28 - スーラトルカサス ()

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(1) ター・スィーン・ミーム。雌牛章でこれらの文字の説明をした。

(2) これは、明瞭な啓典の諸節である。

(3) われらは学習して収穫のある信仰する人びとのために、真実をもってムーサーとフィルアウンの物語をあなたに読誦しよう。

(4) 確かに、フィルアウンはこの国において圧政を敷いて、国民をいつくかのグループに分けて、特定の人々を迫害した。それはイスラーイールの子孫であり、男児を殺し、女児は生かしておいた。そうしてかれらを搾取し辱(はずかし)めたのだ。実にかれは、圧政、専制、そして傲慢さで腐敗を広めた人であった。

(5) われらはこの国で抑圧されているイスラーイールの子孫に恵みを与えようと思い、その敵を破滅しかれらを解放し真実を求める者たちの指導者とし、フィルアウンとその軍隊を海に沈めてから後は、この祝福された北部(シャーム)の地の後継者にしようとした。アッラーは言われた。「われらは虐げられていた人々を、われらが祝福した東西の大地における後継者とした。」(7:137)

(6) そして、この国にかれら(イスラーイールの子孫)を確立させて、フィルアウンとハーマーンとその軍隊に、イスラーイールの子孫の男児が彼らの王国を支配するという、かれらが恐れていたことを見せつけようとした。

(7) そこでわれらはムーサー(平安を)の母に啓示して言った。かれに乳を飲ませなさい。フィルアウンが殺しに来るとかれの身の上に危険を感じたときは、かれを箱に入れてナイル川に投げ込みなさい。沈まないか、あるいはフィルアウンに捕まってしまわないか、そして離別するのかと心配して悲しんではいけない。われらは必ずかれを生きたままあなたに返し、かれを使徒のひとりにするだろう。

(8) 彼女は言われるままに、かれを箱に入れて川に投げ入れた。するとフィルアウンの家族は、やがてかれらの王国を滅ぼすことでかれらの敵となり悲しみの種となるムーサーを拾いあげた。実に、フィルアウンとハーマーンとかれらの軍隊は、不信仰、圧政、そして地上にもたらした腐敗により、罪深い人たちであった。

(9) フィルアウンの妻は言った。拾い上げたムーサーはわたしとあなたにとって、幸せをもたらすかも知れない。かれを殺してはいけない。わたしたちの役に立つこともあるでしょう。または養子にしてもよい。そしてかれらは、その国がどうなるかは理解しなかった。

(10) ムーサーの母の心は、現世のことはすっかり忘れるほどに空洞のようになった。息子のムーサーの事しか考えず、忍耐も切れそうで、かれが自分の息子だと口に出しそうにもなった。それほど息子のことで、頭が一杯だったのだ。しかしわれらはかの女の心を強靭に我慢強くさせて、主を信じる信者のひとりにしたので、その命令にかの女は従順になることができた。

(11) そして、かの女はムーサーの姉に、かれの後を追うように言った。それでかの女(ムーサーの姉)は遠くからかれを見守っていたので、かれら(フィルアウンの人びと)は何も気付かなかった。

(12) われらは前もって、ムーサーに乳母の乳を命令で禁じておいた。それでムーサーの姉はかれらが授乳に熱心な様子を見て言った。あなた方に、養育する家族を教えましょうか。かれらは丁重にかれを世話するでしょう。

(13) このように、われらはムーサーをその母に返した。かの女の目は喜びを得て、悲しみも消え失せた。かの女はアッラーの約束が真実であることを知ることとなったが、かれらの多くはこの約束を知らず、また誰も彼女が本当の母親だとも知らなかった。

(14) ムーサーの身体も力も立派に成人となったとき、われらはかれに宗教に関する英知と知識を授けた。このようにムーサーの服従振りに報いたように、われらは善行をなすいずれの時代や場所の人にも報いるのである。

