(1) ヌーン。雌牛章の初めに、このような文字については、説明した。アッラーが筆にかけて、また人びとが筆で書いたものにかけて誓う。
(2) 使徒よ、主の恩寵のお陰で、あなたは気違いではない。多神教徒たちが非難するような狂気には、あなたは無関係だ。
(3) いや、あなたには教えを伝達することで、尽きない報奨がある。それによって、あなたに他の人への負い目はない。
(4) そしてあなたは、クルアーンがもたらした立派な徳性を備えている。それを具現しているのだ。
(5) やがてあなたは見る、かれらもまた見るだろう、
(6) 真実が明らかとなる際には、あなた方の中、気が触れた者は誰かということを。
(7) 使徒よ、真にあなたの主は、道から迷い去った者を最もよく知っておられ、また導かれている者を最もよく知っておられる。
(8) だからあなたは真実を嘘呼ばわりする者に、服従してはならない。
(9) かれらは教えについては、あなたの妥協を望み、そうなればかれらもあなたに対しては妥協したいのだ。
(10) あなたは、いつも嘘の軽蔑すべき誓いを立てる者にも従ってはならない。
(11) 中傷し、仲違いのための悪口を言い歩く者、
(12) 善事を妨げ、財産や尊厳や生命を脅かし、掟に背く罪深い者、
(13) 頑固で粗野な者、そして素性の卑しい者たちに従わないように。
(14) かれらは財産と子息たちがあるので、アッラーの教えに背き、
(15) かれ（預言者）にわれらの印が読唱されると、それは昔の作り話だと言う。
(16) やがてわれらは、その鼻に烙印を押すだろう。それは付着し、見た目に醜くするだろう。
(17) かれら多神教徒たちを旱魃と飢餓で試した。それに加えて、われらはある果樹園の持ち主を試みた。貧乏人に食べられる前に、かれらが早朝に収穫することを誓った時、
(18) かれらは、アッラーが御望みならば、という例外を付けなかった。
(19) それでかれらが眠っている間に、われらは火の天罰で果樹園を襲った。かれらは火を防ぐことはできなかった。
(20) そこで朝には、それは闇夜のようになった。
(21) 早朝、所有者たちは互いに叫びあった、
(22) もし収穫するのなら早朝に畑に急ごうと。
(23) そこでかれらは小さい声で囁(ささや)き合って、出かけた。
(24) 今日は一人の貧乏人も、果樹園に入らせてはならないぞと言いつつ、
(25) かれらは誰も収穫物に近づけないと強く心に決めて、朝早く出発した。
(26) だがかれらが畑を見た時、互いに言った。われわれは、仕方を誤っていた、
(27) 本当にわれわれは、貧乏人が食べないようにと決めたので、収穫物を奪われたのだと。
(28) かれらの中、一番中庸な者が言った。あなた方はアッラーを称え、悔悟するようにと、わたしが言ったはずだ。
(29) かれらは、われわれは主を讃える、確かにわれわれは貧乏人に食べさせないと決めたりして、不正な者でした、と言った。
(30) そこでかれらは、互いに悔しがりながら、責め合った。
(31) かれらは言った。ああ嘆かわしい、われわれは本当に貧乏人に与えないなど、掟破りをしてしまった、
(32) 主はこの代わりに、もっと良いものを与えられるかもしれない。われわれは、望みを持って主に向かう。
(33) このように、われらは従わないものを罰する。だが来世の苦痛はさらに大きなもので、その厳しさと永久であるということが、かれらに分っていればいいのだが。
(34) 確かにアッラーを意識し、命令に従い禁止事項を守る者には、主のところに安楽の楽園がある。そこで永久に豪華な生活をする。
(35) われらは、マッカの多神教徒たちが言うように、信じて従う者たちを、罪人と同じに報いるだろうか。
(36) 多神教徒たちよ、あなた方はどうしたのか、どうしてこのような横暴で曲がった判断をするのか。
(37) それともあなた方には、学びの啓典があって、信者と不信仰者の別はないとされるのか。
(38) その書物の中では、あなた方が来世に選択するものが与えられるのか。
(39) それともあなた方には、あなた方が判定するものは何でも与えられるという、われらの誓約があるのか。
(40) 使徒よ、かれらの誰がそれを保証できるのかと、かれらに問いなさい。
(41) それともかれらには主と同列に配するもので、かれらを信者と同等の報いを与えるものがいるのか。かれらが言う通りならば、その主と同列に配するものを連れて来させなさい。
(42) 恐怖が人びとを襲い、主の脛(すね)があらわにされる復活の日、人びとは服従してひれ伏すように求められ、信者はそうするが、不信仰者と偽信者には、それは出来ない。
(43) かれらは目を伏せ、屈辱と後悔に見舞われるだろう。現世では、アッラーにひれ伏すよう、確かにかれらは呼びかけられていた。他方かれらは、今日直面することからは安全であった。
(44) そこで使徒よ、われと、この啓示を虚偽であるとする者を、放っておきなさい。われらはかれらが気づかないところから、企みとして、一歩一歩苦痛に導く。
(45) しばらくはかれらを、その罪を重ねるために猶予するだろう。実にわれの計画はしっかりしている。かれらは逃れられないし、また懲罰から安全ということもない。
(46) 使徒よ、それともあなたが、その呼び掛けについて、かれらに報酬を求め、かれらは重い負債を背負うことになったのか。それがかれらの反対の原因か。事実はその逆で、あなたは何も褒美など求めてはいないし、何が一体その原因なのか。
(47) または、かれらには幽玄界の知識があり、それでかれらはあなたに対する批判の言葉を書いているのか。
(48) 使徒よ、忍耐して、あなたの主の裁きの通り、かれらに猶予を与えて、少しずつ破滅へ導きなさい。自分の民に苛立ち、苦悩の余り叫び声を挙げた、クジラの友ユーヌス（平安を）のようであってはならない。かれが主に叫んだ時には、海の暗黒の中、またクジラの腹の暗黒の中で、すっかり気落ちしていたのだった。
(49) 主からの恩恵がかれに達しなかったならば、クジラにかれは不毛の地に捨てられて、非難されていただろう。
(50) しかし主はかれを選び、正しい人びとの仲間とされた。
(51) アッラーを信じず、預言者を拒否する不信仰者は、クルアーンを聞く時、その物凄い眼差しで、あなたを倒れんばかりにする。そしてかれらは、その欲望に従い、真実を受け入れず、それをもたらしたかれは、気違いだと言う。
(52) だがあなた方に降ろされたこのクルアーンは、すべての人とジンへの警告であり、諭しに他ならない。