フィルアウンよ、あなたは、罰を受ける前にアッラーに敵対し、他者をアッラーの道から阻害してアッラーに歯向かい、腐敗を広める者の一人であった。それはあなた自身の迷妄によるものと、他者を逸脱させたためである。

(92) それで今日、われらはあなたを海から運び出し、あなたの身体を高い地面の上に置き、後世の者たちがあなたから教訓を得ることができるようにするだろう。しかし、多くの人々はわれらの証明とわれらの力を示す証拠に気付かず、それを考察することもない。

(93) われらはイスラエルの民を、祝福されたシャームの地の安全で素晴らしい場所に居住させた。そしてわれらは彼らに純粋で合法的な恩恵を授けた。彼らはクルアーンが下され、ムハンマドについてのトーラー内の記述が確証できるようになるまでは、宗教的問題で相違することはなかった。彼らが啓示を拒絶したとき、彼らの故郷は彼らから奪われた。使徒よ、あなたの主は彼らの相違点に関して、復活の日に彼らを裁くであろう。そしてかれは、誠実であった者たち、また虚偽を働いた者たちに、相応しいものを報いるのである。

(94) 使徒よ、われらがあなたに啓示したクルアーンについて疑念を抱くならば、それを確認するため、トーラーを読むユダヤ教徒たちと福音書を読むキリスト教徒たちに尋ねるのだ。彼らはあなたに啓示されたものが真理であると教えてくれるだろう。疑いの余地なき真理が主からあなたの元にやって来たのだから、疑念を抱く者たちの一人となってはならない。

(95) アッラーの印と証拠を拒否する者たちの一人となってはならない。なぜならそれは、あなたを不信仰によって破滅し、魂を失った者たちの1人とするだろう。預言者はそのようなことから保護されてはいるものの、それが警告されることによって疑念と否定の深刻さが強調されている。

(96) 不信仰者として死ぬことがアッラーにより定められた者たちは、その頑固さにより、決して信じることはないのである。

(97) たとえあらゆる論理や普遍的な印が彼らにもたらされても、彼らが痛烈な罰を目の当たりにし、彼らの信仰がもはや役に立たないことが分かるまでは(彼らは信じることはないのである)。

(98) ユーヌスの民を除いては、われらが使徒を遣わせた町のなかで、懲罰を目のあたりにする前に有益に信仰した者たちはいなかった。彼らは真に信仰していたため、われらは現世における生活の中で彼らから不名誉と屈辱の懲罰を取り除き、彼らの余生を楽しませた。

(99) 使徒よ、もしあなたの主が地球上の誰もが信じるよう望んだのであれば、彼らは信じただろう。しかし、かれの英知によってそうはならなかった。かれはその公正さにより、望みの者を迷わせ、その寵愛により、望みの者を導く。あなたは人々を強制的に信仰者にすることはできない。信仰への導きはアッラーの手中のみにあるのだ。

(100) アッラーが許可しない限り、誰一人として信仰を持つことは不可能である。信仰はかれの御心によってのみ起こるのであり、彼らに対する悲しみに打ちひしがれてはならない。アッラーの証拠に自らを顧みず、命令と禁止に従わない者たちに対し、アッラーは苦痛と不名誉を与える。

(101) 使徒よ、あなたに兆候を求める偶像崇拝者たちに言うのだ。天地にある兆候について考えてみよ。それはアッラーの唯一性と力を示している。たとえ兆候を下し、使徒を遣わしても、不信仰に固執する者たちには役立たないのである。

(102) これらの者たちは、アッラーが過去に否定した共同体に対して課した、同様の出来事が彼らにも起きるのを待っているのか。使徒よ、彼らに言え。「アッラーの懲罰を待つのだ」。私もあなた方と同様、アッラーの約束を待っているのだ。

(103) それから、われらは彼らに懲罰を下し、彼らの危害によって傷つけられることのないよう、われらの使徒たちとその信仰者たちを救う。過去に使徒たちとその信仰者たちを一緒に救ったように、われらは確実にアッラーの使徒と信仰者たちを救う。それは彼らに対するわれらの義務である。

(104) 使徒よ、言え。「人々よ、もしあなた方が私の呼びかける唯一神の宗教について嫌疑を抱いたとしても、私はあなた方の宗教が偽りであることを確信しているので、私がそれに従うことはない。アッラーを差し置いてあなた方が崇拝するものに対して私が崇拝することはなく、あなた方を死に至らせるアッラーに礼拝するのみである。かれは私に、宗教においてかれに誠実な者であるよう命じられた。

(105) またかれは、真の宗教を固持して他のすべての宗教を遠ざけるよう私に命じ、かれに同位者を配する者となることを禁じたのだ。」

(106) 使徒よ、アッラーを差し置いて、利益や危害をもたらす能力のない偶像や偽りの神々を崇拝してはならない。もしあなたがそれらを崇拝するならば、あなたはアッラーの権利だけでなく、自らの権利をも破る不義の徒の一人となるだろう。

(107) 使徒よ、もしアッラーが災害であなたを苦しめたとして、あなたがその除去を望もうとも、かれ以外にはだれも除去することはできないことを知るのだ。またかれがあなたのために安らぎを望むのなら、誰もかれの恵みを退けることはできない。かれはその恵みを、御心のままかれの僕(しもべ)に届ける。誰もかれに強制することはできない。かれは悔悟する僕たちに寛容であり、慈悲深い。

(108) 使徒よ、言え。「人々よ、クルアーンはあなた方の主からの啓示としてあなた方にもたらされた。アッラーは僕の服従を必要とはしないが、正しい道を歩み、それを信じる者は、その報奨を得るだろう。しかし、逸脱する者は誰であれ、その影響は自分自身を傷つけるだけである。なぜなら、アッラーは僕の不従順の影響を受けないからである。そして私はあなた方の守護者ではなく、あなた方の行いを監視し、それを清算する者でもない。」

(109) 使徒よ、あなたの主があなたに啓示した事柄に従い、それに基づき行動せよ。命令どおりに教えを伝達し、あなたに反対する者たちによって引き起こされる害悪に耐えるのだ。アッラーが彼らに裁きを下し、あなたに現世の勝利がもたらされるまで、この道を固持するのだ。そしてもし彼らが不信仰者として死ぬならば、彼らは来世で罰せられるのである。