(15) ある時、かれは人の気が付かない間に町に入り、そこで2人の者が互いに争って口論しているのを見かけた。1人は自分の一派のイスラーイールの子孫で、もう1人はかれの敵側のコプト教徒であった。かれの一派の人が敵側の人に対してかれに加勢を求めた。そこでムーサーは敵の一人を拳で打って、力余って殺してしまった。ムーサーは言った。これは悪魔の仕業だ。確かに、かれは人を惑わす明白な敵である。悪魔は敵愾心を持ち、それに人を騙すので、わたしについても間違いを望んでいるのだ。

(16) ムーサーは主を認めながら言った。わたしの主よ、実に、わたしはこのコプト教徒を殺して、自ら不正を犯した。どうかわたしをお赦しください。するとかれはムーサーを赦した。誠に、かれは改心する僕をよく赦される方であり、慈悲深い方なのである。

(17) かれは言った。わたしの主よ、あなたがわたしに改心するという恩恵をくださったので、わたしは決して罪深い人たちの味方になることはない。

(18) コプト教徒を殺してから、次の日の朝、かれが目を覚まして町の中で恐れを抱きながら辺りを警戒しているときのこと。見なさい、前日かれの援助を求めた人が、再び別のコプト教徒から逃れようとして、かれに助けを求めて叫んだ。ムーサーはかれに言った。あなたはよくよく間違いをして、ただ挑発しているのだ。

(19) それでかれとムーサーの2人の敵であるコプト教徒をかれが拳で打とうと決めたとき、その敵は言った。ムーサーよ、あなたは昨日人を殺したように、わたしも殺そうとするのか。あなたは地上において人々を苦しめて、暴君になりたいだけだ。そして論争する人たちの調停者となることは望まないのだろう。

(20) すると、ある人が町の一番はずれから走って来て言った。ムーサーよ、フィルアウンの参謀たちがあなたを殺そうと相談している。だから今すぐ立ち去りなさい。わたしはあなたに幸いを望む者で、かれらがあなたを捕まえて殺すことを恐れるのだ。

(21) それでその善意の助言に従ってムーサーは恐れを抱き辺りを警戒して、そこから逃げた。かれは主に嘆願して、言った。迫害する人びとからわたしをお救いください、そしてかれらが危害を加えないように。

(22) かれ(ムーサー)はマドヤンの方に向けて進み、言った。わたしの主は、わたしを正しい道に導いてくれるかもしれない。

(23) それからマドヤンの水場に来てみると、かれは一群の人びとが家畜に水をやっているのを見た。そしてかれらの片隅に、2人の女性が後方に控えて、他の人が水をやり終わるのを待っているのを見た。かれは言った。あなた方2人はどうして一緒に水やりをしないのか。かの女ら2人は言った。わたしたちはいつも、その羊飼いたちが水場から離れるまで、水をやらないことにしている。彼らとまじりあうのを避けるために。わたしたちの父は大変年老いているので、わたしたちが水やりをしなければならないの。

(24) そこでかれはかの女ら2人のために家畜に水をやり、それから木陰に戻って、アッラーに嘆願して言った。わたしの主よ、あなたがわたしに授けるものなら、何であれ善いものを必要としている。

(25) かの女ら2人の中の1人が、恥ずかしげにかれのところにやって来て言った。わたしの父があなたをお招きして、あなたがわたしたちのために水をやってくれたことへのお礼をしたいとのこと。そこで、かれ(ムーサー)がかれ(父)のところにやって来て、身の上話をした。そうしたら、父は言った。心配なさるな。あなたはフィルアウンらの不正の民から逃れたのだ。かれらはマドヤンでは、何も権威をふるっていないので、あなたに危害を加えることはない。

(26) かの女ら2人の中の1人が言った。わたしの父よ。かれを羊飼いとして雇いなさいよ。強健で信用できる人は、雇うのに最善。力でその責任を果たし、信頼で任せられたことを完遂するでしょう。

(27) 父は言った。もしあなたが8年間わたしのために羊飼いとして働いてくれるなら、わたしは2人の娘の中の1人を、あなたと結婚させたい。もし10年を満了したいなら、それもあなたの自由だが、約束は8年間だ。それ以上は選択自由だ。わたしはあなたに、難しいことを無理強いするつもりはない。もしアッラーがお望みならばだが、わたしは約束を破らない、敬虔な人間であることがあなたにも分るだろう。

(28) ムーサー(平安を)は言った。それはわたしとあなたの間の約束であり、8年か10年かの2つの期間のどちらをわたしが満了するにしても、わたしにとって取引を満たしたことになる。しかしそれ以上は求めないでほしい。アッラーはわたしたちが言うことの証人であり、守護者なのである。

(29) その後ムーサーが10年の期間を満了して家族と一緒にマドヤンからエジプトに旅しているとき、トール山の側に一点の火を認めた。かれは家族に言った。あなた方はここで待っていなさい。わたしは火を認めた。あそこからあなた方にお告げの知らせを持って来よう。または火からたいまつを持って来て、あなた方に明かりと寒さを防ぐ暖かさをもたらそう。

(30) ところがかれが火のところにやって来ると、谷間の右側の祝福された地点にある木からかれを呼ぶ声がした。ムーサーよ、真にわれらはすべての創造の主、アッラーであるぞ。

(31) 「さあ、あなたの杖を投げなさい。」そこでムーサーは命令に従って投げだすと、それが蛇のように震えているのを見た。そしてそれが恐ろしくなって、逃げ出して振り返らなかった。主は言われた。「ムーサーよ、近寄りなさい。そして恐れてはいけない。誠にあなたは、それからも、そして他の恐れることからも安全なのだ。」

(32) 「あなたの右手を衣の脇の下に入れなさい。何の病気でもないのに、それは白くなる。恐れに対しては、あなたの手を自分の両脇に引き寄せなさい。」そうすると恐怖心はおさまってきた。「これらはあなたの主からのフィルアウンとかれの参謀たちに対する2つの証拠である。確かに、かれらは掟破りの人たちなのだ。」杖とこの手は、主からフィルアウンとその参謀たちに送られた2つの証拠であった。本当にかれらは、不信仰と罪でアッラーへの服従から離れてしまった人たちであった。

(33) ムーサーは言った。わたしの主よ、わたしは助けを求められたので、コプト教徒の1人を殺した。だからわたしがかれらに対して伝えるべきメッセージをもたらそうとすると、かれらがわたしを殺すのを恐れる。

(34) ただしわたしの兄ハールーンはわたしよりも雄弁である。それでわたしの補佐役として、かれをわたしと一緒に遣わしてください。遣わされた使徒を拒否した民族によく見られたように、わたしはフィルアウンとその人々がわたしを嘘つき呼ばわりすることを恐れる。

(35) かれはムーサーの嘆願に対して言った。われらはあなたの兄をもって補佐とし、また使徒として同伴させるので、あなたを強力にして、またあなた方2人をかれらよりも優勢にするであろう。そうすれば、かれらはあなた方に危害を加えられない。われらの印によって、あなた方2人とあなた方に従う人たちは、フィルアウンとその人々に対して勝利者となるのだ。

(36) ムーサー(平安を)がわれらの明白な印をもってかれらの所に来ると、かれらは言った。これは捏造された魔術にすぎない。もしそれが真実ならば、わたしたちは先祖からも、同様なことを聞いたに違いない。

(37) すると、ムーサーはフィルアウンに言った。わたしの至高なる主は、誰がかれの御元から導きをもって来たか、また誰が最後に素晴らしい結果である、平安の住まいを得るかをすべてご存知だ。不正を行なう人たちは決して成功しないし、その恐怖心から安心できることはないのだ。

(38) フィルアウンは言った。参謀たちよ。あなた方のためには、わたし以外の神をわたしは承知していない。だから、ハーマーンよ、わたしのために泥を燃やしてレンガを作り、高殿を築きなさい。そうすればムーサーの神(アッラー)にお目見えして、その元に登れるかも知れない。わたしはかれが使徒として遣わされたというのは、嘘だと思う。

(39) かれ(フィルアウン)とかれの軍隊は、エジプトにおいて不当に高慢であった。そして、かれらは復活を拒否し、最後の日にも清算と報奨のために、決してわれらに帰されないと考えていた。

(40) だからわれらはかれとかれの軍隊を襲って海に投げ込んで、沈めた。使徒よ、このように、圧政者の末路がどんなものであったかを見なさい。それは破滅である。

(41) われらはかれらを導かれず、不信仰と過ちを広げるので、地獄の火に招き、その先達とした。そして、復活の日にかれらが助けられることはない。むしろその悪習により、罰は倍加される。かれらとその一味の悪行の結果は、遂行されるのだ。

(42) また、われらは現世においてかれらにもう一つ別の懲罰、つまり恥辱と追放を見舞ったのだ。復活の日においても、かれらは慈悲から遠ざけられて、われらとわれらの信者たちによって嫌悪されるのである。

(43) 確かに、昔の多くの世代を滅ぼした後、われらはムーサーに人類のための真理への洞察として、また導きと慈悲として、律法を授けた。その中には人々に、実行すると益し、また実行すると害するので避けるべき、明白な証拠と教えが含まれている。また現世と来世の善と慈悲に導く教えもある。多分かれらはアッラーの与えられる恩寵に思いを馳せて、きっと感謝と信心を示すだろう。

(44) 使徒よ、われらがムーサーにフィルアウンとその人々のための命令を降ろしたとき、あなたはかれにとって山の西側におらず、またその目撃者のひとりでもなかった。だからあなたが人々に語るのは、アッラーからの啓示としてなのである。

(45) でもわれらはその後多くの世代をもたらし、かれらは長い時間の経過により、アッラーの契約を忘れてしまった。またあなたがマドヤンの民の間に住んで、かれらにわれらの印を読誦したのではなかった。でも、われらは使徒としてあなたを遣わして、ムーサーの出来事とマドヤンの生活を伝えたのだ。それをあなたは人々に伝えているということになる。

(46) また、われらがムーサーを呼んで、かれに啓示を降ろしたときも、あなたはシナイ山の傍らにいたわけではなく、その話もあなたは人にすることはできない。でも、あなたもまたあなたの主からの慈悲として遣わされたので、あなたにあの出来事を啓示するので、あなた以前にひとりの警告者もやって来なかった民に警告するのだ。そうすれば、かれらは留意して、アッラーからもたらされたものを信じるであろう。

(47) もしそうしないなら、かれらが先になした罪や不信仰のために、かれらには災厄が襲いかかるだろう。そのときになって、かれらは言うのだ。わたしたちの主よ、もしあなたが使徒をわたしたちに遣わしていたなら、わたしたちはあなたの印に従い、信仰する人たちとなっていたのにと。そうはならなかったが、懲罰を食らったわけでもなかったのは、われらがかれらに使徒を遣わして、そうするのを遅らせたからであった。

(48) でも、われらから真理がクライシュ族のかれらに届くと、こう言った。ムーサーに与えられたのと同じような手や杖や律法が、どうしてかれが預言者だということをはっきりさせるために与えられないのかと。しかし使徒よ、かれらに反論して言え。ユダヤ人たちは以前にも、ムーサーに与えられたものを信じなかったではないか。かれらは言っていたのだ、両方(律法とクルアーン)とも魔術で、互いに支え合っている、わたしたちはどちらも信じないのだ。

(49) 使徒よ、言え。それなら、アッラーの御元から導きの啓典で、これら2つよりも優れたものを持って来い。あなた方が本当にするならば、わたしはそれに従おう。

(50) そして、もしクライシュ族のかれらがあなたに応えてより優れた書を持って来ないなら、かれらは何の証拠もなくて、自分の欲望に従っているにすぎないことを知れ。アッラーからの導きがなく、自分の欲望に従う人よりも道に迷う人がいるのか。誠にアッラーは不信仰を抱き、使徒を拒否し、真実を虚偽で対抗させる人びとには、導きを与えられない。

(51) 確かにわれらは多神教徒とユダヤ人たちにも、以前の諸国の事や懲罰の話に関する言葉を届けた。そうすることで、かれらは使徒たちを拒否しないようにして、信仰心を持ち、以前に降ろされた懲罰から免れるように願ったのだ。

(52) われらがクルアーン以前に律法を信じた人たちは、クルアーンを信じる。というのは、かれら自身の啓典において知らせが含まれており、そこにクルアーンのことが描かれているからだ。

(53) そしてそれがかれらに読誦されるとかれらは言う。わたしたちはそれを疑いないものとして信じる。確かにそれは、わたしたちの主から啓示された真理である。わたしたちがクルアーン以前からムスリム(訳者注:アッラーに従う人)であったのは、使徒たちがもたらしたものを信じていたからだ。

(54) これらの人たちには2倍の報奨が与えられる。なぜなら、かれらは耐え忍んで自身の啓典を信じていたし、ムハンマド(平安を)が遣わされてからはかれを信じたのである。かれらは善行をもって罪の悪を退け、われらが糧として与えたものから施したからである。

(55) またこういった信者たちが啓典の民の虚偽の話を耳にするとき、かれらは背を向けて言う。「わたしたちには、わたしたちの行ないがあり、あなた方には、あなた方の行いがあり、それについて報いがある。あなた方はわたしたちに悪口を言われたり、損害を加えられたりしないで安全である。わたしたちは無知な人たちを相手にしない。かれらは宗教に対して危害を加え、現世の生活にも被害を及ぼすのだ。」

(56) 使徒よ、確かにあなたは誰であれ、アブー・ターリブなど、自分が好む人を導くというのではない。アッラーは、信仰を望む者を御心のままに導かれる。本当にかれは誰が、まっすぐな道に導かれる人であるかを熟知している。

(57) マッカの多神教徒たちは言った。イスラームの信仰を避けつつ、「もしわたしたちがあなたと一緒になってその導きに従うなら、わたしたちはわたしたちの土地から敵によってつまみ出されるだろう。」われらはかれらのために、流血や迫害が許されない禁忌のある領域を確立して、われらからの糧としてすべての果実をそこにもたらしたではないか。でもかれらの多くは、アッラーの恩寵が分らず、感謝もしていない。

(58) われらは生活が豪勢で享楽に満ちてはいるが、感謝を知らないどれほど多くの町を滅ぼしたことか。罪と不服従に満ちていた。そこでかれらを破滅させ、崩壊させた。そういうところでは、かれら以後、かれらの住居は崩壊して、人は通り過ぎるだけである。少しの旅人を除いては、ほとんど誰にも住まれていない。そしてわれらこそが、諸天、地上、そしてそこの全員を相続する者なのである。

(59) 使徒よ、あなたの主は町々をただ滅ぼす方ではない。町々の人びとの中にわれらの印を読誦する使徒を遣わすまでは。ちょうどあなたを町々の母である、マッカに遣わせたように。またわれらはその人びとが罪と不信仰で、不正な人びとでない限り、町々を滅ぼすことはない。

(60) 主があなた方に現世の生活で与えられたものは、享楽とその虚飾にすぎない。それらは終了する。しかし、アッラーの御元に来世にある偉大な報奨こそ、善美で永遠なのである。それでも、あなた方は理知を働かせて永遠のものを好まないで、終わるものを選ぶのか。

(61) われらが良い約束である楽園と永遠の快楽を来世に実見する人と、われらが現世の生活の富と虚飾を与えたが、審判の日には地獄の火へと召集される人とは、同類なのであろうか。

(62) その日、かれはかれらに呼びかけて言う。あなた方が祈っていた、われの同位者というものはどこにいるのか。

(63) 裁決の言葉が明らかになった不信仰者たちは言う。わたしたちの主よ、これらはわたしたちが迷わせた人たちだ。しかしわたしたちがかれらを迷わせたのは、わたしたち自身も迷っていたからである。だからわたしたちは、あなたに向かってかれらとは縁切りする。かれら不信仰者はわたしたちを崇拝していたのではなく、悪魔を祈っていたのだ。

(64) するとかれらに言われる。「あなた方の同位者を呼びなさい。そしてあなた方の恥辱から救ってもらうがいい。」かれらはそれらの神々を呼ぶが、応えない。かれらは苦痛を目の当たりにする。もしかれらが真実に導かれていたなら、処罰されることもなかったのに。

(65) その審判の日、かれはかれら不信仰者たちを呼んで言う。「あなた方は使徒たちに何と応えたのか。」

(66) その日、論証はかれらに隠されたように曖昧となり、何も言わない。ショックのために、かれらは互いに尋ね合うこともできない。かれらは懲罰に向かっていることを、確実に知るのである。

(67) でも、改心してアッラーと使徒たちを信仰し、善行に勤しんだ人は、望んでいたものを獲得する成功者のひとりとなり、恐れていたものから救われるだろう。

(68) 使徒よ、あなたの主は、御心のものを創り、また服従と預言者としての任務のために御心にかなった者を選ばれる。一方多神教徒たちはアッラーには反論できず、選ぶことができない。かれはかれらが同位を配する偶像と違って、純粋で遥か上に高くおられるのだ。

(69) またあなたの主は、かれらの胸に隠すことも現わすことも知っている。何も隠せず、それについて報奨を定められるのだ。

(70) かれこそはアッラー、かれの他に神はいない。かれにこの世とあの世におけるすべての称賛があり、裁決もかれにあり、何もそれに反対できない。また審判の日には清算と報いのために、あなた方はかれに帰される。

(71) 使徒よ、多神教徒たちに言え。あなた方は考えたのか。もしアッラーが復活の日まで続く夜を設けたなら、アッラーの他にどんな神があなた方に光を与えられるのか。あなた方はこれらの証拠を聞かないのか、そしてそれをもたらすことができるのは、アッラーしかいないことを知らないのか。

(72) 言いなさい。あなた方は考えないのか。もしアッラーが復活の日まで続く昼を設けたなら、アッラーの他にどんな神があなた方に休息するための夜を与えられるのであろうか。あなた方はこれらの印を見ないのか、そしてそれをもたらすことができるのは、アッラーしかいないことを知らないのか。

(73) かれの慈悲によって、かれは夜と昼をあなた方のために設け、それであなた方は夜に休み、また昼にかれの恩恵を求めることができるのだ。そしておそらくあなた方は、その恵みに感謝し、感謝しないではおられないだろう。

(74) その審判の日、かれはかれらに呼びかけて言う。あなた方が祈っていた、わたしの同位者というものはどこにいるのか。

(75) われらはすべての共同体から、証人を出させて不信仰と真実拒否に関して言う。あなた方の不信仰と真実拒否の正しいことを証明する証拠を持って来なさい。そのとき、かれらは言い訳ができず、真理がアッラーだけのものであることを知る。そして、かれらが捏造していた同位者たちは、かれらから離れ去る。

(76) 確かにカールーンはムーサー(平安を)の民のひとりだったが、イスラーイールの子孫を抑圧した。またわれらは、かれに財宝を与えた。確かにその宝庫の鍵は、屈強な男たちの集団をもってしても重かった。かれの人びとが、かれに言った。「浮かれていてはいけない。誠にアッラーは、浮かれている人を好まれないのだ。むしろそのような人を嫌われて、浮かれていることで処罰されるのだ。」

(77) またアッラーがあなたに与えた資財を善のために支出することで、来世の住まいという報奨を請い求め、この世における食料、飲料、衣類などを恵みとして、あなたの妥当な分け前を忘れないように。そしてアッラーがあなたに善くしてきたように、あなたも主とその僕に対して、善行をしなさい。地上において、罪をなし、服従を手放すことで、腐敗を広げてはいけない。誠にアッラーは、地上で腐敗を広げる人を好まれず、実際嫌われるのである。

(78) カールーンは言った。「この財宝を授かったのは、わたしが持っている知識と能力のおかげである。わたしはその財宝を持つ資格がある。」しかしアッラーがかれ以前にもっと強くてもっと裕福だった多くの世代を滅ぼしたことを、かれは知らないのか。以前の世代で、力はかれよりも強く、蓄えもより巨額なものもいたが、それらは役に立たなかった。最後の審判の日に、罪深い人たちは、かれらの罪について問い正されることはない、というのは、アッラーは全てを知っているからだ。質問されるとすれば、それは叱責と非難のためである。

(79) そこでかれは身を飾って、富と地位を見せびらかしながら、人びとの中に出て行った。現世の生活を望んでいるかれの同伴者は言った。「ああ、カールーンに与えられたようなものが、わたしたちにも与えられたならばいいのになあ。実にかれは、すべて大変な幸運の持ち主だ。」

(80) でも、知識を授かった人たちは、カールーンの飾りとかれの同伴者の言うことを聞いて、言った。「情けないことを言ってはいけない。信仰して善行に励む人にとって、アッラーの来世の報奨こそ、現世のすばらしいものよりも一段と優れているのだ。このようなことは、現世の享楽よりアッラーの報奨を好む忍耐強い人しか、言うことも実行することもできないものだ。」

(81) その後われらは、逸脱に対して報いるために、かれとかれの住まいのすべてを大地に飲み込ませた。結局アッラーに対しては、かれを助ける一団もなく、また自分を守る人の中にも入れなかった。

(82) その後、その前日までかれの富や飾りを望んでいた人たちは、言い始めた。「ああ、誠にアッラーは、かれが望む僕たちに糧を豊かにし、あるいは制限して与えるのである。もしアッラーの恩寵がなかったなら、かれはさんざんなことを言ってきたわたしたちを大地に飲み込ませていただろう。ああ、不信仰者たちは現世でも来世でも、決して成功しないし、かれらの将来と結末は両世界において損失だけなのだ。」

(83) 来世の住まいとは、地上において信仰と信者から背くことで傲慢となることを求めず、また腐敗を望まない人びとのために、われらがもうける快楽と名誉の住まいなのだ。そして楽園のすばらしい結果とそこでのアッラーの与える快楽は、主の命令に従い禁止を守ることで、アッラーを意識する人たちに与えられるのだ。

(84) 最後の審判の日に、礼拝、喜捨、断食などの善行を持って来る人には、それの10倍にもなる善い報奨を与える。しかし不信仰、利子をむさぼること、姦通などの悪行を持って来る人には、増加はされずに、かれらがしてきたことに応じてのみ報いられる。

(85) 確かに、クルアーンをあなたに降ろしたかれは、あなたにそれを伝えて行動するように強いられ、マッカに勝利して戻される。使徒よ、かれらに言いなさい。「わたしの主は、誰が導きをもたらし、また誰が明白に導きと真実から迷っているかを最もよくご存知である。」

(86) 使徒よ、ただあなたの主からの慈悲として、啓典があなたに届けられることは、あなたが予期しなかったことだ。しかしアッラーの慈悲としてそれは降ろされたので、決して過ちにある不信仰者を支援してはいけない。

(87) あなたに啓示された後、それを読誦し伝えようとしている最中、不信仰者にアッラーの印からあなたを遠ざけさせてはいけない。唯一性を宣明して、その法規に則り、あなたの主に人びとを招きなさい。そして多神教徒のひとりとならずに、その唯一性を唱え、アッラーのみに仕えるものとなりなさい。

(88) またアッラーと一緒に、他の神に祈ってはいけない。かれの他に神はいない。かれのご尊顔の他、すべてのものは消滅する。かれに裁決はあり、望みのままにお裁きになる。審判の日、清算と報いのために、かれのみにあなた方は帰される。